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【Vol.8本誌巻頭特集2】PENICILLINスペシャルインタビュー

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三面六臂を持つ武神・阿修羅かのごとく。HAKUEI、千聖、O-JIROの3人からなるPENICILLINは始動から33年の歳月を経てなお、シーンの第一線で攻めの姿勢をみせ続けている。今秋に発表される3曲入りパンフレットCD +DVD『阿修羅』について、彼らが異口同音に語る「今までにないことに挑戦して、攻めの姿勢をみせたいよね」っていう気持ちをそのまま音に出来た」(HAKUEI)「どこまでやれるかに挑戦をしたわけですよ」(千聖)「無難な感じではなく、ちょっと振り切っちゃってる曲を作りたかった」(O-JIRO)という言葉たちにも、彼らのアグレッシヴなスタンスがあふれ出ているのではなかろうか。


HAKUEI そこはまず、今の時代ってアルバムとかシングルみたいな分け方はもうどうでもいいような気がしてるんです。実際にPENICILLINではこのところパンフレットDVDっていうかたちで「KISS」「No」「One Thousand and One Nights」とコンスタントに作品を出してきてますし、もはや昔のカテゴリーに沿ってやる必要は感じてないというか。
つまり、今回の場合だと僕らがやりたいと思ってるのは新しく出来たカラーの違う3タイプの曲たちに、それぞれにつながりが生まれるようなタイトルや歌詞をつけて、ひとつの作品としてまとめていくということなんです。

O-JIRO 難な感じではなく、ちょっと振り切っちゃってるような曲を作りたいなっていう気持ちがまず最初にありました。聴く人たちにどう届くかという以前に、自分たち自身が「ここまでやっちゃったね!」って面白がれるような曲にしたかったんです。

千聖 もともとはこれ、SEっぽい感じで作ってなかった?

O-JIRO 最初はもっと短かくてSEっぽかったんだけど、それを聴いたHAKUEIさんが「曲にしてみたらどう?」って言ってくれたんですよ。そこから曲としての構成を伸ばして、メロディも明確につけて、っていうことをやっていきました。

千聖 そこにギターのリフを加えていったことで、どんどん輪郭が見えてきたっていうかな。バンドサウンドらしくなっていったよね。オタマジャクシに手足が生えていくみたいな変わり方をしてった感じ。

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HAKUEI(Vo.) 

HAKUEI ここまで33年PENICILLINをやって来て、曲は既に300曲以上あると思うんですけど、それだけやってるとさすがに既視感のある曲が出来ちゃうことも時としてあるんですよね。
もちろん、それはそれでこのバンドの持ち味がよく出た曲として成立するケースもあるとはいえ、今回に関しては僕もO-JIROくんと同じような「今までやったことがない突き抜けたことをやりたい」っていう気持ちを持ってたんです。ファンの皆さんに聴かせた時にも「PENICILLINってこういうのもあるんだ」って感じてもらえるような意外性のある曲をリードチューンにしたかったんで、その意味でこの曲は原形がSE的な何にもとらわれてない自由なかたちをしてるところが面白かったですね。
僕が聴いた段階ではまだメロもあるんだかないんだかっていう状態だったけど、この独特な世界観だけはもう表現されていたから、そこをうまくピックアップしたらきっと新しいものが出来るだろうなっていう予感があったわけです。

千聖 まぁ、HAKUEIも途中まではちょっと半信半疑なところがあったんじゃないかと思うけどね。俺がギターを入れてみたら、その次の日に来たLINEの返信でちょっと反応が変わってたもん。あの時「これは気に入ってるな」って思った(笑)

HAKUEI シンセの音がメインで雰囲気だけはあったから、これをなんとかバンドサウンドに持ってけたらいいなぁと思ってたんでね。そこにザックザクしたギターが入ってきたことで、一気に「あぁ、こうなるんだ!」って見えた感じがしたんですよ。

千聖 そのあとにJIROさんが足してきたメロディを俺が仮歌として入れた段階で、曲としての輪郭が完全にハッキリしたんじゃないかな。

HAKUEI うん、そこで「行けるぞ!」ってなった。

千聖 今回はJIROさんの曲だけじゃなく俺が作った曲もそうだったんだけど、プリプロダクションに入ってからの練り直し作業が普段よりも多かったからね。

O-JIRO その過程でいろんな意見が反映されていくことになったから、みんなで作った感は確かにいつもより強いかも。

HAKUEI 3曲だからそれを丁寧に出来た、っていうのもあるでしょうね。そのつど思ったことはみんなに伝えて共有して、しっかり音に反映させていくことが出来たんですよ。
こうして「今までにないことに挑戦して、攻めの姿勢をみせたいよね」っていう気持ちをそのまま音に出来たっていう意味では、なんか33年前とあんまり変わってないんだなっていうこともあらためて感じました。

千聖 自分たち自身が新鮮味を感じられないと、飽きて来ちゃうしね(笑)。エキサイティングな気持ちで臨める曲をやっていく、っていうのはやっぱバンドとして大事だと思う。

HAKUEI これは何年か前にカバーアルバムを作ってわかったことなんだけど、全然違う人の曲をやったとしても、我々3人で音を出せば絶対どんな曲でも“PENICILLINになっちゃう”んですよね。その経験があるから、もうどんなことにチャレンジしても大丈夫っていう自信があるのも大きいです。

O-JIRO 客観的にみると「阿修羅~青年期~」って変わった構成の曲ですしね(笑)

千聖 しかも、今の段階で資料として聴いてもらってる音はまだ制作途中のものだから、ここからさらにエキサイティングになるはずですよ。

HAKUEI 歌もこれからもっとエモーショナルにしていこうと思ってます。

HAKUEI 阿修羅っていう3面の顔を持ってる神様で、それぞれが幼少期・青春期・青年期を表しているんですよね。今回の3曲ではそれをモチーフにしてます。これも今までやったことのなかったアプローチなんですけど、せっかく新曲を3曲同時に出すわけだから、なにかひとつのつながりを持たせたいなと思っていたところ、ふと阿修羅像のことが思い浮かんじゃったんです。で、調べてみて「あの3つの顔にはそういう意味があったんだ!」って僕も初めて知りました。

HAKUEI 詞の方向性としては青年期で今のPENICILLINのリアルを歌っていて、思春期ではPENICILLINが結成した頃のことを描いてる感じですね。
幼少期はまさに文字通り、自分たちが物心ついたくらいのことを描いてます。だから、阿修羅の存在そのものを詞にしたみたいな感じとは違うんですよ。3曲の持ってる個性を活かすために、3面の顔を持ってる神様からちょっとヒントをいただきましたっていうことなんです。

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千聖(Gt.)

千聖 俺はこのセクションでは、これを1曲目に作ったんだけど、まずはJIROさんやSHIGEさんの意見を聞きながら作業していって、さらにアレンジしたものを最終的にHAKUEIに聴いてもらって採用された感じだったね。家に持って帰ってサビはまるごと作り直したし、原形はこれより暗い雰囲気だったんだよ。

HAKUEI サビを変えたい、っていうのは最初から言ってたもんね。俺も最初はこの曲がどういうところに着地するのか、あんまり良く分かってなかったです。

O-JIRO でも、そこからこの曲でも「これをもっと良くするにはどうしたらいいのかな」っていうことを、みんなで考えていくことが出来たっていうことですね。

千聖 16分で刻んでいくギターが軸になってるせいかな。おそらく、今回の3曲の中だとスパイス的な役割を果たしてるところもあるような気がする。
PENICILLINとしては、こういう方向性で聴かせていく曲は久しぶりだと思うね。あのカッティングは自分で作ってみて、けっこう難しいなと思ったけど、ちゃんとあのノリとかグルーヴを出せて良かった(笑)。

O-JIRO リズムのハネた感じを活かせたし、昔だったら「ちょっと背伸びし過ぎかな?」って感じたかもしれないようなフレーズを、僕も今回は自然にやれましたね。

千聖 JIROさん、楽しそうにやってるなっていうのは俺も見てて感じた(笑)

O-JIRO 雰囲気あってイイ感じですよね。

千聖 いやでも、あれはまだ仮だから。ソロはさらに清書するつもりなんだよね。もう少しブラッシュアップしたいと思ってるから、完成形をお楽しみに(笑)

千聖 曲を作った段階では思春期とか、そういうテーマはなんもなかったけどね(笑)。

HAKUEI 後から僕が思春期ってつけただけなんすけど、曲調とは合いましたね。

千聖 そういえば、さっきHAKUEIが「今までにないことに挑戦して、攻めの姿勢をみせたいよね」っていう気持ちをそのまま音に出来た」って言ってたけどさ。この曲が凄いのは、PENICILLIN史上最速のテンポを記録したことなんですよ。

O-JIRO BPMで言うと220です(笑)

HAKUEI 今までの最速って210とかだった?

O-JIRO 212っていうのはあったはず。ちなみに、この曲は倍録りで220とかじゃなくて純粋に4分音符で220です。一部200のところもあります。

HAKUEI メタルでもそうそうないんじゃないの?

千聖 この曲はメタル…いや、というかこれは純粋にメタルだな(笑)

千聖 どこまでやれるかに挑戦をしたんだ。学生時代、自分が好きだったあるバンドが速い曲やってて、当時はそういうのを聴きながら「凄いなぁ」って思って憧れてたけど、そのバンド、俺が30代の頃、もっと速い曲やってて(笑)。
あ、限界を超えたんだな、凄い!って感服した。だったら、いっそこの年齢になったPENICILLINも最高速に挑戦してやろう!と思ってやってみたら、凄い面白かった(笑)。

O-JIRO 僕も楽しかったです。昔だったらガッツだけで叩き切ろうとしてたと思うんですけど、今は昔よりもちょっと賢くなっているので、スピードを出しながらも音数を減らすにはどうしたらいいか?っていうことをちゃんと考えました。

千聖 思考としては、かなりアスリートに近いものが要求される曲だよね(笑)

O-JIRO 歌うのですら普通だったらシンドイと思いますよ。

HAKUEI 実際のレコーディングはこれからなんで、まだなんとも言えないところはありますけどね。でも、仮歌の時は速いけどそれがつらいとかはなかったです。状況的に言うと、仮歌の録りの前に寝ないでずっと何十時間も歌詞のことを考えてて、ほとんど寝ないで歌いに行ったから、もうバキバキな覚醒状態だったんですよね。
だから、感覚的にちょっと麻痺してたところがあった可能性はあるかもしれません(苦笑)。

HAKUEI 何かに衝き動かされるように没頭してはいましたね。

千聖 しばらく連絡来ないし「大丈夫か?」と思ってたら、いきなり3曲分の仮歌詞が上がってきたから驚いた(笑)。

HAKUEI しばらく忙しかったのもあって、疲労も溜まってましたからね。
あれは暴走状態に入ってたんだと思います。

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O-JIRO(Dr.)

O-JIRO 実は「阿修羅~青年期~」のほんとの初期段階って、少しインドっぽさがある音になってたんですよ。でも、そこからみんなで作っていくことでバンドサウンドのカッコよさがどんどん強くなっていったので、映像的にもバンド感は大事にしていけたらいいなと思ってます。

千聖 あぁ、そういう考え方もあるか。どうなんだろう?

HAKUEI そこは特に考えてなかったですね。偶然です。すみません(笑)。

千聖 でも、無意識なところで触発されてたっていうパターンもあるんじゃない?俺も最初、今回の衣装はサリーとかインドっぽい柄とかどうかなって考えたことあったし。あくまでも、アイディアだけなんだけどさ。

千聖 慣れだと思うよ、新曲たちをやっていくうえで大事になってくるのは。リハもそうだけど、ライヴの本番を重ねていくことで自分たちの身に着けて行くしかないよね。去年「No」を作った時も、ツアー前は「どうなってくのかな?」って思ってたけど、いざ始まってみたらJIROさんもHAKUEIも思ってた以上に馴染んでたし、今回もまた良いライヴを展開していけるだろうなという自信はある。

O-JIRO ツアー前に練習さえすれば大丈夫です(笑)。

HAKUEI ライヴかー。まだ詞が完成するところまでは行ってないから、今はそのことで頭がいっぱいで(苦笑)。
ただ、今回の3曲は自分たちにとって新しいものばっかりで、今やりたいものばっかりだから、実際にやってくのは凄い楽しみ。でも、細かいことは詞を全て書き終わって、歌を録り終わってから考えます。

千聖 俺らが出る日に関しては、90年代当時に『Break Out』(地上波TV番組)に出てたバンドを集めるっていうのがコンセプトだったらしいんだよね。
ところが、ほとんどのバンドが現存してないっていうことで、『Break Out』世代じゃないPENICILLINにも声がかかったんですよ。主催者側いわく「とにかく今も残ってて、ガッツリやってるバンドが少ないんです」っていうことで、こっちとしても「そうでしょうね」となり、せっかくの機会でもあるから出ることにしたわけ。つまり、PENICILLINは希少動物なんだね(笑)。

千聖 話はちょっと飛ぶんだけどさ。
このあいだうすた京介さんの展覧会([祭りだワッショイ!うすた京介ワールド展~すごいよ!!マサルさん30周年・ピューと吹く!ジャガー25周年記念~])に行ってきたのね。そうしたら、会場でずーっと「ロマンス」をエンドレスでかけてくれてて。俺からしても「ちょっと大丈夫かな?」とも思いつつ(笑)、会場に来てた人たちはみんな楽しんでくれてみたいで、それは凄い嬉しかったな。
だから、今度のフェスに来てくれる人たちにもPENICILLINの音をぜひ楽しんで欲しいよね。

HAKUEI だったら、イベントでも「ロマンス」を生演奏のエンドレスで5回くらいやったらいいんじゃない(笑)。
っていうのは冗談ですけど、やっぱりダントツで世の中の人たちに親しまれちゃってるのは間違いないですから。あの曲もやらないわけにはいかないとは思ってます。

千聖 [CROSS ROAD Fest]はLa’cryma Christiが復活するし、イベントとしての注目度もかなり高いからね。
メンツはちょっと違うけど、5月にあった[姫路シラサギロックフェス2025]の時も出てみてけっこう面白かったから、今度も楽しい1日になっていくんじゃない?

O-JIRO お客さんたちの中には、「わたしは違うバンドのファンだったので、PENICILLINを生では観たことないです」っていう人たちもいるだろうから、ここに来て「初めて観られるからラッキー!」くらいの感覚で観てもらってもいいと思いますよ。

HAKUEI がっつり健闘したいですね。「ロマンス」もやりつつですけど、今のPENICILLINというものをしっかりお見せします!


当インタビューは2025年9月に本誌公開されたものです。

Writer : 杉江 由紀 Photographer:菅沼 剛弘 hair&makeup:北瞳