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2025.07.25

【Vol.5本誌巻頭特集】Sadieスペシャルインタビュー

脈打つ命の鼓動、動き始めた未来へ―

Sadieメイン写真

2024年3月17日、実に8年越し復活を果たしたSadie。あれから9ヶ月、待望の全国ツアー『Sadie 20th Anniversary Tour 悲壮 -mode of sadness- / -mode of darkness-』の開催、さらには日比谷野外音楽堂 での『Sadie 20th Anniversary Live「脈拍」』を発表。2nd セルフカバー Album 『THE REVIVAL OF DARKNESS』のリリースも控え、より勢力を拡大していくSadie。今年の活動を振り返るとともに、未来への展望を語っていただいた。今だからこそ聴いてほしい、彼らの魅力に迫る。


真緒(Vo.)
真緒(Vo.)

真緒 活動休止から8年と期間が空いているので、やっぱり復活するにあたって不安はあったんですけど、たくさんの人が待ってくれていたことに感銘と感謝の気持ちでいっぱいでしたね。もう一度Sadieを始めるということで、たくさんの関係者の方々やバンドマンの方々、先輩たちが相談に乗ってくださったり、コメントを寄せてくださったり。すごく押し上げていただいた上でスタートを切ることができたので、すごく嬉しかったですし、自分で言うのもなんですけど……愛されてるバンドだなというのが、一番に感じたことでした。

美月 豊洲PITの1曲目で「迷彩」をやったときに”ああ、はいはい、こんな感じでしたね”っていう感覚が一瞬で戻ってきたんですよ。ブランクがあるんで”どうなるんかな?”っていう楽しみと不安が入り交じる感じだったのが”これは大丈夫やろな”って。あ、これがSadieやなって感じました。

亜季 なんか……言語化が難しいな。この8年、Sadieの延長上にある時間を過ごしていたつもりだったけれど、良い意味で“Sadieじゃなかったんだな”というのを再確認できたというか。それは各々の道を歩んで戻ってきたから感じることができた感覚で、この8年間がブレていたとも思わないけれど、そのど真ん中――芯というのは、やっぱりSadieをやらないと体現することができないんだなと。

剣(Gt.)
剣(Gt.)

亜季 何だろうね、覚えてない。でも、やっぱり“待たせてしまった”という想いが一番強かった。その分ぶつけるというか、もちろん懐かしさもあり、全部の感情が出ていたんじゃないかなと。

 Sadieが活動休止してから、ずっとステージに上がり続けてきて良かったなというのは、まず個人的にはありましたね。いろんな要因が絡み合った結果、こういう未来を勝ち得たというのか。何か1つでも選択が違ったら、こうなっていないと思うんですよ。復活できたとしても時差が出たかもしれないし、逆に、もっと早くにできたのかもしれない。それはわかんないんですけど、僕から見えている世界としては、自分自身が活休してからの8年、壇上に上がり続けることで今回の結果に結びついたのかな、たどり着けたのかなっていう感覚があるんです。それは他の4人も同じで、それぞれが8年の間にいろんな環境に身を置いてきて、その中で習得した経験だったり、バランス感って言うんでしょうかね。決め事を進めていく中での対話であったりやり取りが、活動休止前と今とでは明らかに空気感が変わった感覚はあります。

 そうですね。時間が空いたにもかかわらず、あれだけの人が待っていてくれて、感謝の気持ちしかなかったです。この8年、僕自身は音楽活動もしてなくて、他のメンバーは音楽をしていて。そこで僕がまたSadieをやりたいという中で、4人があの頃のまま接してくれたのも、いろんな関係者の人たちが手助けしてくれたのも、ホンマすべての人に”ありがとう”と感謝の気持ちしかないです。

 自分でも”活動休止”というのは胸の中にずっとあったんですよ。僕、中途半端は嫌いなんで、どちらかを選択しないと絶対ダメだろうなって。で、音楽以外の仕事でもファンの方と接する機会があったり、メンバーと話したりする中で、やっぱりSadieというのは自分にとってすごく大切なものなんだなと、前に進むことができました。そしたら、久しぶりのライブがいきなり豊洲PITやったんで、緊張もしましたけど、すぐ溶け込めましたね。僕の中では活動休止ライブをしたZepp Tokyoの景色で終わっていたので、あんまり違和感がなかったです。やっぱり10年間ってすごいな、って。

真緒 そうですね。何より今、もう一度Sadieを聴いてほしいという想いが一番大きかったんです。僕たちが活動していた時代はサブスクなんて無かったですし、それぞれがSadieから旅立った8年で演奏面でも精神面でもいろんなスキルを得た今、過去の楽曲を音源化したらどうなるんだろう?っていうことに、やっぱりワクワクもしたんですね。その修行の成果を現代のツールを使って広めていきたい、10年で発表してきた楽曲を再構築して皆さんに披露していきたいということで、今回アルバムという形でパッケージすることにしました。いわゆるリバイバル作品で、タイトルにはSadieにまつわる象徴的なワードが欲しいなと1枚目に”SADNESS”、2枚目に”DARKNESS”というワードを当てて。イメージ的には、2月末に出した『THE REVIVAL OF SADNESS』では活動初期、今回の『THE REVIVAL OF DARKNESS』では大体中期あたりの曲を収録している感じです。

真緒 そもそもエンジニアをやってくれたのが、昔、よく対バンもしていたギルガメッシュのЯyoくんで、彼もレコーディングエンジニアとして第一線で活躍してますけど、何よりSadie愛があるんですよね。なので細かい音の微調整とかはありつつ、レコーディングも非常にスムーズでした。選曲の方はシングルを軸にしつつ、MVになった楽曲はマストで入れて。シングルだったりMV曲というのは、そのタイミングで自分たちがベストだと考えたものなので、改めて「なるほどな」と納得できたり、曲の良さというものを知れましたね。

美月(Gt.)
美月(Gt.)

美月 それと、今後ライブでやるであろう曲も入れてます。やっぱり年数が経っているので、シーケンスのデータが今と音質がまるで違うんですよ。なので、ライブで使えそうな曲は改めて作り直し、あとは、よくライブの最後にやっていた「true word」とか、ファンにとって大事であろう曲も選びました。逆に、当時は咀嚼しきれなくてライブであまりやれなかったけれど、やっと楽曲に自分たちが追いついてきたなって曲もありましたね。「RED LINE」なんかは、そう。

 自分自身のスキルで言うと、かなりDTMを使いこなせるようになったので、だいぶ表情が変わるのは確実に見えていたんですよ。美月がThe THIRTEENの、僕がRAZORの中で培ってきた技術が上手いこと噛み合って、より“バッキングとは何か”という根本的なところから理解が深まった結果、クオリティは全然変わりましたね。特に「Juggernaut」とか「RED LINE」とかの歌モノ系のアレンジは計算され尽くされているというか、すごく緻密になったと思います。もちろん初期衝動が重要になっているフレーズ感だとかは、当時のまま活かしてますけど、例えば同じフレーズでもイントロと間奏で表情を変えてみたりとか。ループで繋がっていく中に1つエッセンスを入れてみることで、楽曲のストーリーを作ることができれば、より聴きたい感じになるかなと。

亜季 その点、僕は基本的にフレーズを変えないと決めていたから。どうしても弦が足りなくて弾けない高音のフレーズが「ever」だか「RED LINE」に1箇所だけあって、当時どうやってレコーディングしたんだろう?と不思議になりながら変えたんだけど、そこ以外は変えてない。ただ、この10年、音楽を聴くのがCDからモバイルへと変わる中で、音の変化が一番大きかった楽器がベースなんじゃないかなと感じていて。それにどう対応していくか?というところを考えた結果、音作りという点では結構変わったと思う。

亜季(Ba.)
亜季(Ba.)

亜季 音の積み上げ方と順番自体が変わってしまって、以前はドラムのバスドラよりもベースは下に積むことが多かったのが、今はバスドラが一番下の印象がある。ベースの音に対してドラムがアタックをつけてくれていたのから、今は僕がバスドラに音程をつけているイメージ。全体的には解像度が増して、他のメンバーのプレイに関しても、見えなかったところが見えるようになった気がする。ギターやシーケンスとかも新しくなって、より1歩引けるようになったというか、ベース本来の位置に入れるような心地よさを感じてるかな。

 もちろん音とかは進化しているんですけど、僕の中ではSadieの延長上としか考えてないです。ただ、久しぶりに叩いてみて、やっぱり大変でした。どの曲も結構大変なんですけど、例えば今回PVにもなっている「Rosario-ロザリオ-」とか。

真緒 Sadieの楽曲はメロディであったり音域の高さであったり、改めて「難しいな」というのは、歌においても再確認しました。それは時が経って、いろんな技術や知識を身に着けたがゆえに、より気づけたもので。自分自身、活動休止して戻ってくるにあたって、技術として絶対に習得しようと考えていたのが、やっぱり声だったんですよ。例えばミックスボイスだとかも、もっと自分がコントロールできれば、さらに歌の振り幅が広がったり、ハモリのラインとかも高いところまでガンガン放り込めるので、そういった要素は今回どの楽曲にも割と入れてます。

真緒 「ドレス」という楽曲の展開的に、今の僕ならこうしてたんじゃないかな?と思ったんですよね。もちろん曲のイメージは崩さずに、今だったらこういうラインを入れたな……ということで、メロディのニュアンスを変えた箇所はいくつかあります。

真緒 「Rosario-ロザリオ-」という曲はメタルのエッセンスやシャウト、ラウドな部分というところで、Sadieにとって1つのターニングポイントになった曲でもあり、混沌の世界の中でメロディが際立っているという意味でも、リバイバル作の2作目で世に発する楽曲としては申し分ないかなと。その「Rosario-ロザリオ-」の空気感へと持っていくためのパーツとして、直前に入れたのが「Payment of vomiter」なんです。本来は1枚目に入るべき初期の曲なんですけど、アルバムとしての並びを考えたとき、どうしてもココに欲しかったんですよね。で、「Rosario-ロザリオ-」の世界観がマスクを着けたビジュアルとセットになっている部分もあったので、衣装の方もリンクさせたんです。

美月 MVも同じ衣装で撮っていて。前回の「迷彩」と同じ監督にお願いしたんですけど、やっぱりブラッシュアップはしたかったので、そこはみんなで打ち合わせしました。

 ツアーについては、ここから詰めていく感じではありますが……まぁ、でも、そういうことですよ。『mode of sadness』公演は『THE REVIVAL OF SADNESS』の、『mode of darkness』公演は『THE REVIVAL OF DARKNESS』のイメージが中心になると思います。やる曲も衣装も違うので、それぞれ特有の展開だったり空気感というものは必然的に生まれてくるでしょうね。ただ、sadnessだからこう、darknessだからこう、みたいにマインドを変えられるほど器用でもないので、どっちも楽しんでやろうっていうぐらいですよ。初日の1月4、5日・川崎セルビアンナイトをやってみないことには、正直わかんない(笑)。

 それこそ曲数だって、場合によっては「もうちょっと減らそう」とか、逆に「増やしてもいいんじゃない?」ってなるかもしれないし、曲間のつなぎだったりセットリストの曲順とかに関しても、改良の余地が出てくるかもしれない。もちろん、ツアーが始まる前にできるだけライブの青写真を高解像度で作れたらいいなとは思ってますけど、正直ぶっつけ本番じゃないとわかんないですね。もう20年ぐらいバンドやってますけど、これは毎回そう。

景(Dr.)
景(Dr.)

 個人的には久々のツアーなので体力が心配ではあるんですけど、僕は基本的に体をむっちゃ鍛えるというよりも、ドラムはドラムで鍛えるって感じなんですよ。なので、叩きまくるしかないですね。叩きまくって、その中でついていく筋肉に期待したい。

真緒 年明けからの2daysツアーは復活してから初の全国ツアーになるので、各地を回って復活が叶ったことに対する本当の意味での“お礼参り”をしようと、Sadieというバンドを象徴する『悲壮』というワードを掲げたんですね。そして3月に20周年を迎えるわけですが、僕たちは10周年のときに大阪の野外音楽堂でアニバーサリー公演をやっていて、その直後に活動休止の発表をしているんですよ。そこから10年が経ち、前回、悲しい発表の先駆けになったのと同じ野外音楽堂というシチュエーションで、今度は前に向かっていくんだという想いを込めて『脈拍』と名付けました。要するに、ここから命が動き出す、ということですね。

亜季 Sadieというバンドを結成して20年という月日が経ったんだけど、半分はお休みしているわけで……まぁ、結構1年生の気持ちに近い。3月に再始動して復活1周年、Sadie 20周年っていうような気持ちかな。本当に1本1本のライブで更新していくしかないので、もちろん2025年3月16日時点ではベストライブにするつもりで望むし、でも、そこから月日が経てば「まだまだだったよね」って振り返るものでいいかなと。今のSadieがどう受け止められるかは、また別の問題になるけれど、今の5人を見てもらえたら。

真緒 20周年で落ち着くイメージではまったくないので。悪い方に考えたら、この20周年でやりきって終わっちゃうんじゃないの?っていう予想もあるかもしれないけど、逆に言うとブランクがあるぶん、やりきってないんですよね。亜季くんが言ったように1年生の気持ちなので、また復活ライブのときとは違った新しいSadieを届けることは約束できます。
 最後に言っておきたいのは、もう“ただいま”はええかなっていうこと。もちろん復活してから、まだ行けてない地方も多いんで、実質ツアーで“ただいま”になる場所もあるとは思うんですけど、亜季くんや真緒くんが言っていたように、復活して約1年が経とうとしてるので、「ただいま」よりも、刺々しく攻めの姿勢でライヴしていきます。


当インタビューは2024年12月に本誌掲載されたものです。

Writer:清水 素子

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