【Vol.8本誌巻頭特集】鬼龍院翔[ゴールデンボンバー]×千聖[PENICILLIN] 特別対談

かれこれ17年もの縁になるというMSTR(Crack6)こと千聖(PENICILLIN)と、鬼龍院翔(ゴールデンボンバー)による対談。
これは来たる10月25日と26日に新宿ReNYにて開催される[Crazy Monsters Halloween Party 2025]を前にしての特別企画となる。イベント自体のオーガナイザーである千聖と、DAY2にソロとして出演する鬼龍院翔は、なんでも本人たちいわく“叔父さんと甥っ子”のような関係であるのだとか。
ここまでの交流関係についての話はもちろん、千聖が知らなかったという逸話も飛びだす中、今年のクレモンに対する期待もいよいよ増していくばかりだ。
――来たる10月25日から26日にかけて、新宿ReNYにて開催される[Crazy Monsters Halloween Party 2025]のDAY2に鬼龍院さんが初出演されるとのことで、このたびオーガナイザーである千聖(MSTR)さんとの対談が実現することになりました。まずは、鬼龍院さんがオファーを受けられた際の心境からうかがわせてください。
鬼龍院翔 このイベントの存在は以前から知っていました。だけど、僕にはきっと縁はないだろうと何故か勝手に決めつけていたところがあったんですよね。
千聖 いやいや、そんな寂しいこと言わないで(笑)。
鬼龍院翔 すみません(笑)。でも、だからこそ今回こうして声をかけていただけたことが嬉しかったんです。しかも、共演者のメンツを見て驚きました。凄い人たちが集まってる日に呼ばれたんだなぁと思って。当然プレッシャーとか緊張はあったんですが、それ以上にワクワクする気持ちが勝ちまして、このたび出演させていただくことになりました。
――[Crazy Monsters Halloween Party]は10年以上続く老舗ハロウィンイベントになるのですけれど、ゴールデンボンバーさんはこれまでハロウィンにまつわるライヴを開催されたことはございますか?
鬼龍院翔 自主的にやったことはないですね。そういうコンセプトのイベントに呼んでいただいて、仮装してライヴをしたことは以前にもありました。
千聖 まぁ、ゴールデンボンバーの場合は毎回のライヴがハロウィンみたいなとこあるだろうしね(笑)。
鬼龍院翔 出落ちみたいなケースは多いんで(笑)、確かに普段からハロウィンに近い感覚はあるかもしれないです。
千聖 ああ、確かにハロウィンも出落ち感が大事なとこあるかもね(笑)。
――さて。一旦ここで千聖さんと鬼龍院さんの交流がどこから始まったのか、ということも少しうかがえますと幸いです。おつきあい自体はもう長いのですよね?

千聖 知りあったのはけっこう前だったはず。そんなによくしゃべったりとかしてたわけではないんだけど、顔見知りではあったよ。
鬼龍院翔 初めてお会いしたのは2008年1月だったと思います。
千聖 めちゃくちゃ細かく覚えてるなぁ(笑)
鬼龍院翔 現所属事務所から声をかけていただいた当時、事務所までお話を聞きにうかがったことがあったんですけど、その時の社長さんが「今ちょうど、うちのスタジオにPENICILLINのメンバーがいるよ」と言っていて、僕は「嘘つけ、そんなわけないでしょ」と思ったんですね(笑)。ところが、行ってみたら本当にみなさんがいらっしゃって。そこで初めて挨拶をさせていただいたんです。「この事務所すげー!ほんとにPENICILLINさんがいるんだ!!」となり、現事務所に入ることになりました。
千聖 あ、そういう感じだったの?
鬼龍院翔 そうなんですよ。そこからご縁が出来てライヴを見学させていただいたりもして、今に至っているということになりますね。あと一方的なことで言えば、僕は中学2年の頃に初めてギターを買った時に「絶対ムリだよな。こんなの弾けない」って思いながらも「ロマンス」のギターソロを必死に耳コピして練習してました(笑)。
千聖 知らなかった。その話は初めて聞いた(笑)。
鬼龍院翔 なんか、あのソロって音階が飛んでるんですよね。どうやって弾くんだろう??って凄い不思議でしょうがなかったです。「弾けたら絶対カッコいいのに…!」と思いながら憧れてました。
千聖 そんなたいしたことは弾いてないけどね(笑)。
鬼龍院翔 えー!そうなんですか?!
千聖 俺は…基本わかりやすくて派手な見せ場のあるフレーズが好きなんだよ(笑)。
鬼龍院翔 中学生だった鬼龍院少年には、その派手な見せ場が完全に刺さってました。
――千聖さんからすると、当初ゴールデンボンバーについてはどのような存在として把握していらっしゃったのでしょうか。
千聖 最初は噂で「ギターソロの間にメシ食ってるバンドがいる」って聞いて、とにかくそのインパクトがデカかった(笑)。HAKUEIやスタッフたちも「あれは面白い!」って言ってたしね。だったら観てみようかな、と思って行ったのがちょうど人気が出だした頃のO-WESTでやったワンマンだったのかな。
鬼龍院翔 ありがとうございます!
千聖 確か、あの時ってJIROさん(O-JIRO)のドラムセットを使ってたよね?
鬼龍院翔 はい、事務所を通じてお借りしてました。
千聖 Crack6はもともとキリショーくんたちと同じ事務所だったし、感覚的には勝手だけど親戚の叔父さんと甥っ子、みたいな関係にちょっと近い気がするよ。
――ちなみに、千聖さんとゴールデンボンバーが過去にタイバンされたことは?
鬼龍院翔 今年5月に開催された[姫路シラサギロックフェス2025]で、1日目にPENICILLINさんが出てて、僕らが2日目に出たことはありましたね。意外と直接のタイバンっていうのはなかったです。
――となると、[Crazy Monsters Halloween Party 2025]でCrack6とタイバンするのが初ということになるのですね。
くわえて、当日には鬼龍院さんがサインをいただいたこともあるくらいファンでいらっしゃるという、あのManaさんが率いるMoi dix Moisも出演されます。これまたライヴでは初共演ということになるのではありませんか。

鬼龍院翔 これはもしかしたら失礼にあたるかもしれないですが。凄くファンっぽいことを言っちゃうと、とにかく“悪い想い出にしたくないな”っていう気持ちがまずは一番大きいです。
もちろん同じイベントに出させていただけるというのは大変嬉しいですし、その分だけプレッシャーもあるんですけど、それ以前に「挨拶をする時に不備があったらどうしよう」とか、「何かで御機嫌を損ねるようなことにならないといいな」とか、そういう心配をしているというのが本心なんです。前に対談をさせていただいたことはあって、多分その時には嫌われたりするようなこともなかったと思うんですが、今回タイバンするうえでは「仲がこじれてしまわないといいな」と思っております。
千聖 いや、さすがにそれは大丈夫でしょ(笑)。Manaさんには去年のクレモンにも出てもらってるんだけど、楽屋裏とかでもみんなと仲良く楽しそうにしてたよ。最後にはセッションまで出てくれたしね。
鬼龍院翔 じゃあ、僕も少し安心して臨んでも良いのですね。
千聖 うん、きっとManaさんも楽しみにしてくれてると思うよ。
――なお、今回の[Crazy Monsters Halloween Party 2025]に関してはDAY1で若手や中堅どころが活躍してくれることになっているのに対し、DAY2はレジェンダリーな方たちが“いずれもソロもしくはソロプロジェクト”のかたちで出演してくださることになっております。今年はそうしたテイストの違いを味わえる楽しみもありそうですよね。
千聖 DAY2だと輸血子さんだけはいろいろ謎なんだけど(笑)。IKUOくんはもう超絶テクニカル系だし、Moi dix Moisはあのゴシックな雰囲気の色濃い世界だし、我々Crack6は明るく楽しくカッコよくみたいな感じだからさ(笑)。おそらく個性がそれぞれの方向に爆発することになると思うんだ。キリショーくんのソロっていうのはどんな感じになってくんだろうね?やっぱり、エンターテイメント要素が強い感じなのかな。
鬼龍院翔 他の3人がステージにいないだけですね。 うちはエアーバンドなので、流れる音は全く一緒です。で、バンドの曲をバンバンやります。ただ、今回のイベントに関してはフロアの空気が今の段階では全く読めないんですよ。どういう曲をどんな風に選んでやればいいか、といことはまだちょっと悩んでます。仮装にしても何が正解なのか、非常に読みづらいというのが正直なところですね。
――いわゆるソロ曲というのもあるのですか?
鬼龍院翔 あるけどそんなにやらないです。バンドの曲を堂々とひとりでやります。
千聖 完全にひとりって凄いね。それはそれで面白そうだな。
鬼龍院翔 メンバーがいてくれた方が曲の間奏とかでも盛り上げてくれますし、ひとりだと心細さは多少あるんですが、ひとりの方が頑張った分だけ稼ぎは大きくなりますので、僕としてはどっちもやっていきたいなと。
千聖 あはは(笑)。それ記事にしちゃって大丈夫??
鬼龍院翔 大丈夫です(笑)。ひとりでやるのも好きなんですよ。うちのメンバーは今それぞれいろんなことをやっていて、俳優業やってたりとか、けっこうスケジュール調整が難しかったりしますしね。そこで音楽活動を全て止めてしまうとヒマになってしまいますから、僕ひとりでも活動を続けていこうと思ってるんです。
千聖 なるほどね。そういえば、さっきイベントに呼ばれた時は仮装したことあるって言ってたでしょ。その時は何やったの?
鬼龍院翔 言葉で説明するのはちょっと難しいんですが、メンバー全員が全身を茶色っぽく塗って銅像みたいになったことがありました。あとは、LINEスタンプのキャラクターになったこともありましたね。
千聖 意外なとこ来るね(笑)。それはLINEとのタイアップとかだったの?
鬼龍院翔 いや、あれはまだLINEスタンプが流行りだした頃だったんで「やっておくなら今のうちだろう」ということで。早めにやっておきました。基本的には、ほかのバンドさんがカッコいい仮装をしている中で“カッコよくない仮装”をやる、っていう方向で出て行くことが多いですね。
――そうした敢えての変化球スタイルは、ある意味でゴールデンボンバーの設立コンセプトとも通じていそうですね。

鬼龍院翔 はい、それは凄くあります。他のバンドさんがやっていることはやらない、というのはゴールデンボンバーとして頑なに貫いてきているところです。
千聖 そもそもエアーバンドっていう発想が凄い。俺は「バンド=演奏する」と思ってたけど、そこを度外視したパフォーマンスを成立させたわけでしょ。
周りからは色々言われただろうけど、あの角度からアプローチして紅白まで出るほど成功したなんて他に絶対いないからね。
――源流ということでいえば、それこそManaさんがMALICE MIZER時代にライヴの何曲かで楽器を置いて華麗に舞う、というパフォーマンスをされていましたけれども。その後に出て来たPsycho le Cémuも含めて、全編で敢えてプレイをしないという革新的かつ潔いスタイルはゴールデンボンバーだけだったはずです。
鬼龍院翔 そこはきっと時代的なものもあったと思うんですよ。音楽面でのデジタル録音再生技術が発達して、わりと手頃な感じで使えるようになってましたからね。それより前の時代だとMTR(マルチトラックレコーダ)はありましたけど、ライヴで再生するにはよく止まってしまうという弱点があったり、コストの面でもまだ難しかったと思います。DTMが普及して、パソコンでリアルな音楽を作れるようになったことで僕らみたいなやり方が上手くいった面はあるような気がします。
千聖 それはあるかもね。ただ、そうやって時代に乗るっていうのは才能とセンスがあったからだよ。
鬼龍院翔 いや、運が良かっただけです。タイミング的に恩師とたまたま出会えた、というのも大きかったですね。
その出会いがなかったら状況はまた違ってたと思います。
――千聖さんがDTMを取り入れたのは何時からでした?
千聖 まぁまぁ早かったよ。千聖ソロなんかはデビューからほとんどDTM、しかもPENICILLINより早く取り入れてた。PENICILLINはいわゆる王道のバンドスタイルなんで当時はガチガチに打ち込むとかではなかったけど。
――808というエレクトロミュージックのユニットも組まれていましたものね。
千聖 そうそう、YASUMICHA’N(=ex.Sleep My Dear・YASUMICHI)とね(笑)。
あとやっぱり、ゴールデンボンバーの場合は歌詞が秀逸っていうのも個性として強いよね。
――ヴィジュアル系に興味のなかった人たちまでをも大量に惹きつけることになったのは、大胆で斬新なパフォーマンのみならず、笑えるけれどもどこか哀切も漂う絶妙な歌詞世界の魅力も大きかったように思います。
鬼龍院翔 ということは。僕らがいたから色々な十字架がいる、ということですかね?
――色々な十字架はDAY1に出演しますが、シーンの系譜として考えた時にその流れはきっとあるのではないでしょうか。
鬼龍院翔 色々な十字架の歌詞、ほんとフザけ倒してますよね。何回ババアの原付盗むんだよ!っていう(笑)。あれ最高だよなぁ。
しかも、音楽センスは凄いしっかりしてるし。誰がなんと言おうとも、僕はとても面白いと感じてますね。
千聖 そう考えると、あらためてヴィジュアル系って凄い文化だよね。何をやっても“ダメ”ってことがないじゃない。それこそ賛否両論が出たとしたって、賛の方の人たちが多ければ結果的にそれでいいわけだし。
クレモンも毎回いろんな人たちが出てくれるけど、これが他ジャンルのイベントってなったら、ここまでのバリエーションにはならないと思うんだよね。どれだけ意表をついても大丈夫、っていうお客さんたちの方の受け容れ口がヴィジュアル系の世界は相当広いと思う。
――ヴィジュアル系は偏ったジャンルと誤解されがちですが、ヴィジュアル系はかなりの多様性を持ったシーンだと言えそうですね。
鬼龍院翔 だからこそ、僕たちも始めやすかったんです。ヴィジュアル系の世界は変わったことをやっても許してくれるといいますか。それをアイディアと捉えてくれたり、面白がってくれることが多いんですよね。
千聖 クレモンは司会からして白塗りだしなぁ(笑)。
でも、団長の歌はむしろ正統派だもんね。そこのギャップが凄い。
鬼龍院翔 団長とは昔から知り合いで、でも仲良くなる前から僕はNoGoDをよく聴いてたんですよね。メロディが素晴らしいところがとても好きなんです。メタルだからと思ってまだ聴いたことがない人がいたら、ぜひ聴いてみて欲しいですね。
千聖 キリショーくんはメロディアスなのが好きだよね。B’zも好きじゃなかった?
鬼龍院翔 好きです。ロックでもJ-POPでも、歌のメロディの良さに惹かれます。だから、僕も常々そういう音楽を作ろうとしてますね。
――ここまでお話をさせていただいて来て、あらためて感じているのですけれど。鬼龍院さんはつくづく真面目で謙虚で実直な方ですね。
鬼龍院翔 好きな音楽を作ることに対しては心血を注いでおります。
――ただ、すこぶるエンターティナーでいらっしゃるだけに、その面白さを曲解して誤解されてしまうことに対する不満を感じられるようなことはありませんか。
鬼龍院翔 全然いいです。この世の全ての人とはどうせ分かり合えていないので。みんなわかり合ったつもりでも、わかり合えてないのが現実ですから。こんなことを言っちゃうとアレですけど、みんな分かり合ったつもりになってるだけなんじゃないですかね。
それが当たり前だと思っているので、たとえどこかでイロモノ扱いされたとしても、僕の音楽までたどりついてくれる人がいて、じっくり聴いてくれる人たちがいるというだけで、僕はなおさら嬉しくなります。
――さて。ここからは再び[Crazy Monsters Halloween Party 2025]についてのお話をうかがって参りましょう。
今年もクレモンはエンタメに特化したものとなっていくはずですが、オーガナイザーであるMSTRこと千聖さんは何を期待されていますか?
千聖 これだけの顔ぶれが、いかにひとつの空間を共有していくことになるのか?っていうところがまずは楽しみだよね。意表のつき方も人それぞれだろうから、みんなが一体どんな出方で来るのかも興味あるし。
毎年来てくれる人はもちろんだけど、たとえばキリショーくんのファンとかで初めてクレモンに来るっていう人たちも、普段のライヴとはまた違った観点で「この人たちこんな格好するんだ」とか、全編にわたっていろんなアーティストのパフォーマンスを堪能出来ると思いますよ。
――逆に、鬼龍院さんをテレビでは観た事があるけれども生で観るのは初めて!という方がいらっしゃる可能性もありそうです。
鬼龍院翔 ですね。お初でタイバンする方も多いので、そういう方たちがけっこう多いんじゃないでしょうか。
――だとすると、その点を踏まえての戦略は何かございますか?
鬼龍院翔 僕がタイバンする時によく心がけるのは、観覧客アリのTV収録時に芸人さんたちがやられているような“前説のようであれ”ということです。
早めに名乗って自己紹介し、状況説明をして、早めにノリ方を説明する。これに徹したいと思っております。
千聖 頼もしいな(笑)。あとそうだ、最後のセッションもよろしくね。みんな盛り上がり過ぎて、転んだり滑ったりすることがあるからけっこう大変なんだけど。
鬼龍院翔 あ、僕も出ていいんですね?そしたら僕は、先輩方を護る警備員みたいな気持ちで参加させていただきます!

当インタビューは2025年9月に本誌公開されたものです。
Writer : 杉江由紀 Photographer:Lestat C&M Project hair&makeup:笹川知香(鬼龍院翔)、北瞳(千聖) 撮影協力:高円寺 獅子丸
