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【ライブレポート】姫路ベータ30周年記念イベント『Novastalgia』-2025.11.2(Sun)アクリエひめじ 大ホール-

MASCHERAを筆頭に、”姫路バンド”と呼ばれる1大ジャンルを築き上げた老舗のライブハウスが2025年11月11日、30年の節目を迎えた。
毎年、一週間に渡って周年イベントを開催してきたのだが、節目となる今年は一味違う。姫路でも真新しい大ホール「アクリエひめじ」にて、MASCHERA、illumina、defspiral、Psycho le Cémuと姫路バンドが一同に会し、姫路に縁あるアルルカン、Neu:NOIZ、PIKOを迎えた節目にふさわしい豪華なイベントとなった。
姫路という1つの場所から生まれた多様な音楽性、唯一無二の世界観。互いに響き合い、切磋琢磨した仲間との再会。30年分の想いを抱えて挑んだ特別な夜の様子をお伝えする。


アルルカン

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この日、幕開けを務める曲は『世界の終わりと夜明け前』。
暁(Vo.)の独唱からはじまり、文字通り”夜明け”を象徴するかのような眩しい光が会場を包み込む。送られる手拍子も陽の光を思わせるように暖かく、徐々に会場の熱を上げていく。激しく突き刺すサウンドの中に響く、切なさをまとった歌声が空間を支配する。
トップバッターとしてこれ以上ない堂々とした佇まいだ。

暁「今日、今この瞬間、ここを選んだということは。とことん楽しむということで間違いないでしょうかー!」

互いの感情を確かめ合い、誰一人取り残さないその気迫。時間にしてわずか数分、熱が体中を駆け巡るのを感じた。
続く『omit』では、開幕の勢いそのままに、手拍子からのヘドバンと激しく揺れる。
來堵(Gt.)、奈緒(Gt.)、祥平(Ba.)の3人もステージ前方にとどまらず、花道まで進み出て会場を煽る。それはまるで人々を操るように、駆けつけたファンの熱狂すらも音楽に変えていく。ガシガシと鳴く音と激しいシャウト。しかし、言葉は寄り添うように響く。
まだまだと言わんばかりに続いた『バール』ではこれまでの音とは一線を画す激しい重低音が会場を包み込むと、その音のど真ん中を暁の伸びやかな高音が突き刺す。
異様なまでの威圧感が会場を飲み込み、五感を全て支配するかの如く、見るものを離さず、ギラギラと輝くサウンドに息を呑む。飲み込まれたと錯覚するような衝撃。
そしてその瞬間、1つの大きな獣のようにして会場は生まれ変わる。熱気を帯びた会場に響き渡るギターと暁の笑い声。
今のアルルカンを代表する『ARTIST』がここで登場。色とりどりに輝くステージは命を燃やすように、彼らの生きる証をステージに何重にも刻み込む。それでもまだ足りないと言うような熱を帯びながら、『STIGMAS』へと続く。鮮やかにきらめく会場、奈緒のギターソロは伸びやかに響く。爪を立てるようにして、音を、歌を刻みつける。
ファンの声を渇望し、どれだけ生きた証を刻み込んでも彼らは決して満足することはない。
それどころか、さらに強く深く、ここにいる全ての人の、心の一番奥深くまで証を残しても足りない程に彼らは常に飢えている。その貪欲さが、彼らの強さに繋がっているように感じた。
そんな思いをより強く感じさせたのが『ラズルダズル』だ。
「両手を上げろ!」とその言葉に合わせて誰もが手を伸ばす。飢えていたのは彼らだけではなく、ファンも同じなのだと分かるほどまっすぐに伸びる手。1人ひとり求めるものは違っても今この瞬間、理想を求め足りない何かに手を伸ばす。
そして最後は彼らの代名詞でありファンの愛称でもある『ダメ人間』。それぞれのバンドファンに呼びかけ、この瞬間ばかりは全員がダメ人間であると宣言。
「ダメ」と言いながらも、その意味は決して否定ではない。己の弱さや痛みと向き合い、それでも前へ進みたいと願う全員と向き合い、同じ時間を共有していく。
熱狂と狂乱のステージ。互いに伸ばした手は触れることができなくても、確かに心は通じ合っていたと感じる。最後まで燃えるような熱が体の芯にまだ残っている。
最後に送られた「生きてまた会いましょう」の言葉。
MCで、暁は(兵庫出身だが姫路を拠点にしていなかった為)自身のことを「外来種」と表現し笑いを誘っていたが、送られた音楽と言葉は姫路ベータの歴史に確かに深く刻まれた。
今日ここで初めて出会った人、そしてこれから姫路で音楽を奏でる人にも、外来種らしく大きなインパクトを与えられたのではないだろうか。

Neu:NOIZ

幕が開くも無人のステージに、宇宙から降り立つようにして、1人、また1人とステージ降り立つ。
高揚感のあるショッキングピンクに染め上げて始まった1曲目は『MOSQUITOS』。ANGEL-TAKA(Vo.)は縦横無尽に広いステージを駆け回り、硬派ながらもネオンのように輝く鮮やかなサウンドが会場を包み込む。ギターサウンドも鮮やかに一曲目から弾けるように音を響かせる。
しかし、勢いだけに任せるだけではない。正反対に色を変えて続く『CRY』では、語りかけ、手を差し伸べるようにして光の中に招く歌声。どこまでも響く音色は光の尾を引き、会場を回遊するように包み込む。変幻自在に形を変える5人のサウンドは、まるで大輪の花火のように見るものを楽しませていく。
そして続くのはNeu:NOIZとしての始まりとなった『BURTH BIRTH』。
sebastian(Gt.)、DAISHI(Gt.)の二人で繊細に刻み重ね合うギターサウンドは流星群のように流れ込み、眩い光景に会場の熱はさらに上がる。
Neu:NOIZのライブの楽しみは、それだけでは終わらない。「ヘドバン曲行ける!?」とANGEL−TAKAが問えば、叫(Ba.)とYAMATO(Dr.)も勢いよく、更に分厚い重低音響かせ『Astronaut』が始まる。イントロに合わせて待ってましたと言わんばかりの激しいヘドバンが巻き起こり、突き刺すようなサウンドに合わせて、手拍子をしながら揺れる。
後半戦、ファンもまだ暴れたりないようで勢いを増していく。
続く『パルス』では、軽やかに跳ねるサウンドと、胸に刻み込む歌詞が混ざり合う。夕日に照らされ一歩一歩進み続ける。切なさをまといながら、内に秘める熱を消してしまわないように、静かに燃えるような情景が浮かぶ。強く、強く引き込まれるまっすぐな歌声が響き渡る。
ここまで続いた熱を絶やすこと無く、受け止めるようにして語る独唱の温かさが印象に残り続けている。
ここでさらに一段階ギアを挙げ、銀河の果てまで飛び立つような爽快感を纏う『Ritardando』が始まると、会場は期待と興奮に揺れる。ホールという会場をものともせず、ファンも自由に
文字通り踊り回る。どんな場所であろうとNeu:NOIZ色に染め上げ、誰もが思い思いに体を揺らし、今この瞬間を楽しんでいる。刻み込む重低音が全身に響き渡る。細胞一つ一つが震えるほどの熱気が体を包む中、いよいよラストは『SPEAce PRATES』だ。
サイレンの音で激しく煽られ、誰もが踊るように揺れる。メンバー全員、広い会場をものともしない自由に駆け抜けながら音を奏でると、舞台はこの日一番の輝きを見せる。ファンも待ってましたと言わんばかりの盛り上がりと一体感を見せつける。
徐々に徐々に高めてきた熱、それはロケットの発射のごとくラストはド派手に打ち上がり、高揚感と多幸感をいっぱいに積めて打ち上がった。
Neu:NOIZにとって姫路はホームではないが、ANGEL-TAKAは姫路出身であり、姫路のアマチュアバンドと一番対バンしてきたと、この日のMCで語っていた。多くのバンドと共に切磋琢磨してきた過去があったからこそ、今日という素晴らしい舞台へ彼らを導いてくれた。広いステージで鮮やかに輝く彼らは、間違いなく姫路には欠かせない音を刻み続けている。
姫路という歴史の積み重ねたステージから飛び立ち、多くのバンドとの絆で輝く銀河を大冒険したような、眩しくも暖かくそして美しい時間は、これからも永遠に輝き続けていくだろう。

PIKO

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赤い光が滲み、青い光が重なり合う。
客席にはペンライトの光が波のように揺れ、ステージに黒衣のシルエットが現れた。
黒いシャツにオーバーサイズのジャケット。そして、照明に反射する赤髪。
両手を振りながら登場し、PIKOのステージが始まった。
一曲目は『桜音』。目を閉じ、手を高く伸ばしたPIKOの歌声が響き渡る。桜色の照明の中、滑らかに降りるその声は春と哀しみを同時に抱いている。最後、真っすぐ前を見つめて「ありがとうございます」と微笑むその姿に、客席から拍手が広がった。
続く曲は『火花』。 青と紫の光が交錯し、リズムが一段と速まる。テンポのよいメロディの中、切なげな表情で歌うPIKO。その歌声は、まるで心の奥に火花が散るように会場全体に響き渡った。
「いやー、すごいところだね」
笑顔で客席に手を振る。
「めっちゃ緊張してたんですよ。さっきまでナーバスで…」と打ち明けると、客席から温かな笑いが起こる。「ビジュアル系の人たちって、普段から黒いんだなって…。僕、ジャージだったんですよ(笑)」と冗談めかして会場を和ませた。
「Janne Da Arcさんのコピーバンドをやっていたんですが…」
そういって始まったのは『feel the wind』若き日、初めて歌ったという思い出の曲。
Janne Da Arcの名曲に乗せて、彼の声が低く艶やかに響く。
yasuの歌い方を丁寧に再現しながらも、PIKOらしい伸びやかな表情で新しい息吹を吹き込む。ステージ上では楽器隊とアイコンタクトを取りながら、最後に高らかに締める。
「ピコー!」という歓声が客席を満たし、熱を帯びた空気がひときわ強くなった。「楽しんでますかー?」緊張の色が抜け、声に明るさが宿る。「今日は勇気を出して参加したんですが……さらに無謀にもコラボをお願いしました!」
その言葉とともに、ステージへ現れたのはdefspiralのTAKAとMASATO。会場が一気に歓声で沸き立つ。
TAKAの「一緒に楽しんでくれるかー!?」という声と共に、defspiralの前身バンドとして姫路で結成されたTRANSTIC NERVEから『OVERHEAD RUN』を披露。PIKOとTAKAがステージの中央で向かい合い、交互に歌う。「ギター MASATO!」とTAKAが紹介すると、MASATOが前に出てギターソロを放つ。手を伸ばし合い、ハモり、共鳴し合う二人。緊張していたPIKOの表情が、ふと和らぎ、笑顔がこぼれた瞬間だった。
客席から飛ぶ「ピコー!」の声に、PIKOが笑いながら応える。「今日の山場は終わった!あとは気楽やで!」ここからは地元の播州弁で喋ろうか、とリラックスモード。
「最高の時間ありがとうございます!最後はこんなピコもあるんやぞというのを見ていってください!」挑むような笑みを浮かべた。
「頭振る準備はできてるかー!声出す準備はできてるかー!お前ら全員かかってこいやー!」その叫びに、再び会場が熱を帯びる。
『拝啓ドッペルゲンガー』。爆音と共に、嵐のようなステージが始まる。ヘドバンの波。ステージを左右に駆け抜け、PIKOは激しく歌い上げる。高音の早歌いが鋭く突き刺さり、客席からは「オイ!オイ!」と掛け声が響く。「もっとこいよ!姫路のみんな好きだー!」照明が眩く輝き、彼を包み込む。ラストは両手を広げ、マイクを離して声を放つ。その肉声が会場の隅々まで届き、光の粒のように消えていった。
「ありがとうございましたー!」
美しさと激しさを見せた、PIKOのステージ。最後まで笑顔でにこやかに笑いながら、この一瞬を本当に楽しんでいるのが伝わってきた。その声の残響は、フェスの熱狂の中でも確かに輝きを放ち、“挑戦する歌い手”としての姿を刻みつけた。

MASCHERA

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『TRUTH IN THE STORMY GARDEN』の印象的なイントロと同時に幕が上がる。幕開けに相応しい高揚感を孕んだ1曲だ。
注目したいのはHIROの立ち位置で、2024年のmichi.ソロ仮面舞踏会の記憶が新しいファンは驚きと喜びに包まれたことだろう。
MASCHERAとしてのHIROの定位置は上手。そのことを鮮やかに思い出し、今日は紛れもなく待ち望んだMASCHERAだと再認識した。
高鳴る気持ちそのままに続くのは『ラストフォトグラフ』。次の『[ekou]』と合わせて、MASCHERAを代表するシングル曲が続き、会場はますます盛り上がりを見せる。この日のmichi.の伸びやかな声はまた一層厚みと深みを増し、質量があったように思う。
曲が終わるとあちこちからメンバーの名前を呼ぶ声が飛び交う。
「前回の復活から13年の時を経て、また姫路に戻って参りましたMASCHERAです、よろしく!」michi.の声が響き渡り、TOMOのドラムが煽る。
姫路ベータへの寿ぎの言葉を紡いだあとは、ベースHIROにMCの主導権を渡す。
「こんちくわ!」変わらないHIROのユーモラスな挨拶に、会場は温かな拍手と歓声に包まれる。この柔らかな空気の作り方はいつでも客席とステージの距離をぐっと近付ける。
ここでTAKUYAの近況にも触れ、今はここにいられないメンバーのこともしっかり伝えてくれるのはファンにとっては嬉しい限りだ。また2026年に開催されるALICE IN MENSWEARとMASCHERAの対バンライブの予定も告知され、楽しみはまだまだ続く。
続く曲は『DEN-NO』。インディーズの頃からライブで愛されている曲だ。
今回もギターのサポートは菅大助。ステージを目一杯使い、ギターとベースで位置を入れ替わってのパフォーマンス。激しさとスピード感を湛えたまま5曲目『HYPERDELIC AGE』と、ステージはクライマックスへと向かう。
ラストはto fly high。天高く駆け上がるような疾走感に振り切った楽曲だ。MASCHERAの締めくくりとしてはもちろんのこと、次のバンドにステージを渡すことを踏まえてもこれ以上ない選曲だろう。天高く飛び上がった先でmichi.が客席にマイクを向ける。
メンバー紹介を最後に行い、客席みんなでmichi.の名を呼ぶ。捌ける時も、TOMOとHIROのリズム隊の仲の良さが伺える。
今回、メンバーの衣装も13年前の復活ライブを意識したようでもあり、あの時止まった時計が動き出すような感覚を覚えた。
MASCHERA(仮面)の名の通りさまざまな表情を魅せる楽曲を盛り込んだ最高のステージ、限られた時間の中で彼らが見せるパフォーマンスは極めて完成度が高く、安定感と圧倒的な存在感を改めて知らしめたと言っても過言ではない。
MASCHERAというベータを語る上では外せない核のようなバンドをこのイベントの出演順真ん中に持って来たのは粋な計らいで、今も連綿と続く彼らの絆のようなものを感じた。

illumina

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『忘れないで』の軽やかなアップテンポのナンバーから始まる1曲目。
SEが終わり幕が開いた瞬間からヴォーカルのNaoがとても楽しそうで、嬉しさと喜びが溢れんばかりだ。今日この日を待ち望んでいたのはファンだけではなくメンバー自身もそうだということを全身で表してくれている。
疾走感そのままに続く『Time Limit』。スピード感溢れるメロディに少しづつスロットルを上げていく。ギターのTARとアイコンタクトを取りながら歌う様子はファンにとっても胸が熱くなったことだろう。バンドの楽しさがここでも光っている。
曲が終わると客席からはメンバーを呼ぶ声が飛び交う。
MCでは、幕が開く前からSATOMやTARの名前が呼ばれるのを羨ましく思うNaoの嘆きに、会場からは即座にNaoの名を呼ぶ声が上がる。こういった場を温めるトークもNaoらしさが溢れている。そのままメンバー紹介と自己紹介。ベースをサポートするのはHIROKI。
最初にNaoが丁寧に姫路Beta30周年のお祝いの言葉を述べる。1995年のBETA柿落とし公演のことにも触れて、MASCHERAとilluminaが出演したことなど当時のことを初めて知るファンも多かったことだろう。まさにこの日に相応しいとっておきのエピソードだったのではないだろうか。
3曲目は『遠い夜明け〜art  of sky〜』。Naoの伸びやかな声が印象的だ。Naoを見ていると、本当にステージパフォーマンスが好きだということがダイレクトに伝わってくる。
伸びやかで広い音域、柔らかさとしなやかさを湛える歌声を支えるギターとドラム。
続くはこれからのホリデーシーズンにぴったりな『Winter evening』。暖かくしっとりとしたナンバー。
再びのMCでは今日使っているギター自体も柿落とし公演で使ったものだと披露してくれる。この日のとっておきのような、スペシャルな用意がとても嬉しく思う。
そんな心温まるMC明けから続く『Style&Soul』はラストに向けたアップテンポナンバー。印象的なギターソロと客席全てを巻き込む振り付けは全身で楽しむ以外考えられない。
そして今日を締めくくるのは『Love Sick』。盛り上がりも最高潮に達し、会場も熱気に包まれる。弦楽器隊のシンクロする動きは客席をも揺さぶる。
客席も一緒になって歌い、illuminaの作り出す世界と一体化する。
暖かく熱く楽しい時間はここで幕を閉じる。いつまでも余韻に浸っていたいような温かな贈り物をしっかり受け取ったようだ。

defspiral

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毎年必ず姫路Betaの周年を祝ってきたdefspiral。杮落とし公演以前から今日まで続くその縁は、やはり特別な思いが溢れたステージとなった。厳かなSEと共に光に照らされたステージをメンバーを呼び込む大歓声が包む。
鮮やかな光が宙を舞うと、情熱的に燃えるダンスナンバー『Nyx Dance Hall』で舞台は幕を開ける。大人の色気溢れる重厚かつ艷やかな音は、深い闇の中で燃える篝火のような温かさ。そのサウンドに惹き込まれ、誰もが体を揺らし祝祭へと導かれる。
TAKA(Vo.)の伸びやかな歌声が響く広いステージ。今のdefspiralをガツンとぶつけながらも、特別な日を祝う華やかさが会場を包む。
続く曲は『PULSE』。TAKAの激しい煽りに応えるようにしてRYO(Ba.)はステージの中央に立ち、重厚なベースソロで会場を震わせ、一層強い引力でより深い世界へ引き込んでゆく。絡み合う4人の音が示すのは、積み重ねられた30年という長い年月で培った圧巻の存在感。それでも、まだこんなものじゃないと言わんばかりに、もっともっとと激しく煽る。

TAKA「姫路に来てくれてありがとう。自分が主役のつもりで思いっきり楽しんでください!」

そんな温かな言葉と共に送るのは、鮮やかにきらめくミラーボールのようなカラフルな景色が広がる『SPIN THE UNIVERSE -Ai No Wakusei-』。
まるで会場全体が銀河になったような雄大で鮮やかなサウンドに心踊り、誰もが無重力の中で踊るような高揚感に包まれる。MASATO(Gt.)のギターソロ、華やかに跳ねる和樹(Dr.)のドラムサウンドに合わせ体を揺らす。圧巻のパフォーマンス力、そして祝祭にふさわしい光に包まれた温かなステージに胸が熱くなる中、最新曲『銀河航路』へ。
彼らの音楽は時に火花のように激しく、そして時には星のように優しく、限られた時間の中でも変幻自在に姿を変えていく。鮮やかな祝祭のステージから、厳かな祈りの場へと景色は移り変わる。その歌声はバンドとライブハウスの軌跡を繋ぎ、夜空に大きな絵を描いていく。30年の長い歴史を振り返りながら、出会えた奇跡、そして今日この場所を選んだ喜びを分かち合う。象徴的な「再会の夜」という歌詞はベータから巣立ったバンドや、ベータに足を運んだことのある人々へ向けた最大の祝辞のように聞こえた。この日を誰もが待ち望んでいたのだ、そう感じた瞬間であった。

TAKA「素晴らしい夜がこれからも続いていくように願いを込めて歌います」

その言葉に誘われるように続く曲は『Nitefall』。穏やかな歌声は月明かりのように、きらめくサウンドは星の瞬きのようにして、光が会場を包む。音の一つひとつを噛みしめ、胸に刻むように誰もが聞き入る。始まりの場であり夢の入口でもある姫路ベータ。その場所があったから今も走り続けてきたと、MCで感謝を述べていた。その思いを歌に乗せ送る温かな祈り。
defspiralとして15周年の節目を迎えた今年を象徴するこの曲は、他にはない唯一無二の光を纏う。どこまでも伸びるサウンドが優しく、そっと撫でるように包みこんでいった。
しかし、それだけでは終わらせない。ラストはこれからの未来へ希望を乗せて送る『SATELLITE』だ。流星が駆け抜けるようにきらびやかなサウンドが、輝かしい可能性と共に広がっていく。
拳を突き上げ、未来に向かって手を伸ばす。ライブハウスの周年イベントとしてはこれまでにない規模のステージ、様々な思い出と共に駆け抜けた舞台で最後に描き出したのは「今この瞬間」への祝福。これまでの感謝ではとどまらない、ここで出会い、この先の遠い未来まで共にいられるように、願いを込めた光の雨が降り注ぐ。
愛の溢れる圧巻の舞台は幕をおろしたが、今日この景色を永遠に忘れることはない。そして、これからも彼らは姫路の舞台に立ち続けてくれるのだろう。

Psycho le Cému

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この夜のフィナーレを飾るのはPsycho le Cému。
幕が上がると共に、曲が鳴り響く。メンバーカラーのネオンが客席一面に広がり、ステージにメンバーが姿を現すと観客の期待と高鳴りが一気に爆ぜた。
1曲目に選ばれたのはインディーズ時代からの名曲『クロノス』。今回の姫路Betaの30周年を祝う舞台にはぴったりの選曲。重厚な旋律が鳴り響き、一気に聴く者を異世界へ誘う。DAISHIがクロスを切る仕草に合わせ、ファンたちも手を胸の前で十字を描く。
やがて手拍子が広がり、彼らならではのメンバー紹介が始まった。今回の衣装、シャクティ シャクティ アスティに合わせた“神々の紹介”だ。
今日初めて彼らのライブを観た人でも、あっという間にサイコ・ル・シェイムの世界観に引き摺り込まれる。
途中にメンバー紹介を挟んだクロノスが終わると、ベースソロが響き始まったのはメジャーデビュー曲『愛の唄』。ここでもまた「こう来たか〜!」と思わせる選曲。“オイ!オイ!”という掛け声が響き渡り、会場が一つになっていく。seekとLidaがステージ前に出て肩を組み、AYAが優雅に舞い、YURAサマが客席を煽る。DAISHIは膝をつき、手を広げて歌声を響かせた。愛の形を音で描く、儚くも強い瞬間。照明が消え、ステージが一度闇に包まれる。背後から光が射し、5人のシルエットが浮かび上がる。
異国情緒漂うイントロが始まり、ステージは一気にダンスフロアへと変貌。最新曲『シャクティ シャクティ アスティ』では、YURAサマもドラムスティックを置き、AYAと共にキレキレのダンスを披露。間奏では曲に乗せてメンバー5人の動きが完璧にシンクロする。思わず踊りたくなるメロディーが観客の身体を無意識に揺らした。
4曲目は『激愛メリーゴーランド』。華やかな照明の中、DAISHIの力強くも伸びやかな声が空間を満たした。Lidaのラップが絡み、YURAサマとAYAのパラパラダンスが会場を盛り上げる。そういえば当時は振り付けレッスンとかあったな〜!と懐かしさを感じつつも、色褪せないどころかパワーアップすらしているような彼らの熱いステージングに胸が熱くなった。
「ぶっ飛ばしてして行こうぜー!行けんのかー!全員まとめてかかってこい!叫べー!」seekの怒涛の煽りで、会場は一瞬にしてカオスと化す。『Revenger-暗闇の復讐者-』。seekが振り撒いた水しぶきが宙を舞い、激しいパフォーマンスが始まった。激しく頭を振り、客席の熱気も急上昇。
そのまま『Murderer・Death・Kill』と激しい曲が続く。曲に合わせてファンが一斉に拳を突き上げる。疾走感ある曲に乗せて、seekがステージを飛び出し、客席を練り歩く。ステージに戻ってDAISHIのマイクを奪い客席を煽ったかと思うと、再び客席へと戻り、観客の一人と肩を組んだまま二人で頭を振る。ステージとフロアが一体となり、爆発的な盛り上がりを見せた。フェスの熱が極限に達した瞬間だった。一瞬の暗闇に包まれた後、静寂の中でDAISHIがマイクを握った。

「姫路Beta30周年おめでとうございます!」

その一言に拍手の波が押し寄せる。
そのまま彼は、バンドをやろうと決めた高校時代、MASCHERAのMichiにライブを観に来ないかと誘われた夜、そしてそのライブを見たことをきっかけに再び諦めかけた夢を追い始めた過去を語った。

「Psycho le Cémuは26周年。僕たちは武道館に立とうと夢に向かってがんばっています。」

その言葉に、客席からは歓喜と涙が入り混じったような拍手が溢れた。
「みんな絶対武道館に連れていくからね!僕らがいる世界は君がいる世界です!」
その言葉を受けて、この祝宴を締めくくる最後の曲『君がいる世界』が始まった。
希望と未来を感じるような輝くメロディーに乗せ、DAISHIが胸を叩き、力強く歌い上げる。

「みんなの声を聞かせて!」

DAISHIがそう願うと、その場にいたみんなが歌声を響かせる。
大合唱のなか光が降り注ぎ、30周年を迎えた姫路Betaの未来へと続く道を照らした。全ての曲が終わり歓声に包まれる。

「姫路どうもありがとうございました!」

そう叫んだのはseek。

「楽しかったかー!かっこよかっただろー!これが姫路Betaの歴史だー!!」

見たか。これが俺たちが愛する姫路だ。Betaだ。その魂の叫びに、目頭が熱くなる。
鳴り止まぬ拍手の中、今日のステージを彩ったバンドたちが次々と姿を現し、それぞれの言葉で祝福を贈る。
そして最後に、姫路Betaの田中社長が登場。創業から今日に至るまでの軌跡を語るその声に、会場の空気が静かに引き締まった。
決して平坦ではなかった年月。その道を照らしてきたのは、スタッフの努力、観客の愛、そしてこの場所を舞台に羽ばたいていった数多のバンドたちだ。
音楽が生まれ、育ち、繋がっていく場所。これからもきっと、新しい物語がBetaのステージから始まるのだろう。
そんな未来を信じ、共に見続けていきたい——そう心から思えた夜だった。

「姫路Beta 30周年おめでとうございます!」

この言葉で締めくくられた、姫路Beta 30周年 Novastalgia。
最後はステージも客席も笑顔が溢れ、みんなに愛され続ける姫路Betaにふさわしい感動のフィナーレとなった。


30年の歴史をたどる同窓会のようでありながらも、新しい時代への道を切り開いた一夜は感動の拍手に包まれ幕を降ろした。
MASCHERAから始まった姫路の音楽シーン。その土台を担った姫路ベータは「バンドを育てるライブハウス」として、彼らの背中を見守ってきた。唯一無二のライブハウス、そこで育ったバンドもまた、唯一無二の輝きを放ち、特別な夜を華やかに彩ってくれた。時代の波を大きく動かした姫路ベータは、これからも変わらず同じ場所で多くのバンドを育てていくのだろう。
31年目の姫路ベータ、新たな歴史の刻まれる場所にぜひ足を運んでもらいたい。


Writer:藤村 栞里 Photographer:上田 成昭