2025.03.18
【ライブレポート】摩天楼オペラ TOUR’25 六花 – Snowflake – 2025.3.2(sun) KYOTO MUSE

昨年12月18日にアルバム『六花』発売した摩天楼オペラ。最新アルバムを引っ提げた『摩天楼オペラ TOUR’25六花 – Snowflake –』も公演を重ねるたびに、その世界観をより強固なものにしていく。
今回はツアーも中盤に差し掛かった京都公演の様子をお届けする。まだまだ続くツアー、ぜひ生で感じてみてはいかがだろうか。
赤き静寂を切り裂くSEが鳴り響くと、薄闇に揺れる赤い光がニューアルバムの幕開けを告げる。心拍が高鳴るのを押さえきれない。そこに響、彩雨、燿、優介、そして苑が次々と現れ、空気は一瞬で張り詰める。静寂の中に黒と赤の衣装から生まれる美しさも際立つ。
「さあ行くぜ、京都!」

その一声で火蓋は切られた。苑が会場を煽る。
1曲目はアルバムと同じく『BLOOD』爆発的なブラストビート、優介が奏でる狂おしくも美しいギターソロ。赤く染まった会場は、まるで一つの生命体のように脈動する。
「私は血をふるわせ 〜 赤く染めていく」その言葉のごとく、照明が会場を赤く染め、会場の鼓動が伝わってくる。
髪を振り乱し迎えた『DYSTOPIA』。鋭く交わされるコール&レスポンス、重厚な演奏が容赦なく叩き込まれる。摩天楼オペラの圧倒的な力に、開始わずかで限界のさらに先を魅せつける。苑の艷やかな声と優介の美しいギターの掛け合い、彩雨と燿も会場に向け重厚かつ美しい音を届ける。
『Ruthless』では苑のハイトーンが天を突き抜け、怒涛のスピードナンバーへと雪崩れ込む。優介と彩雨の煽りに応え、KYOTO MUSEは狂乱の渦へと落ちていく。そして続く曲は『Anemone』。美しく、妖艶に響くビブラートが会場を包み込み、揺れる手の波は幻想的な光景を描き出す。楽曲の中で幾重にも表情を変えるその姿は、まさに摩天楼オペラの真骨頂。
1曲の中で様々な表情を見せるこの曲は、摩天楼オペラならではだ。
会場からはメンバーを呼ぶ声があふれる。8年ぶりの京都、そしてKYOTO MUSEでのライブは9年ぶり。
苑の「久しぶりにきた京都!最高のライブだったといえるライブにしよう。」という言葉に会場は湧き上がる。
「さあ京都行こうか〜!」

『TABOO』では、燿のベースが地を揺らし、彩雨の旋律が空間を切り裂く。響と苑が煽ると、会場は拳を掲げ、己の存在を証明するかのように声を上げ続けた。
暗転の中から生まれた『死人たちのパレード』は、ただ美しく、ただ切なく、ただ深く。優介のギターが心を抉り、痛みすら愛おしくなるほどの没入感を与える。優介のギターソロのチョーキングが心の奥に訴えかける。曲の世界観を見事に表現したステージだ。
『ここからは届かないあなたへ』は、寂しさと温もりが交差する。「あなた」このフレーズが届くたびに胸を締め付ける。
響はしなやかなドラムさばきでミドルテンポなこの曲を美しくたたきあげる。
摩天楼オペラはどれだけ速い曲もどんなバラードも圧倒的な演奏力と見事な表現力で心を揺さぶる数少ないバンドだ。
エメラルドの光が揺れる『翠玉のワルツ』では、祈るような旋律が空間を満たし、静と動の極致を突きつけてきた。会場のペンライトはその名に相応しいエメラルド色の輝きの中、輪郭を照らし出す。深い影を落とすような低音から、光り輝く美しい高音まで色鮮やかに、祈るような歌声が響き渡る。ゴスペルからはじまるサビからのワルツ、摩天楼オペラの音楽の造詣の深さがこの曲に詰まっている。
苑と響が目を合わせ微笑み、会場にもその楽しそうな息遣いが聴こえてくるようだ。
しんとなった会場に響き渡る中で苑の美しいコーラス。ここまで静と動を取り入れて盛り上げる力があるバンドは他にいるだろうか。
インストゥルメントの『Apocalypse』は映画の一場面のような美しさで、音が情景を生み出していく。彩雨、燿、優介がステージの最前線に出て盛り上げる。
映画のワンシーンのような世界観に引き込まれる。会場からも掛け声があがり、インストにもかかわらず会場との一体感が半端なく伝わってくる。
ハイポジションから奏でる妖艶な燿のベースと優介の洗練された音作りから生まれるギターと彩雨の感情のこもったキーボードの音色すべてが重なり合い、摩天楼オペラの世界観をこれでもかと表現し続ける。

続く、『闇を喰む』。その声は闇を貫き、光へと変える。苑の美しい声が、悲しみの先にある救済を音で示してくれた。暗転から光が差し、苑の声が響き渡る。
この曲の歌詞を理解するにふさわしい表現力、今の混沌とした世の中にただ悲観するわけではなく、悲しみを積み上げた先にある光をみせてくれる。
会場は割れんばかりの拍手が沸き起こった。
雪のように白く染まる『Incessant Snow』。ペンライトは白に変わり、舞い落ちる雪のごとく会場を一気に冬色に染める。歌詞にもニューアルバムのタイトル『六花』が出てくるこの曲。優介と彩雨が紡ぐ切ない音色に乗せて、幼き日々の記憶が蘇る。
「ありがとう」苑の言葉に、会場は息を飲む。
彩雨が奏でるピアノのメロディに合わせ、苑が見事に歌い上げる。苑の表情と唯一無二の声色が胸を締め付ける。感情が声に宿る。まさに天性。これだけ、人の心を震わせることができるボーカリストが世界にどれだけいるのだろう。鳥肌が立ち、涙が出そうになる。

続く曲は、『夜明けは雪と共に』。
会場は、白と青の光が揺れ、希望の夜明けを感じさせる。冷たくも温かい旋律が、心に染み渡る。燿のベースラインに感情がのり、今までより一層力がこもった演奏をみせる。『漣のロンド』で色彩は一変し、響と燿のリズムが新たな命を吹き込む。全く違う表情をみせてくれるこの曲はアルバムのコンセプトにもあるように、摩天楼オペラの表現力の広がりを示している。響と燿が目を合わせ刻むリズムは摩天楼オペラを支える二人のリズムがここから生まれていることも再認識させられる。壮大なラストは『六花』。
この命を繋ぐために。今夜、確かに何かが刻まれた。

「この命を繋いでいくために何ができるだろう」このライブはそのような問いかけをしてくる。会場が表情豊かな摩天楼オペラの曲に魅了されているのが伝わってくる。優介のソロから続く、苑の温かく包み込む声。苑は会場に手を伸ばし、想いを伝える。
摩天楼オペラはこれからも進化し続けることがはっきりと感じ取れた。
圧巻の技量と表現力で会場と一体となったライブだが、オペラーの熱はまだ冷めない。
会場から沸き起こる「アンコール!」の声に応え、メンバーが登場。
MCでは、彩雨が京都の豆知識も披露しつつ、メンバー5人の楽しい談笑で会場の雰囲気が温かいものになった。
フロント4人が最前線に並ぶと、和やかな空気はがらっと変わり、衝動のままに『RAINBOW』を奏でる。その鼓動に突き動かされるように皆は拳を掲げる。会場もそれに応え、アンコールにふさわしい盛り上がりを見せた。
畳み掛けるように、続く曲はキラーナンバー『alkaloid showcase』で更なる高みへ。
苑のシャウトから始まり、盛り上がりはまだまだ加速する。掛け声もぴったりで会場とステージは一体感が増していく。彩雨が手をふり笑顔で会場にうったえかける。会場もジャンプで楽しさをメンバーに精一杯伝える。
ここで続くのは『EVIL』。会場は一心不乱に髪を振り乱す。EVILの名のごとく攻撃的なサウンドがまだまだオペラーの力を吸い尽くす。
高音と低音がおりなす苑の声は、「EVIL」ツアーでより摩天楼オペラの曲として育てあげた勢いをそのままに進化を続ける。
ラストは『PHOENIX』で全てを燃やし尽くす。人で埋め尽くされた会場は様々な色のペンライトが交差し本当の終わりを惜しむかのごとく、ラストまで摩天楼オペラを感じきっていた。激しくもしなやかな響のドラム、燿のタッピングベースに、優介のギターソロに、彩雨の音色。各メンバーの個性が溶け込む。そして、苑の圧倒的な歌。
最後に残ったのは、次へと続く光だけだった。

Writer:宮下 浩司 Photographer:Senri.Tanaka
<セットリスト>
- BLOOD
- DYSTOPIA
- Ruthless
- Anemone
- TABOO
- 死人たちのパレード
- ここからは届かないあなたへ
- 翠玉のワルツ
- Apocalypse
- 闇を喰む
- Incessant Snow
- 愛を知りたかった幼き日々よ
- 夜明けは雪と共に
- 漣のロンド
- 六花
En1
- RAINBOW
- alkaloid showcase
- EVIL
- PHOENIX
<LIVE>
TOUR’25 六花 – Snowflake –
3/23 (日) 長野 CLUB JUNK BOX
3/29 (土) 北海道 札幌SPiCE
3/30 (日) 北海道 札幌SPiCE
4/12 (土) 神奈川 横浜BAYHALL
4/19 (土) 愛知 名古屋ElectricLadyLand
4/20 (日) 大阪 BananaHall
5/4 (日) 東京 Spotify O-EAST
18th Anniversary Live
8/10(日)日比谷野外大音楽堂
<関連リンク>
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