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【ライブレポート】摩天楼オペラ TOURʼ25 六花 – Snowflake -2025.4.19(sat) 名古屋ElectricLadyLand-

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アルバム名をタイトルに冠したツアー「六花 – Snowflake」。2月から始まったこのツアーも終盤に差し掛かった、名古屋公演の内容をお届けする。彼らが今回のツアーで伝えたかった想いとは…。


この日の名古屋は4月にもかかわらず、最高気温30度という夏日。Snowflakeという名の通り、雪が散らつく季節から始まったこのツアーもいよいよ終盤に差し掛かり、季節の移り変わりを感じさせる。
外の暑さを上回る熱気が漂う会場は、ライブの始まりを待ちきれないとばかりにざわめくファンたちで溢れかえっていた。

場内が暗転しSEが流れたその瞬間、大きな拍手が沸き起こる。真っ赤な照明に照らされたステージに黒の衣装に身を包んだメンバーが姿を現すと、ライブハウスは一瞬にして摩天楼オペラが魅せる耽美な世界へと姿を変える。
荘厳なイントロから始まったのは、美しさと狂気が交錯するかのような『BLOOD』。重厚なギターと荘厳なシンセが絡み合い、激情的なボーカルが鮮烈に描き出す摩天楼オペラの世界感に酔いしれる。

「さぁ、行こうぜ名古屋!」

苑が叫ぶとステージは先ほどとはうってかわって、クールな寒色の照明に照らされる。クラシックを根幹におきながらも、鋭利な音と激しいリズムで絶望の風景を描いた『DYSTOPIA』。照明の冷たい色調とは真逆に、苑のシャウトを合図にファンたちは一斉に髪を振り乱して暴れ出す。

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苑(Vo.)

3曲目は『Ruthless』。ステージ最前に4人が並ぶ光景は私たちを圧倒し、激しく疾走感のある楽曲が会場をさらにヒートアップさせる。苑の鋭く美しい高音ボイス、流れるようなギターソロ、重く鋭利なベースが身体に突き刺さる。優介のコールに合わせ、観客たちはステージに向かって身を投げ出した。
まだまだ彼らの攻撃は休む暇を見せない。

「名古屋ー!」

苑、優介がもっと来いと言わんばかりに客席に向かって叫ぶ。リズムに合わせ「オイ! オイ!」と煽ると全員が一斉に拳を突き出す。

『舌』ではエロティックなピンクの照明に照らされ、苑がリズムに合わせてサイドステップを踏む。艶やかな歌声が会場を妖艶なムードで包み込む。
サビに入る前、苑と燿が視線を合わせ見つめ合う。一瞬の出来事だが、それすらも色気を醸し出す演出かのように見入ってしまう。
曲が終わったかと思うと、もっと欲しいと求めるかのようにメンバーを呼ぶ声が会場に響く。

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優介(Gt.)

「六花ツアーへお越しいただきありがとうございます。」

そう切り出したMCでは、苑が今回のアルバム名を冠したツアーへの想いを語った。
「この六花(アルバム)を作った時、いろんな曲がメンバーから出てきて、自分も出して。たくさんの曲の主人公たちがいて、それはフィクションであったりノンフィクションであったり僕自身でもあったり。アルバムを最後まで聴いたら、そういう主人公たちや聴いてくれている皆さんが “皆ここにいていいんだよ、生きていていいんだよ” って感じてもらえるといいなと思ってこのアルバムを作りました。このツアーを回ってきて、それを体現できるライブになってきていると感じています。僕たちが目指した、この六花のライブの完成系が近いんじゃないかな。ライブの方がCDを聴いているよりも、生でそれを感じられると思うんです。だから、今日それを全部感じていって欲しいなと。」
メンバー達が見守る中、そう語りかける苑。

ツアー前、アルバムの世界観をしっかり伝えていきたい、ライブを通して楽曲が変化していくのが楽しみと語っていたが、まさにそれが形となってきているのだ。彼らが私たちに伝えようとしてくれている想い、今日それを体感できていることに嬉しさがぐっと込み上げる。

「残り3本、お前たちに俺たちのすべてを届けるぜ!思いきりかかってこいよ、いいか?!」

『TABOO』はCDとは一味違う叫ぶ様な歌声で始まった。重厚なビートと艶やかな旋律が交錯し、先ほどの言葉の通りライブでしか感じられない力強さが心に響く。
神々しい光と静寂に包まれて始まった『ここからは届かないあなたへ』。彩雨は客席を見つめながらキーボードを奏で、柔らかく包み込むようなメロディに乗せて、苑の歌声が儚く響く。「届かないあなた」を求めるかの様に、観客達はステージへと手を伸ばす。

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彩雨(Key.)

そのまま『誰も知らない天使』『翠玉のワルツ』へと続く。エメラルドグリーンのライトに照らされた美しくも幻想的なステージで、三拍子のリズムに乗せて体を揺らしながら全身で歌い上げる。その声はどこまでも遠く遠く届くかの様に伸びやかに響き渡った。
神秘的な世界観から一転、激しいリズムで始まったインスト曲『Apocalypse』。赤く点滅するライトの中、挑戦的な視線を客席へおくるメンバー達。まるで歌っているようなメロディアスなギターソロを悩ましげな表情で弾き上げる優介。華麗なターンで観客を魅了する彩雨。笑顔でリズムを刻む燿と響。黄金の光に照らされ、全員が主役級の輝きを放つ。静けさと激しさ、光と闇を行き来しながら、ひとつの物語を紡いでいく。

曲が終わり、暗転した場内に拍手と歓声が沸き起こった。ステージへと舞い戻り、スポットライトで照らされた苑の声が静寂に響く『闇を喰む』。透明感のある歌声とスピード感と鋭さを持った音達が、ダークでありながらもどこか透明感を感じさせる美しさを放ち、絶望の中に宿る真の光を示す。
ポップなメロディが軽やかに流れる『Incessant Snow』。ブルーの照明の中に散りばめられた白いペンライトが冬の季節にハラハラと降り積もる雪を彷彿とさせる。他の曲ではあまり使わないスタンドマイクでしっとりと歌いあげながら、降り積もる雪を追うかのように手を空に泳がせた。

拍手が止み、全員がそのまま静かに次の音を待つ。
続く曲は『愛を知りたかった幼き日々よ』。セピア色のステージにピアノの音色が広がり、一気にノスタルジックな風景を作り出す。切なく響く歌声に優しいピアノが重なる。

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燿(Ba.)

『夜明けは雪と共に』『漣のロンド』と続き、あっという間に最後の曲を迎える。

「ラストーーー!」

そう言って始まったのは、今回のツアータイトルにもなっている『六花』。会場を照らす眩い光、透明感あふれる音色。徐々に広がっていく壮麗なサウンドは、まるで舞い落ちる雪が風に揺られながら降り続ける光景を想起させる。叙情的なこの曲を、苑はステージを端から端まで歩きながら、一人ひとりに語りかけるように歌う。「奇跡のような日々は続いていく」その歌詞にある通り、悲しみや過ちを抱えながら私たちは生きて、命を繋いでいく。

曲が終わった瞬間、拍手と共にメンバーを呼ぶ声が響き渡る。間違いなくこのライブで彼らが伝えたかったことは、私たち一人ひとりの心に届いた。彼らが魅せるこの夢は、私たちが生きていく上での心の拠り所の一つとなり、生きる糧になっている。
メンバーの姿が見えなくなると、まだ音が止まないうちからアンコールが始まる。
早く戻ってきてとばかりに、ファンの声が響き続ける。

今回のツアーTシャツに身を包んだメンバーがステージに姿を現す。

「名古屋!名古屋!名古屋ー!」

燿が出て来るなり会場を煽る。その姿は前ツアーでも話題となった袖ハラ(袖を切られること)を受けたノースリーブ状態(切られたわけではなく、自分で切ったそうです笑)響はサングラスにパーカー、短パン、サンダル姿。もちろんパーカーは袖がカットされたノースリーブだ。苑、彩雨もステージに姿を現すが、優介がなかなか出てこない。しばらく経ってようやく優介がステージに戻ってきたと思うと、苑がこんな一言。「信じられないんだけど、優介がこの一瞬でイヤモニをなくしました」と。どうやら楽屋に戻った際に外した際にどこに置いたか忘れてしまって探していた様だ(笑)先ほどまでのクールでカッコいい姿とのギャップについ観客からも笑い声が上がる。

その後、話の流れは響が履いているサンダルへ。サンダルは今回新しく発売されたツアーグッズだが、アンコールで披露するのは”もっともサンダルでやってはいけない曲”と言われた激しい曲ばかり。 しかし、耐久テストと称して響はサンダルのまま演奏することに。ファンだけでなく、メンバーの期待を背負ったパフォーマンスに会場から大歓声が上がる。

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響(Dr.)

ようこそと皆を手招くような優介の仕草で始まったアンコール1曲目は『RAINBOW』。苑はぴょんぴょんと飛び跳ねながら、両手で客席を煽る。その横に目をやると、優介が後ろを向いて屈んで響の足元を見つめている(笑)

七色に輝く照明に照らされ、腕を振り上げる客席。

次のイントロが始まると、リズムに合わせて会場から掛け声がかかる。

苑のデスボイスが響き『EVE』が始まると、フロアでは一斉にヘドバンが始まる。優介と彩雨がステージ中央で背中を合わせて音を奏でるその姿に目を奪われる。

続く曲は『ANOMIE』。優介は下手、彩雨と燿は上手へと、ステージの右へ左へとメンバーが動き回る。響が手を大きく左右に振ると、合わせて客席も手を振る。最後は手を握り締め、拳を突き上げる。

激しい盛り上がりを見せたセットリストから一転、苑の声だけが会場に響き渡った『真っ白な闇がすべてを塗り替えても』。今日一番激しく感じるバスドラムが鳴り響く。サンダルとは思えないパフォーマンスに驚きながらも、身体に響く音がライブでしか感じられない心地良さをもたらす。

「名古屋どうもありがとう!」

苑が高く手を伸ばす。会場からは鳴り止まない拍手。

そんな感動的な光景の中、響がサンダルを両手に立ち上がる。

響「サンダル丈夫なんで!」

その報告に皆思わず笑ってしまった。

メンバーが姿を消し、幕が閉じてもなおアンコールの声が響き続ける。その声は公演終了のアナウンスがかかるまで止むことはなかった。

摩天楼オペラが見せたこの夢をもっと見続けていたいという名残惜しさを残しながら、18周年に向けて更なる高みへと登っていくであろう彼らの今後に期待を膨らませるライブだった。

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Writer:Yukie Photographer:Mao Hashimoto

<セットリスト>

  1. BLOOD
  2. DYSTOPIA
  3. Ruthless
  4. TABOO
  5. 死人たちのパレード
  6. ここからは届かないあなたへ
  7. 翠玉のワルツ
  8. Apocalypse
  9. 闇を喰む
  10. Incessant Snow
  11. 愛を知りたかった幼き日々よ
  12. 夜明けは雪と共に
  13. 漣のロンド
  14. 六花

En1

  1. RAINBOW
  2. EVE
  3. ANOMIE
  4. 真っ白な闇がすべてを塗り替えても

<LIVE>
TOUR’25 六花 – Snowflake –
5/4 (日) 東京 Spotify O-EAST

18th Anniversary Live
8/10(日)日比谷野外大音楽堂

<関連リンク>
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