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2024.07.04

【本誌巻頭特集】[ kei ]スペシャルインタビュー

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「これが本当の自分なんだ」という感覚になった——

今年は「LADY BLUE」「THE CURSE」、6月21日に発売される「PIXIE」の連続リリース、8月12日にはLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)でのワンマンを控える[ kei ]。
今年は“攻めの年”と語る[ kei ] に音楽性、昔と今に対する思いなど、存分に語っていただいた。



そうですね。今年は〝攻めの年〟ですね。


音源も当初はライブに合わせて4ヵ月連続でリリースする予定だったんですけど、2作目で早速つまずきまして(苦笑)。でも、月イチでライブを連続でやっていくほうは。


この4カ月間、プライベートでもいろんなことがあったんですけど、1本1本ライブの感触も違っていて本当にやってよかった。そのなかでも、つい先日行なった5月の最後のライブは印象的だった出来事が1つありまして。リハーサルの時だったんですけど。ギターを持って舞台のセンターに立って自分にスポットライトが当たった瞬間に、すごくしっくりきたんです。いままで感じたことがないようなホーム感というのかな。これまでの俺はここに立つためにすべてがあって、だからいまここに存在してるんだなと感じたんです。その日はライブもそういう心境でやれたんです。


BAROQUE休止して約4年、歌い始めて3年近く経ちますけど。元々自分はギタリストだったので、ここまで試行錯誤、葛藤の連続だったんですよ。その期間を経て、やっと本当の意味で自分の精神といま演ってることが繋がったような気がしたんです。自分にスポットライトが当たった瞬間、なんか奇妙な感覚になって。逆光の中で、すごく大きな会場にいるような錯覚を感じたんですね。それが自分の深い部分とリンクして「ああー、ここは自分の場所だな」、「これが本当の自分なんだ」という感覚になったんです。センターに立って歌うというステージは、ファンに連れて来てもらって立たせてもらってるという感覚が強かったんだけど、もう「立たせてくれてありがとう」だけじゃない。「これだ」というスイッチが入って、自分と一致した感じです。


じつはそうなんです。僕はファンの人を始め、スタッフもそうですし、関係者の方々も含め、本当に周りの人に恵まれてるなと思うんですね。そういう人たちに連れて来てもらって。最後に自分が自覚するというのが多いんですけど。その瞬間がきた、という感じですかね。


製造している場所は友達のミュージシャンがやってるカフェバーなんですけど。たまたまそこでカセットを見て、グッズとして可愛いなと思ったんですよ。ディスクマンも持ってましたけど、小3のときの誕生日プレゼントはウォークマンでしたから。ギリギリ、カセットの操作も知ってますしダビングとかもしてた世代で。いまはデジタルリリースが主流ですけど、1周回ってカセットって新鮮だし、ちょっとオシャレにも感じたので。


カセットの中にハイレゾ音源をDLできるQRコードは入れてますから(笑)。でも「LADY BLUE」をカセットプレーヤーで聴いて思ったんですけど。子供の頃聴いてたラジカセって、大した音質じゃないのに、すごいそれに感動したりして。やっぱり〝いい音楽〟はどんな環境で聴いてもいいんですよね。だから「LADY BLUE」もカセットプレーヤーで付属のイヤホンで聴いたとき、音は悪いんですけど感動しちゃうぐらいエモかったです。


全部違うタイプの曲がいいなというのはありました。「PIXIE」はこのなかで一番攻めてる曲。「THE CURSE」は昔の自分の雰囲気があってそこまで驚かないと思うんだけど「LADY BLUE」はアップテンポだけどいままでにない曲なので、新鮮味があっていいなと思ったので一番最初にリリースしましたね。


「LADY BLUE」は打ち込みで、それこそプリンスの「Let’s Go Crazy」とかのオマージュ感覚もあって、ああいうシンセを入れて。少し軽かったり靄がかかった音像にして80‘sっぽさを出したんですね。「MIRACLE」にもそういう雰囲気があったから、その流れで。対して、「THE CURSE」はバンドサウンドで、ドラムは(植木)建象、ベースは高松(浩史/The Novembers/Petit Brabancon)君なんだけど。でも、それだけだと表現できない世界だったんで、ギターの音を重ねたりして深い音像になりました。「PIXIE」は打ち込みです。


最初に分かります。例えば「PIXIE」はベースがダンスミュージックだから、ビートが命。芯となるそこを最初から作り込んでいかなきゃいけないんで、必然的に打ち込みになる。「THE CURSE」みたいな曲はギターのアルペジオから作り始めるので、そうするとドラムは生だなとか。打ち込みか生かで悩むことはないです。「ETERNAL HEART」は後半に生ドラムが入るんだけど、そういうのも最初から分かりますね。


いま2曲候補があって、悩んでる最中です。これまで出した曲とは全然違う曲調です。


[ kei ]になって以降、「MIRACLE」、「ETERNAL HEART」、「LADY BLUE」、「THE CURSE」、「PIXIE」まで、ゆくゆくは1枚のアルバムに収録されることになるんですけど。最初は自分でも分からなかったんだけど、バンド時代も含めてラブソングってほとんど作ってないんですよ。だけど、なぜか[ kei ]になってからは、相手ありきの曲ばかり書いてるんですよね。意識した訳ではないんだけど、曲調に合わせて歌詞を書いていったらそうなっていった。そこは1つのキーワードなんじゃないかな。


僕は基本メロと同時進行です。聴こえてきた歌詞を自分で耳コピして整えていくだけ。


そうなんですけど。たぶん、勝手にそこに自分の思想はのっかってるんですよ。その時期、その時期の。「MIRACLE」はあとから見たら、自分の死生観が入っていたり。そこは不思議なんですけど、勝手に入ってるんですよ。自分が理解できないものは降りてこないと思うんで。だから、曲を作ること自体自分の学びでもあるんですよ。僕の曲作りは。今回でいうと、「LADY BLUE」は男目線で、等身大の自分に近い雰囲気なんですよね。歌声も、ちょっとしたユーモア性を含んだ歌詞の内容も。「THE CURSE」は女性目線で。最初にメロディーと一緒に出てきた歌詞は、自分目線では自分のなかのもう1人に憧れてるような曲なのかなと思ったんです。でも、女性目線で考えていくと、憧れる自分を探してるような話で。
『utopia.』に「eve.」という曲があるんだけど。これはタイトル通り女性を感じさせる曲で、演奏してると女性の感覚の欠片を感じることがあるんですね。「THE CURSE」はその流れにある曲なんだなというのに途中で気づいて。この曲は音楽のほうが先をいってるパターンだったので、それを読み解いて、自分のものにしていくのに時間がかかりましたね。

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たまたまSNS上で見つけた動画が面白くて。縦型の映像で、それがすごい新鮮でカッコよかったので、誰が作ってるのかを調べてメッセージをしたんです。Ness(Eschakra)君というんですけど、昔から僕の音楽を聴いてたみたいで「驚きました」という感じの出会いで。カセットは昔のメディアだから、映像はいまっぽいもの、新しいものがあるほうがいいなと思ったのがきっかけでお願いしました。


事務所から独立しようと思って、話をしたのが去年の4月頃。20年以上同じ事務所にお世話になっていて、居心地よくいさせてもらったんですけど、ソロアーティストとしてこれから腹をくくって今後やっていくんだとしたら、相当な変化がないと何も起こらないんじゃないかと思ったんですね。


そこは、予感ですよね。事務所にいた頃は、狭いジャンルの世界から抜けられないとか、新しい展開ができないことに対して、バンド時代から葛藤していて。なにか環境を大きく変えるとか、自分がチャレンジしない限り、この先もそこはなにも変わらないと思ったんです。自分の人生を振り返っても、本当にリスクを背負ってチャレンジしたことって、まず第1は中学校を卒業して。その前からバンドは始めていたので、高校受験をしないでインディーズの世界に飛び込んだことが自分のなかでは人生最大のギャンブルだった訳ですけど。飛び込んでみたら、その年の1年間って、激動だったんですよ。


そう。そうしたら1年間で別世界が目の前に広がった。すっかりバンドマンになって、お客さんもどんどん増えていって1年でなにもかもが変わった。その感覚を俺は知ってるんですよ。それで、去年事務所を独立して。本当に奇跡みたいなことが起こらないとやれないことってなんだろうって考えたんですよ。
中学を卒業したときは、1年後にインディーズの世界で有名になってたいと思ってたんですけど。あのときよりも、もっと信じられないことを起こさないと、この先の人生。もともとギタリストだった自分が歌うようになったいまの人生、アーティストとしてこの先にはいけないんじゃないかと思ったんですよ。


そう。今回は自分が想像できるマックスのところ。それでパッと思いついたのがLINE CUBEで。独立して1年後にできるようになってたらすごいなと。それをスタッフに話したんですよ。会場を押さえるためには1年前から動かなきゃいけないんですけど。あそこはエントリー制で抽選なんですね。倍率が高い時期だったんですけど、それが当たっちゃって。たまたま。しょうがないなと(笑)。これはやれっていうことだなと。


これはファンの方には話してることなんですけど、最初は打算的な考えがあったんです。いま考えたら情けない話なんですけど、最初は自分で逃げ道を作ってたんですよね。それは、年齢的にも40歳という節目だし、これまでの自分のアーティスト活動のアーカイヴ的なライブにしようと思って、それで元メンバーの方々にゲストで出てもらおうと。


そうしたら興行的にも成立するんじゃないかという逃げ道を自分で作ってたんですよ。正直にいうと。でも、それを去年末に元メンバーに話したら断られちゃったんですよ。そのときはさすがにどうしようと思いましたね。いまの自分の集客力だけでは無理だと思ったので、年明けスタッフと打ち合わせしたときに「できないと思います」といったんですよ。


でも、そこでスタッフの人たちに「こんな機会はないんだから、挑戦しないとダメですよ」、「逃げちゃダメ」といわれたんですよ。僕は元々ギタリストだし、そもそもやってたバンドもいつでも日本武道館がやれるような巨大バンドでもなかった。そこのヴォーカルではなかったメンバーが、しかも期待の若手新人でもない、今年40歳になるようなヤツに、こんな機会は巡ってこないんだと。「ここで挑戦しなかったら一生後悔しますよ」といわれた瞬間「そうだな」と初めて思ったのかもしれない。そこで、保険として元メンバーに出てもらおうと考えてた自分が恥ずかしいなと思ったんです。そもそもファンの人たちは1人で活動している俺を応援してくれてるんだから、逃げ道を考えてる自分じゃなく、一人で挑戦する姿を見せなきゃ意味がない。そのためには、どんな結果になろうが俺は走るしかない。もがいてでもやれることを全力でやろうというので、今年のマンスリーライブや連続リリースにつながっていったんです。


8月12日のLINE CUBEがある人生とない人生では、まったく違うと思うんです。これがある時点で俺の人生はすべてが違ってきてるんで。そこに至るまでのプロセス。全力でやれることをやって、その日にたどり着いたことがすごく自分のなかで大きなものになっていくし。ファンのなかでも大きなものになっていくと思うんで。それが[ kei ]というアーティストを成長させるための大きなものになると思ってます。だからここまでの覚悟をもって自分の人生をここまでベットしてるんです。


でもそれが面白いんですよ。そのヒリヒリ感が。生きてるなと思うし。独立して金だけ稼げたらいいよっていう活動をする気は無いし。綱渡りで、人生かかってる。人生かかってるヤツのステージを見たいと思うんで。俺も。それがロックミュージシャンだなと思うし。


そういうことも、周りの人やファンの人に恵まれていて、自分のアーティストとしての可能性を信じてやってくれてるんだなというのをすごく感じてます。だから、本当に奇跡だと思うんです。バンドのただのギタリストがソロでずっとやっていくのって難しいじゃないですか。日本でも数人しかいないですから。自分はいま、ものすごいチャンスをもらってるんだなという感じですね。いま思い返すと、BAROQUEが休止したとき。それまでやってきたことよりも難しいことに挑戦するチケットをもらったっていってたんですよ。だから、感慨深いですよ。2014年、30歳になったときも人生観が変わることがあって、ターニングポイントになったんですね。破天荒な生き方をしていた10〜20代から、自分って一体何なんだろうって思ったのがこのときで。そのときBAROQUEは2人体制になった時期で。まず、3枚アルバムを作ろうと。3枚作ったあとにすごいことが起こる気がするって当時いってたんですよ。そこから約5年ぐらいかけて実現させて、起こったことがバンドの休止。本当に自分が想像もしていなかった、信じられないことが起こった。あの2014年から10年後、40歳になる今年。LINE CUBEをやろうとしてるとか、10年前の自分からは想像できないことなので。10年前、アルバム3枚作ったら信じられないようなことが起こるって。


そこから俺は1人になっても活動を続けて、歌い出して、LINE CUBEをやる。って、まさに奇跡じゃないですか。それが5月のリハーサル、センターに立ったときの「ああ、これなんだ」という答えにつながったんです。


いまの等身大の自分を届けたいと思います。
チケット代もいつもより安めだったりするんで、バンド時代好きだった人、何年も観てない人にも来て欲しいし。今知った人にも来て欲しい。自分で自信を持っていえるのは「the primary.」という曲でソロデビューして。この曲は、自分の人生はいま何時何十分でも見つけたなら輝けるという歌なんだけど。もうこんな年齢だからだとか、私なんて遅すぎるとか、いろいろ人生思うときがあると思うだけど。でも、やろうと決めた瞬間、目覚めた瞬間、挑戦することはできる。そういう姿も見せられるんじゃないかと思いますね。俺のなかでも1年前、5年前、10年前の自分よりもいまの自分が最高だなと思ってるんで。エネルギーを与えられるんじゃないかと思います。


Writer : 東條祥恵 / Hair & Make up : Yagi (Alpha Knot) / Stylist : AZMAXXX / Photographer : 細田哲郎 / Color Grading : 真砂雅喜

【LIVE SCHEDULE】
LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
2024.8.12(月・祝) OPEN 16:45 / START 17:30
<info.> NEXTROAD 03-5114-7444(Weekdays 14:00〜18:00)

RELEASE
シングル連続リリース第3弾「PIXIE」
<DIGITAL>2024.06.21 RELEASE
<完全生産限定盤>(カセットテープ) 2024.06.28 RELEASE

【EVENT】
[ kei ] 初のポップアップストア・ファンミーティング開催
[ kei ]  POP-UP STORE
2024.7.1(月)〜7.7(日)
東急プラザ渋谷4F 11:00〜20:00

【SYNERGY】presents [ kei ] FAN Meeting Vol.1
日程 2024.7.21(日)
池尻BPM OPEN 17:00 / START 17:30