【ライブレポート】摩天楼オペラ 関西LIVE CIRCUIT「DOMINATE CIRCUS 2026」2026.3.18(Wed) 奈良ネバーランド

前夜、神戸で生まれた熱はまだ身体の奥底に残っていて、それが冷めきることなく奈良へと流れ込んでいた。ただ、辿り着いた奈良の街は対照的に静かだった。小雨が降り、どこか張り詰めた空気が漂う夜。その静寂と緊張感が、逆にこの日のライブへの期待を極限まで引き上げていく。
そして会場である奈良ネバーランドに足を踏み入れた瞬間、その予感は確信へと変わる。満員のフロア、特徴的な低い天井、ステージとの圧倒的な距離の近さ。この奈良ネバーランドの空間は、ただライブを観るための場所ではなく、音と感情が直接ぶつかり合う場所だと。この夜は、ただのツアーの一公演では終わらない。そう思わせるだけの条件が、すでにすべて揃っていた。

SEが流れ、ステージがゆっくりと赤く染まっていく。その瞬間、空気が一変する。1曲目『BLOOD』。真っ赤なペンライトが揺れ、会場全体がまるでひとつの巨大な心臓のように脈打ち始める。会場が真っ赤なペンライトによって血を震わせ、命を重ね、赤く染まる。ブラストビートが炸裂した瞬間、フロアは一気にヘッドバンギングの渦へと飲み込まれた。静寂だった奈良の夜は、ここで完全に塗り替えられる。

続く『EMBRYO』。新曲でありながら、すでにライブの中で確かな存在感を放っているこの楽曲は、披露されるたびに表情を変え、深化していることが伝わってくる。摩天楼オペラの楽曲の中でも速いテンポと複雑な展開、それらをまるで当然のように演奏する。その“当たり前ではないことを当たり前にやってのける”凄みこそが、摩天楼オペラというバンドの本質なのだろう。そして何より、ボーカル苑の存在がこの楽曲にさらなる説得力を与えている。低音から高音までを艶やかに行き来しながら、ただ音程をなぞるのではなく、そこに確かな感情を乗せていく。その歌は、もはや“上手い”という言葉では表現しきれない領域に踏み込んでいた。ギター優介のソロは鋭く、しかしどこか叙情的で、ドラム響のツーバスは空間そのものを震わせるほどの迫力を持つ。ベース燿は一切の揺らぎを許さない安定感で全体を支え、キーボード彩雨の旋律は楽曲に鮮やかな色を与える。それぞれが突出しながらも、決してバラバラにはならず、ひとつの音楽として成立している。その完成度の高さが、このバンドの現在地を如実に物語っていた。『EVIL』へとなだれ込むと、会場の熱量はさらに上昇し、観客は髪を振り乱しながらその中心へと飛び込んでいく。
MCでは、会場からメンバーの名前を呼ぶ声が絶え間なく飛び交う。奈良ネバーランドという会場の特性に触れながら、「ここでしかできないライブを見せる」と宣言するその言葉には、この空間を最大限に活かすという強い意志が感じられた。
「さあ、いこうぜー!」

苑の一声で『落とし穴の底はこんな世界』へ突入する。彩雨がキーボードを掲げ、音を放つと同時に、響のツーバスと優介のギターが会場を包み込み、燿のベースがそれらをしっかりと束ねる。続く『Curse Of Blood』では、圧倒的な音数とスピードにも関わらず、一音一音が明確に届く。その理由は単純だ。バンドとしての精度が、圧倒的に高いからである。
『Adult Children』では空気が一気に攻撃的へと転じる。苑の
「暴れていこーかー!」
「ぶっ飛ばしていくぜー!」
という煽りに応えるように、燿も前へと出て、フロアを煽り続ける。苑との掛け合い、観客との応酬、そして優介のギターソロ。そのすべてが一体となり、会場の温度をさらに引き上げていく。『MONSTER』では色とりどりのペンライトが揺れ、フロアは鮮やかな光で埋め尽くされる。その景色を、ステージからメンバーはどのように見ているのだろうかと思わずにはいられない。そして『Incessant Snow』。先ほどまでの色彩が嘘のように、会場は一面の白へと変わる。この“色で空間を共有する感覚”は、摩天楼オペラとオペラーが長い時間をかけて築き上げてきたものだろう。
『Apocalypse』では、優介、燿、彩雨がステージ最前に並び、激しさと叙情を同時に叩きつける。響のドラムは身体の奥まで振動を伝え、優介のギターは感情そのものを弦に乗せているようだった。『儚く消える愛の讃歌』に入ると、会場の空気は一変する。摩天楼オペラは歌詞も唯一無二の世界観を紡ぐセンスが光っている。「僕が僕であり続けるから 君は君の心のまま生きて」。苑の声は歌を超え、言葉として一人ひとりに届いていく。その瞬間、ライブハウスという空間は単なる“場所”ではなく、感情が共有される“場”へと変わっていた。『悲しみは僕への罰』では照明が落ち、静寂の中で音が際立つ。音源では決して味わえない、生の音楽の重みがそこにあった。愛するということを深く考えさせられる。「証」というものを心に刻みたいと思わせてくれる。

『流星の雨』では再び光が差し込み、彩雨のキーボードが優しく響く。燿のベースはしなやかに流れ、響のドラムがそれを支え、苑の歌がすべてを包み込む。『雫』では曲中に一瞬の静寂が訪れるのが特徴的だ。その“間”が会場全体を支配する。この瞬間にこそ、ライブハウスで音楽を体験する意味があるのだと強く感じさせられる。そして『翠玉のワルツ』。会場は緑に染まり、ペンライトがしなやかに揺れる。この曲を聴くと、いつも思う。摩天楼オペラの楽曲の背景の奥深さを。音源だけでも充分素晴らしいが、会場でしか感じられないこの高揚感。メンバーの表情も柔らかく、会場全体がひとつの流れの中に溶け込んでいた。
ラストは『六花』。苑は会場の隅々まで視線を巡らせ、この瞬間を焼き付けるように歌う。燿がこの曲を語っていた、“静”と“動”の演出が心を揺さぶり、摩天楼オペラというバンドの本質がこの一曲に凝縮される。観客もまた、最後の力を振り絞るようにペンライトを振りかざし、この時間を全身で受け止めていた。
アンコールでは、奈良ネバーランド特有の天井の低さが話題に上がり、その構造すらもライブの一部として楽しんでしまう柔軟さが印象的だった。響が見えにくいステージなので、会場にせせりだしファンを喜ばせる。ライブハウスの特徴で盛り上がるのは全国を回ってきた摩天楼オペラならではだ。奈良に住んでいるオペラーも多く、奈良のトークも話がはずんだ。

『honey drop』ではフロントメンバーが最前へ出る。そして会場のオペラーは全員高く手を伸ばす。彩雨と優介の掛け声に合わせ会場は飛び跳ねる。会場の一体感が一気に高まり、アンコール前と同じくらいの熱量へと跳ね上がる。『クロスカウンターを狙え』では叫びと歓声がぶつかり合い、ステージとフロアの境界線は完全に消えていた。彩雨の掛け声から始まり、苑が煽り、響が叫ぶ!『PHOENIX』。これぞ摩天楼オペラとも言える、重厚なギターリフとツインペダルが冴える疾走感。燿のベースソロが会場に轟き、優介のギターソロが響く。
会場はまばゆいばかりのペンライトが揺らめき、、このライブの終わりを噛み締めるかのように一振り一振りに思いをのせる。メンバーとオペラーの一体感が最高なライブとしてここに刻まれた。
しかし、終わらない。まさかの1曲追加だ!
「まだ帰さねーぞ!」優介の一声で、会場は最高潮へと達する。ただ、ギターを持ってなかった優介が「でも、ちょっと待っててね」と可愛い一面を見せ笑いと歓声が混ざり合う中、最後に投下されたのは『BURNING SOUL』だった。すべてを出し切るように、すべてを燃やし尽くすように、ステージと観客がひとつになる。苑のシャウトが響いた瞬間、この夜は単なるライブではなく、“記憶に刻まれる体験”へと変わった。
関西ツアーは残すところ大阪のみ。この奈良の夜は、その先へと確実につながる“確信”を残した。摩天楼オペラは今、間違いなく進化の只中にいる。そしてその進化を目撃することこそが、ライブに足を運ぶ意味なのだと、この夜は強く証明していた。

Writer:宮下 浩司 Photographer:@Tanacamera1207
<セットリスト>
- BLOOD
- EMBRYO
- EVIL
- 落とし穴の底はこんな世界
- Curse Of Blood
- Adult Children
- MONSTER
- Incessant Snow
- Apocalypse
- 儚く消える愛の讃歌
- 悲しみは僕への罰
- 流星の雨
- 雫
- 翠玉のワルツ
- 六花
En1
- honey drop
- クロスカウンターを狙え
- PHOENIX
- BURNING SOUL
<LIVE>
摩天楼オペラ 関西LIVE CIRCUIT「DOMINATE CIRCUS 2026」
2026年3月20日(金・祝) 大阪・BIGCAT
19th Anniversary Live
2026/5/4(月・祝) 豊洲PIT
TOUR 2026
6月7日(日) 東京 LIQUIDROOM
6月21日(日) 奈良 EVANS CASTLE HALL
6月27日(土) 静岡 Sunash
7月4日(土) 福島 郡山Hip Shot Japan
7月5日(日) 栃木 HEAVEN’S ROCK Utsunomiya(VJ-2)
7月11日(土) 北海道 札幌cube garden
7月12日(日) 北海道 札幌cube garden
7月18日(土) 福岡DRUM Be-1
7月19日(日) 熊本B.9 V2
7月25日(土) 石川 金沢AZ
7月26日(日) 富山 SOUL POWER
8月1日(土) 香川 高松DIME
8月2日(日) 岡山IMAGE
<関連リンク>
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