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【ライブレポート】摩天楼オペラ 17th Anniversary Live -2024.5.4 LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)-

2024年5月4日。祝日に賑わう渋谷の街に、摩天楼オペラの名を記した旗が揺らめいた。17周年を祝した花が会場前にずらりと立ち並び、通りゆく人々の目を奪っていく。
それは彼らへの祝福であり、感謝であり、そして何よりも今日という特別な日を、これまでで一番輝かしい夜にしてくれるに違いないという期待の現れであった。
17年間の活動は決して平坦ではなかった。しかし、歩みを止めることなく音を奏で続けたからこそ、今日この景色を創り上げる事が出来た。もちろん、画面越しにも多くのファンが見守っていたことも忘れてはならない。
全国のオペラーが見守った17年の集大成、そして18年目へと続く特別な夜、「摩天楼オペラ17th Anniversary Live」の様子を余すことなくお伝えする。

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いつもより緊張感のある会場は厳かな空気に包まれていたが、SEが鳴り始めると同時に大歓声と拍手で皆はメンバーを出迎える。
響(Dr.)の弾けるようなドラムから幕を開け、優介(Gt.)、燿(Ba.)、彩雨(Key.)もステージへと続く。白い光に包まれ浮かび上がるシルエットからビリビリと始まりの音が響く。音の余韻を残し、満を持して苑(Vo.)はステージ中央に姿を表す。待ってました、と言わんばかりに会場の空気は揺れ動き、ついにその瞬間は訪れる。

五月雨のように降り注ぐ閃光の中、苑の美しい声が厳かに伸びる『Eternal Symphony』。紡がれる歌詞は、今日ここへ集ったファンへ向けた5人の思いをそのまま表すようで、受け取るファンも皆嬉しそうに体を揺らす。
ハイトーンの歌声は神々しく、重厚な楽器隊が歌声をより鮮やかに彩る。始まりから、いや始まりだからこその期待を裏切らない圧巻のパフォーマンスに鳥肌が止まらないでいた。まだまだ、こんなもんじゃない。そう宣言するように、光に包まれた箱庭はどこまでも広く輝きはじめる。

苑「さあ始めようか!」

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苑(Vo.)

続く曲は『EVIL』。イントロとともに弾けたエアバーストに、思わず「わっ!」と声を上げるほどの、かつて無いほどの情熱的な演出に目を見張る。
荒々しく突き刺さるも、繊細なメロディが一瞬で会場の空気を創り変える。バチバチと弾ける閃光は曲の世界そのもの。高音から低音へ、そして再び高音へ。歌声は遠くまで響き渡る。燿のベースは鋭くうねり、優介のギターはギラギラと光る。この激しさと、美しく輝く世界こそ摩天楼オペラだと、音は語る。

そこにあるのは単純な技術の高さだけではない。熱く燃えたぎる目の奥で輝く光が射抜くようにして、彼らは更なる高みの景色を目指して曲を紡ぎ始める。
響のドラム、そして苑の魂の叫びが続く。色鮮やかに輝く世界で彼らの音は万華鏡のように無限の音色を響かせる。『Murder Scope』だ。

新旧交互に織り交ぜられたセットリストに会場は歓喜する。今の摩天楼オペラの曲へと昇華させたのは、優介と響の持つ力量あってこそ。単独インタビューで苑の口からも誇らしげに語られた摩天楼オペラの一員としての自負が、奏でる音から確かに伝わってくる。
余韻を楽しむように、楽器隊は伸びやかに音を重ねる。ファンは鳴り止まない拍手と大歓声で応えた。

苑「17周年ライブにお越しいただきありがとうございます。今日は皆さんがきっと望んでいるであろう、いついかなる摩天楼も、みんなが望んでる曲を持ってきました。今回はメンバーからも『セットリストいいね』と。今日は楽しいだけの日にするので、皆さん楽しんでいってください!」

眩い光につつまれたかと思うと、激しいドラムとともに響は煽る。
そしてステージ上のトーチを灯し、揺らめく炎が妖しくステージを染め上げる。まるで嫉妬のように燃え上がる炎が描くのは『舌』だ。
赤とピンクを基調とした夜の瞬きを思わせる照明に照らされ、会場も苑の歌声に合わせて自由に揺れる。切なく揺らぐメロディーは、痛いほどの悲しみを表現しながらも会場を沸かし、『誰も知らない天使』へとEP『EVIL』からの楽曲が続く。摩天楼オペラらしい神々しさと、サイケデリックな輝きが会場を染める。その光景は息を呑む程美しく、全身がしびれるような感覚が終始続いた。照らす光は音を乗せ、五感の全てが彼らの創り上げる世界に飲まれてゆく。

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優介(Gt.)

続いて『悲哀とメランコリー』では苑はタオルを振り回し、彩雨もマイクに向かい、響もセットから立ち上がり、ファンを煽る。
優介、燿は立ち位置を入れ替わり、ファン全員の顔を見るようにして、時に激しく煽る。時に肩を並べ、一つのマイクに向かい絶叫する。これまでのステージとはがらりと雰囲気を変え、軽やかに舞うステージの上で、重厚なメロディに誰もが酔いしれてゆく。
ステージからは激しくスモークが上がると『S』へと繋がる。流れゆく心地よいリズムは、正面から受け止めているにも関わらず、追い風のように肌をすり抜けて、摩天楼オペラという風を全身で感じる事が出来た。一変して『ローンデイジー』では、流れる流星のようなメロディと、鮮やかな黄色い光に照らされるステージが印象的だ。入れ替わる光のコントラストは美しくも切なさを含む。暖かい光に包まれる中、祈りを込めた言葉に、儚く揺れる花のように鳴るメロディにそっと耳を傾けていた。

そしてここからは世界観が変わって楽器隊の腕の見せ所『Apocalypse』。バチバチと瞬く閃光の中、4人のシルエットが闇の隙間から姿を表す。
一人ひとり順にスポットライトで照らされ、曲の輪郭を少しずつなぞると、サビでは4人の音が繊細に狂いの一つもなく絡まり合う。音のシャワーに溺れるように、彼らの奏でる音を浴びる。その音は遥か彼方まで響き渡り、いつまでも聞き続けていたいと思わせるほどに、会場を圧倒してゆく。
最後のギターのフレーズが儚く揺れ、ベースは寄り添うように大地を揺らす。どこまでも美しい光と音のアンサンブルは摩天楼オペラでしか味わえない、まさに魔性のステージである。会場からは割れんばかりの大きな歓声と拍手が送られた。

メンバーを呼ぶ声を背に受けながら、彩雨はキーボードに手を伸ばす。スポットライトに照らされ、苑と2人で奏で始めるは『輝ける世界』。しなやかに伸びる歌声を厳かに縁取ると、クリスタルのような透明感をまとったドラムが光を受け、暗いステージ上で淡く輝く。温かな光はゆるやかに5人を照らし、「あなたに会いたい」と悲痛に揺れる切ないハイトーンが響く。
回るミラーボールは月明かりのようにきらめき、ステージ上には音の雨が振り続ける。音が止むと同時に、盛大な拍手が巻き起こった。皆が待ち望んだ楽曲なのだと、鳴り止まない歓声は物語っていた。

続くMCでは、苑は「懐かしいね。長いことやってこなかった曲、またここの会場でやれてよかったです。ここで一曲座って聴いていただいていいですか」と、『輝ける世界』の感想と共に、全員に着席を促す。ホールでしっとりと聴いてもらいたいという苑の思いを伝えると、優介はアコースティックギターに持ち替える。久しぶりに届けたい、と披露されたのは『眠れる夜』。
ステージ上のトーチからは再び炎が上がる。厳かに照らす火は、ステージに微かな光をもたらしながら静かに揺らめき始める。苑の歌に、優介のギターは優しく寄り添う。
頬をそっと撫でる柔らかなぬくもりから、次第に重厚感のあるメロディへと大きく形を変え会場を包み込む。どこまでも予想のつかないステージは変幻自在に景色を変えファンを楽しませる。孤独な夜を照らし、想いを紡ぐ摩天楼オペラという光に思わず涙が零れた。

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彩雨(Key.)

再び景色は変わって、赤い光がステージを飲み込む『COCOON』が始まる。この緩急も摩天楼オペラの持つ魅力の一つだ。一つひとつの音が輪郭を持ち、曲を形づくり、彼ら5人の存在を浮かび上がらせる。皆はその音に身を任せるように、色とりどりのペンライトを揺らす。この日発売されたばかりの新色、桜色のペンライトも鮮やかにこれまでになかった世界を共に創り上げてゆく。
苑はマイクを客席に向け、ファンと共に歌う。

――1人きりの歌を一緒に

その言葉を噛みしめるようにメンバーも演奏する手を止め、ファンの声を全身で受け止める。苑の歌声、ファンの歌声が交互に何度も繰り返される。誰も取り残さない。そんな思いの込められた声が、メロディーがこの場にいる全員の心に届いたであろう。苑の表情は喜びを噛みしめるようで、続く歌声は美しく響いた。
そして勢いを保ったまま『闇を喰む』へと繋がる。苑の美しい声が閃光と溶け合い、ガラスのように突き刺さる。全身に音を刻みつけるような激しさは、まさに曲名にふさわしく、貪欲に聞く者の胸に噛みついてくる。

どの世代のファンも楽しめるライブ、と事前のインタビューでも語っていた苑。この曲もまた、新たに摩天楼オペラを知ったきっかけとなった人も多いのだろう。この景色を共に迎えた喜びを誰もが感じているようであった。
そして続く『GLORIA』を会場は待ってました、と言わんばかりのヘドバンで出迎える。

苑「お前らに祝福を!」

その言葉と同時に金テープが空を彩り、今日という日を、集まったファンを祝福する。しかし、まだまだこれからだと言わんばかりの熱量で、既に摩天楼オペラは18年目へと進み始めている。曲半ばでありながらもそう思えるほどの力強さがあった。
その勢いのまま、いよいよ本編ラストを飾るのは、『喝采と激情のグロリア』だ。

苑「聞かせてくれ東京!!!」

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燿(Ba.)

観客の声が一つになり、今日という日を祝福する。メンバーもイヤモニを外し、もう一回!と声を求める。苑はファンへの思いを、歌声へと乗せる。それは、マイクを使わず会場全体を震わす、まさに圧巻としか言葉の出ないパフォーマンスであった。敢えて書くが、その感動は「百聞は一見に如かず」という言葉でしか表現出来ないのではないだろうか。会場からは割れんばかりの歓声と、苑を呼ぶ声で埋め尽くされたことが、全てを物語っている。
そこから繋がる4人の奏でるメロディーも、重厚にホール全体を埋め尽くし、音の力で心を奪う。今日という夜を締めるにふさわしい演奏であった。
大歓声に包まれる中、5人はステージ上を余すことなく見つめ、手を振り、今日という日の感謝に深々とお辞儀をし、ステージを後にした。

当然このまま17周年を終えていいわけがない。会場の光が落とされるより早いか、アンコールが大きく響き渡る。そして、会場の熱は冷めやらぬまま5人は再びステージに揃う。

苑が「今日のすべてが全部感謝ですありがとうございます」と感謝を述べると、どう響?と突然のフリ。
響は戸惑いながらも、「ここめちゃくちゃでかいですね、3階(席)高!怖そう(笑)摩天楼オペラ17周年ですけど、僕が叩き出して何年かなと振り返るんですね。今日は摩天楼オペラで出た中で一番大きい場所だと思います。今日来てくれて嬉しい、本当にありがとうございます!」と振り返る。

燿「いろんなことがあって今日があって、5月4日っていろんなイベント被ってるし、なんでこの日周年にしたんだろうって思いますね(笑)。そんな中で我々を選んでくれて、配信も見てくれてありがとうございます」

彩雨「ここ(渋谷公会堂)の響きも味方にして音楽を届けられたら、またホールでやれたらと思います。ホールでやったら来てくれますか(苦笑)」

優介「まずはバンド17周年、他人事みたいですがおめでとうございます。2年前のこの日に加入して、誕生日が一つ増えたような感覚です。18年目力貸してくれますか!」

と皆が言葉を送ると、その度にファンは拍手で応える。
更には、12月のアルバム発売、そして全国ツアーと嬉しい告知が続いた。苑が順にツアー日程を読み上げる度に、必ず会場の何処かから歓喜の悲鳴が上がる。ツアーの喜びは勿論だが、今日という日のために全国からファンが集まっていたことを証明していた。
そして、目前に迫ったシングルツアーのタイトル「SNOW IN MIDSUMMER」を発表。新曲『夜明けは雪と共に』についても苑は「作ってみたら雪の曲だったんだよね。摩天楼オペラは冬のバンドということで、夏にすんげぇ冬の曲を出します」と語ると、会場からは温かい笑いが起こった。
日差しも夏めく日々が続いているが、外の世界など彼らはお構いなしに、5人は摩天楼オペラの世界を描きづづける。紹介とともに奏でられるアンコールの1は曲目もちろん『夜明けは雪と共に』。スチームが足元を覆い尽くす様は、まるで雪景色のよう。冷たく、儚く舞い散る雪のように、しんしんと音が降り積もる。初めて披露される楽曲に耳を澄ませ、その音を聞き逃さないように誰もが耳を傾ける。

「ありがとう」

苑が最後に紡ぐと、喜びと期待のこもる大きな拍手が起こった。


一転して激しく、閃光が弾け飛び、ステージは色鮮やかに表情を変える『EVE』に熱狂的な盛り上がりを見せる。苑のハイトーンもいっそう鮮やかに空を切り裂き、優介のギターソロに彩雨のサウンドが並び、美しく音を重ねる。エネルギッシュに感情は爆発し、苑はステージを舞う。どっしりと重厚感のあるリズムが会場を歪ませ、燃え上がる熱気に、誰もがもっともっとと音を求めると、『alkaloid showcase』へと続く。割れんばかりの轟音が会場を包む。刻まれる音は命の鼓動。「息をして、息をして!」と苑は観客へ言葉を送る。鮮やかな光の交差する会場は、誰もがその生命を謳歌し、命を燃やし、思いのままに魂を震わせる。今日まで生き続けてきたこと、そしてこれからも摩天楼オペラと共に行きていくオペラ―へ送るメッセージだ。美しく輝く生命の賛歌。魂からのリズムが今日という日を鮮やかに染め上げる。

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響(Dr.)


間髪入れず続いたのは、前回のツアーから新たに摩天楼オペラを彩る確かな柱となった『光の雨』。客席からも色とりどりの輝きが波打つように押し寄せる中、降り注ぐ光の中に苑の歌声が響く。その神々しさに誰もが息を呑み、5人の姿を目に焼き付けていた。
美しく幕を下ろしたように見えたが、熱狂はまだ終わらない。

苑「今日はたくさん歌わせましたが、最後の曲はAメロからサビまで全部歌います。僕たち5人の始まりの曲、これを全員で歌いましょう!」

そう宣言されると、会場からはこの日一番の歓声が上がる。『真っ⽩な闇がすべてを塗り替えても』こそ、この日を締めくくるのにふさわしい曲は無いだろう。5人は最高のパフォーマンスを見せつける。それだけでなく、観客一体となって創り上げる特別な空間に思わずため息が零れた。5人の音が重なり合い、摩天楼オペラ17年の歴史を飾る素晴らしい瞬間に立ち会えたことに感謝を伝えたい。そして、これからもこの日以上の景色を見せてくれるであろう摩天楼オペラから目が離せない。

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Writer:藤村栞里 / Photographer:Litchi / Hair makeup:深澤莉恵(M’s hair & make-up)

<セットリスト>

  1. Eternal Symphony
  2. EVIL
  3. Murder Scope
  4. 誰も知らない天使
  5. 悲哀とメランコリー
  6. S
  7. ローンデイジー
  8. Apocalypse
  9. 輝ける世界
  10. 眠れる夜
  11. .COCOON
  12. 闇を喰む
  13. GLORIA
  14. 喝采と激情のグロリア
    – SE(地球_END SE) –

 En 1

  1. 夜明けは雪と共に(新曲)
  2. EVE
  3. alkaloid showcase
  4. 光の雨
    – SE(光の雨_END SE2)-

 En 2

  1. 真っ白な闇がすべてを塗り替えても
    – SE(真実を知っていく物語_END SE2) –

<関連リンク>
■摩天楼オペラ Official Website
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