「終わり」を越えて、次なる始まりへ――DIAURAが刻む覚悟と進化

15年目への扉を開くDIAURAが、最新シングル『Ephemeral』に込めたのは“終わり”というテーマ。ただその”終わり”を恐れず受け入れ、その先へ進む決意。生命の儚さ、時代の移ろい、そしてバンドの未来――3曲それぞれに宿る終焉の美学。yo-kaが語る言葉の奥に響く覚悟、佳衣が描く音のドラマ、翔也と達也が紡ぐ熱のグルーヴ。それらが一体となり、今、DIAURAは次なる物語を歩み始める。
——今回、『Ephemeral』『Optimal fiction』『Doomsday』と、新曲が3曲ありますが、それぞれどんな曲に仕上がっていて、どのようなイメージで作られたのでしょうか?まずは、『Ephemeral』からお伺いさせてください。
yo-ka メインで曲を作る佳衣と色々話していく中で、ちょうどバンドが14周年を迎えるタイミングでもあって、15年目に入っていくっていう一つの節目を前にして、ここからまた、DIAURAっていうバンドが一丸となって新しい始まりを示すような楽曲、シングルにしようっていうところから始まった曲ですね。
——『Ephemeral』を聴かせていただいて、”静”と”動”、静かなピアノパートであったり、躍動感のある激しい部分もあったりして、そういった部分も、今回のこの「Ephemeral(儚い)」という言葉の意味を考えて作られているのでしょうか。
佳衣 言葉というよりは、割とその曲全体にドラマ性だったりとか、そういったものは毎回入れるようにしていて。なので、音楽ですけど、映像作品を見たような感じの雰囲気っていうのはすごく大事にしてます。
——作詞についても、この曲(Ephemeral)は起承転結というか、そういう動きのあるような詞のつけ方っていうのをされてるんでしょうか。
yo-ka 作詞については別に書き方の手順とかそういうもの…、何か正解があるわけじゃないので、そういうことは全く意識せずですね。佳衣がそういう風に曲を作ってくる、そしてそれを聴いた段階で、自分にとっては映像と言葉が見えるというか。自然とその絵が浮かんで、それを言語化していくっていう部分もありますし、タイトル『Ephemeral』っていうものに込めた思いというか…”儚さ”っていうもの。命の儚さであったり、それっていち人間としての命の終わりであったり、そしてバンドの命の終わりであったり、いつか来る終わりっていうものに向かって、このDIAURAというバンドとして何を残していけるのだろうか、愚民(DIAURAのファン名称)に何を残せるだろうかっていうことを考えた時、一曲と向き合いながら未来と向き合うような感覚でこの『Ephemeral』の歌詞は書いてましたね。
——2曲目の『Optimal fiction』に関しては、いかがでしょうか。

yo-ka この曲も『Ephemeral』との関連性というか、”終わり”っていう部分がまたこの曲もテーマになってるんですけど、今の世の中を生きる中で感じる閉塞感のようなものを自分なりの視点で形にしたいというのがあって。例えば、何か一つの事柄を悪として取り上げて、顔も名も知らない人達が一斉に攻撃するような、ギスギスした感じがあるじゃないですか。もちろん今に限った話ではないですけどね。それを扇動する存在、メディアなのか個人なのかは色々でしょうけど、その思惑に踊らされる気味の悪さとか、奥底にある攻撃性が可視化されていってる気がするんですよ。ただ自分が思うのは、何かに対して吐いた毒はきっと自分にも回ってくるぞ、っていう。これも命に対する価値観ですけどね、思いも言葉も無駄に消費しちゃいけないんじゃないのかなって。これもまた、いつか来る終わりに悔やまないようにっていう思いが強いです。自分なりの皮肉を込めながら、『Ephemeral』が愛だとしたら、『Optimal fiction』はその真逆にあるような、対比を感じてもらえればいいなと思います。
達也 デモができて、佳衣がその次にまたアレンジを加えて、上がってきたものに対して自分がまた作って…、どれも色々構成していく、やりたい部分だったりを変えていくっていう作業だったんですけども。この曲が一番、自分的にはライブが想像できる曲調だったので、ものすごく作りやすかった。音作りに関してもわかりやすく想像できたっていう部分はありましたね。
佳衣 自分的にはすごくギターをつけるのも色々考えた曲で、曲自体の展開は多いんですけど、すごくストレートで全体がすごくシンプルなので、シンプルだからこそ、どうしようかなっていうのはすごく悩んだ部分ですね。最初、歌詞を見てない状態で音はつけていったんですけれども、自分なりにライブを見据えてだったりとかっていう部分も楽曲にはギターとして込められたと思いますし、歌詞が出来上がってからまた一段階別の感覚というか、そういった気持ちでギターはつけました。
翔也 デモの段階で上がってきて、そこから直接的に言葉でこうしようっていうのは、メンバー間であんまりないんですけれども、だからこそ自分が受けた印象で、やれることをたくさん詰め込んでいって。それに対して「ここ、こうがいいな」っていうのがあれば、随時直していく形ではあるんですけど、今回はそういうことも特になく、割とスムーズにやれたなっていうのもあって。どの曲もそうなんですけれども、やっぱライブをイメージして自分はつけたりするので。この曲ってすごく熱量を感じたので、そこにピークを持っていけるようなフレーズっていうのをつけましたね。
——続いて、3曲目『Doomsday』。まずは作曲された佳衣さんからお話をお伺いしてもよろしいですか。

佳衣 何かを深くイメージしたというよりも、最初は「こういうギターのリフを弾きたいな」っていうのから始まって。そこから塗り進めていったら、あまり考えずにポンポンと各セクションが出来上がってきて、という感じだったので。これはそこまで考えずに感覚的にできた曲で、出来上がりも早く完成した曲です。
——この3曲の中では一番初めに出来上がった曲でしょうか。
佳衣 完成まではダントツでこの曲が早かったですね。
——作詞に関して、yo-kaさんいかがですか。
yo-ka 『Ephemeral』では、現実に即してじゃないですけど、割と等身大な歌詞の書き方をしていて。『Doomsday』に関して言うと、現実とファンタジーの境界が曖昧なイメージですね。真っ暗な空間の中で終わらない夢を見る、その”ゆめ”は「悪夢」と「憧憬」、憧れっていうことを込めた”ゆめ”っていう二つの夢が出てくるんですけどね。理想である「憧憬」があるからこそ現実である「悪夢」を味わうことになる、というような。結局は現実にリンクしていくんですね。二つの”ゆめ”は切り離せないもので、それを繰り返しながらもがいてもがいて、生きていく今、未来に願いを込めつつ書きましたね。
——この3曲に共通する部分は、”終わり”という形になるのでしょうか。
yo-ka これだけ言うとネガティブに聞こえるんですけど、決してネガティブではなくて、「終わりがあるっていうことを認めて、受け入れた上で何をするか」っていうのが生きてることだと思うんですよ。だからバンドとして、ネガティブな終わりを掲げたつもりはない。それをしっかりと自分たちの中で認識した上で作る音楽、歌う音楽っていうことが今のDIAURAにとって必要な音楽だと思うので。だからあえてポジティブにね、「バンドとしてまだまだやるぞ」っていう意志ですけども、3曲通してそれを示すものになればいいなと。
——翔也さんは、『Doomsday』に関して、いかがですか。

翔也 タイミングがタイミングであれば、これが表題になってもおかしくないなと。それぐらいクオリティが高いし、今回はカップリングになりましたけど、サウンド面ではすごく今っぽくっていうのは意識しましたね。ベースって重心がすごく下がってきてるイメージがあるんですよ。今のシーンでそこを狙って出せたかなっていうのはレコーディングで思いましたね。
達也 この曲ですと、サウンドとその歌い方によって、それぞれの箇所で場面、情景が浮かぶなって思ってたので、それに合わせてドラムの繊細さだったり、重さだったり、そういった部分をすり合わせていくっていうのは割とやりやすかった曲ではあったなと思います。
——今回『Ephemeral』を掲げてのツアーになるんですけれど、ツアーを通してこの楽曲たちをどう表現していきたいでしょうか。
yo-ka シングルのツアーなんで、ワンマンライブをやるとして、あと10数曲必要じゃないですか。シングル出した時のツアーがすごい好きで、もちろん最新の作品が主軸になるんですけど、そのライブの大方を形成するのって、それ以前の楽曲なわけで。新しい曲たちと絡み合っていく中で、これまでに生み出してきた楽曲の表情がまた変わったりとか、発見が多いんですね、ツアーをやってると。毎回のことですけど、初披露の緊張感であったり、それがツアーの中で育っていく喜びであったり、それらはもちろん大前提としてあるんですけど、これまでのDIAURAが生み出してきたもの、過去の楽曲が新たな意味を持つというか、「こんな色があったんだな、この曲たちは」っていう風に、またこれまでの自分と向き合う機会にもなるので、そこが楽しみですね。だから今回の『Ephemeral』の3曲たちと絡み合う過去の曲たち、多分俺がまだ想像していない曲だったりっていうのが絶対に出てくるんですよ。だから、なんか宝探しのような感覚もありますね。
——アルバムツアーとシングルツアーっていうのは、みなさんの中でも感覚が違うものなんでしょうか。
佳衣 単純にやっぱ曲数は違います。セットリストの面でも結構難しいとは思うんですけど、気持ちとしては、やっぱり新しい作品を出すってことは、バンドとして次に進めるものだと思うの。だから本当にツアーがバンドを育ててくれるっていう風に自分は思ってて。だから今回はシングルですけど、それも絶対にDIAURAとして得るものってたくさんあると思うので、そこは今回もすごく楽しみにしてます。
——ありがとうございます。翔也さんはツアーに向けていかがですか。楽しみなことだったり。
翔也 『Ephemeral』が表題なんですけれども、前回のツアーがすごく自分の中で収穫のあるものだったので、そこはしっかり踏襲しつつ今回のツアーにつなげていきたいなとは思ってて。『Ephemeral』ってやっぱりライブの熱量が上がってれば上がってるほど映える曲だと思うので、そこは意識してやっていきたいなと思います。
達也 新曲たちの成長、最初でも真ん中でも、後半で見せるステージでもそうですし、客席のそれぞれの表情も変わってくるとは思うんですよ。なので、どのライブに行っても、やっぱ楽しませてあげられるようなライブをしたいな、とは思いますし、この新曲たちがあるからこういうライブをしようというよりは、元々自分たちの持ってるかっこよさをちゃんと見せてあげたいなっていう部分はあります。
——ツアー全体を通して楽しみな場所はありますか。
yo-ka さっき作品のことを色々聞いてもらったんですけど、楽曲に込めたメッセージであったり、こっち側の気持ちからして、全箇所、全会場通してですけど、「〝なんとなく”みたいなものは絶対に作っちゃいけない」と思ってて。だから薄いものにするわけにはいかないっていうのがまず何より思ってるところですかね。だからライブを見て、この『Ephemeral』っていう作品を出して回った意味をしっかり感じさせてやれるような、そして俺たち自身も感じられるものにしたいなとは思ってますね。ライブっていろんなやり方がありますし、ただ熱い、ただ激しいみたいな〝ただ”になりたくないなっていうのがまず第一。それこそ今回のツアーはすごい久しぶりに行く新潟だったり、金沢だったりっていう会場も含まれていて、そこが楽しみみたいなところももちろんあるんですけど、やっぱもう最終的には、「どの場所で見ても、『Ephemeral』のツアー行って良かったな」と感じるものがある、そういうツアーにしたいなっていう気持ちです。

佳衣 自分がどう表現するかで、来てくれるお客さんの表情だったり、動きっていうのはやっぱすごく変わるもので。なのでまず今回のツアーは、自分たちが本当にかっこいいと思うものだったり、今回の『Ephemeral』というものをライブでちゃんと提示してあげたいなと思う。ツアーに来てくれるお客さんたちがどういう受け取り方をしてくれるのかっていうところはすごく楽しみです。
翔也 全箇所もちろん楽しみではあるんですけど、DIAURAって割とちゃんとメンバーの地元に凱旋してて、やっぱり地元だとメンバーのキャラっていうのがすごく立ったりするので、そこは毎箇所、楽しみだなとは思います。
達也 久々の行く地方もありますしで、もちろん全箇所、全力を見せるつもりですし。自分的にはこのツアーを回って、自分がどう変われたのかなっていう部分も楽しみにしてます。内容的にも、心から楽しめたなって思えるツアーにしたいなと思ってますし、それが伝わって、来てくれた一人ひとりの愚民たちが、「今日、時間を共有できてよかったな」って思えるようなツアーにしたいと思ってます。
——もうすぐ15周年を迎えますが、DIAURAのこれまでの活動を振り返ってみて、いかがですか。今後の展望などもお聞きしてもよろしいですか。
yo-ka 14年も経つとやっぱ人間も変わっていくものでして…。自分の経験であったりとか、楽曲を作る、歌詞を書いていくっていう立場の人間としての変わらないものっていうのはあるんですけど、やっぱり人間として、一人のボーカリストとしての考え方も変わりましたし、それこそ一つの作品との向き合い方も変わりましたね。そういう中でありがたいことに、今もこうして音楽を続けていられる、ここまで生きてこられたっていうところもあるんですけど。だからこそ圧倒的に作品を作っている実感というか、そこに込めている力感というか、そういったものってやっぱ年々増していってるのを感じるんですよ。それが、自分がこのバンドを続けるモチベーションにもなってますし。昔はどこか、〝形”を求めるところも大きかったですし、その〝形”ばかり求めてる時って自分自身の本質と外れていくことに気づかなかったりとか、(自分も)そういう時期をやっぱり経ているので。だから今、音楽を作っているこの喜びっていうものが大きいので、来年15周年とか迎えますけど、その時により悔いのないものを残していきたいって思いますし。今回の作品で一つ、〝終わり”っていうところがキーワードになりますけど、その時のためにも全力で生ききらないと、悔いみたいなものを残してしまうので、悔いなく4人でDIAURAをやりきれるように日々精進したいな、と思いますね。
佳衣 25枚目のシングルっていうこともありますし、それ以前にもアルバムだったりとかミニアルバムでたくさん曲を出してきたんですけども、俺、これだけは言えるんですけど、「あの時の曲の方が良かったな」とか、「あの時の方が良かったな」っていう曲は一曲もなくて。やっぱり今、自分が出すものっていうのが、過去のものをちゃんと越えられるものを作れている自信がありますし、自分自身もそう思えるので。自分もそうだし、バンドもしっかり前に進んでいると思うので、これからもいろいろな作品を出していくと思うんですけど、常に更新していけたらなっていうのは思ってます。
翔也 来年15周年を迎える上で、昔だったら、その節目、節目で「ここまで続けてこられたんだ」ってのは思ったりしたんですけど、最近はそんなに不安がないというか。昔だったら「バンドって儚いもんだろう」って思ってたりした時期もあったんですけど。なんか今はそんな不安も全くなくて、「当たり前に続けていられるんだろうな」っていう、なんか変な実感もあるんですよね。お客さんもそれをもちろん望んでくれてるだろうし、当たり前にDIAURAが存在してるのが俺は一番いい形かなと思うので、この先も不安にはさせないようにしていきたいなとは思います。
達也 レコーディングだったり、ライブの面でも言えることなんですけど、やっぱり音作りだったり、見せ方だったりとか、最初の頃と比べて今の方がどんどん見える部分が多くなっていったなって思いますし、こだわり方も変わってきてますし、それが自分の中では成長できてるなって実感できることの一つではあるんですけども。「成長していきたい」っていう部分はずっと持ってる気持ちなので、これからも切磋琢磨していきたいなって思ってます。
当インタビューは2025年3月に本誌公開されたものです。
Writer:廣瀬 大輔 / Photographer:尾形 隆夫 / Make-up:千代 / Styling:諸橋 奈津子
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