2023.12.28
【ライブレポート】千聖BIRTHDAY LIVE「ROCK ROCK 19Z!
昨年2月に結成30周年を迎えたPENICILLINは、同年2月にアニバーサリー・イヤーの始まりを告げるライブ<The beginning of 30th anniversary>を新宿ReNYで行なったことを皮切りに、ニュー・アルバム『パライゾ』をリリースし、同作をフォローする全国ツアーを行い、さらにパンフレットCD『カタストロフィ』を制作し、’23年2月にはベスト・アルバム『30 -thirty- Universe』をリリース、同作の全国ツアーの実施…等々、密度の濃い動きを見せた。
そして、23年7月17日に30周年を締め括るライブ<PENICILLIN 30th anniversary tour real final 渋谷公会堂>をLINE CUBE SHIBUYAで開催。同公演も大成功に終わり、PENICILLINは30周年を華々しく飾ってみせた。
30周年を祝した活動が約1年半に及んだこともあり、<PENICILLIN 30th anniversary tour real final 渋谷公会堂>を終えた後はしばらく休むかと思いきや、8月6日には「祭り」、9月16日・17日はO-JIROのBIRTHDAY LIVE 「とのさまGIG」そして、10月7日・8日に恵比寿LIQUIDROOMで<PENICILLIN 千聖 BIRTHDAY LIVE 「ROCK ROCK 19Z!」と銘打たれた公演が行われた。30年という長いキャリアを誇っていながら休むことなく活動に勤しむ彼らの意欲は驚異的ともいえる。そんな彼らがファンの方々と一緒に千聖の誕生日を祝ったライブの模様を、10月8日の公演を軸にしてお届けしよう。
LIQUIDROOMの場内が暗転し、「ハッピーバースデー」をモチーフにしたオープニングSEが流れるとPENICILLINのメンバー達がステージに姿を現した。ビッシリとオーディエンスで埋まったフロアから盛大な拍手と歓声が湧き起こり、ライブは「Time Machine」から始まった。HAKUEIのエモーショナルな歌声と楽器陣が奏でるしなやかなサウンドで、瞬く間に抒情的な世界を創出する辺りは実に見事。ライブが始まると同時にオーディエンスの心が“グッ”とステージに惹き寄せられたことが如実に感じられた。
ちなみに、初日はアグレッシブなファスト・チューンの「Rosetta」をオープニングに据えて、一気に場内のボルテージを引き上げるスタイルが採られていた。テイストの異なる幕開けでいながら、どちらも魅力的なのはさすがといえる。
その後は、「こんばんは、PENICILLINです。今日は千聖のバースデー・ライブでございます。素晴らしいリーダーの誕生日を沢山お祝いしますので、思いきり楽しんでいってください。いいですか!」というHAKUEIのMCも挟みつつパンキッシュに疾走する「幻想カタルシス」や“痛みを感じさせる翳り”を纏った「X・X・X」、スタイリッシュな「prison」などが相次いで演奏された。
ロングコートに白いブラウスというドレッシーな姿で、強く心に響く歌声を聴かせるHAKUEI。王道的なロック・ファッションとテクニカル&ホットなギター・プレイのマッチングが最高にカッコいい千聖、シックかつオシャレな衣装を身に纏い、フレキシブルなドラミングを展開するO-JIRO。強い存在感を発する3人が並び立ったステージに目をくぎ付けにされるし、“仲良し3人組”という雰囲気ではなく“ビシッ!”とした緊張感が漂っているのも実にいい。PENICILLINの3名が生み出すケミストリーの魅力を、あらためて感じさせられた。
ライブ中盤では翳りを帯びた「Perfect Flame」や爽やかな「still alive」、緊迫感を湛えた「透明人間パルサー」などをプレイ。初日と同じく1曲ごとに表情を変えながら散漫さを感じさせることなく、逆に世界を深めていく彼らのライブは見飽きることがない。“PENICILLIN=破天荒なバンド”というイメージを持っているリスナーは多い気がするが、彼らの楽曲は非常に良質だし、演奏力も高い。元々持っていた“ヤンチャ感”とベテランにふさわしい円熟味を併せ持った現在のPENICILLINは本当に魅力的で、今なお多くのリスナーから篤い支持を得ていることも頷ける。
「Rosetta」で幕を開けたライブ後半では、刺々しさを放つ「Desire」や、切迫感に満ちた「快感∞フィクション」などが畳みかけるように演奏された。メンバー全員が織りなすフィジカルなパフォーマンスとパワフルなサウンドの連続にオーディエンスも熱いリアクションを見せる。ステージ、客席共にボルテージはどんどん高まっていき、ライブ後半の場内は熱狂的な盛り上がりとなった。
その後は本編のラストソングとして、光を感じさせる躍動感を打ち出した「Fantasia」をプレイ。初日の「Blue Impulse」同様、激しくいき上げた後にこういった柔らかみのある楽曲を持ってくるのは心憎い。エモーショナルな余韻を残してステージからPENICILLINが去った後、間髪入れることなく客席からアンコールを求める声が湧き起こった。
「♪ Happy Birthday To You, Happy Birthday Dear 千聖!」とオーディエンスが繰り返し歌う声に応えて、アンコールはまずは千聖がステージに登場。「軽く余興を、やらせてください」という言葉に続けて、ギター・ソロを披露した。メタリックかつテクニカルなフレージングの応酬から抒情的な「TOP GUN ANTHEM」に移行する流れは絶妙で、ソロを終えた千聖に向けて客席から温かみに溢れた拍手と歓声が贈られた。
その後は誕生日を祝うライブにふさわしく、バースデー・ケーキのロウソク消しや記念写真の撮影などが行われた。続けて、千聖がマイクを持って「誕生日というと、20才の誕生日だったな…祝ってくれた本人は忘れているかもしれないけど、HAKUEIくんが当日突然家にやってきまして。HAKUEIくんと友達と、みんなでお祝いをしてくれたんだ。面白かったのが誕生日を迎えたお祝いをしてくれた友達が、みんな男だった。女性が一切いない(苦笑)。しかも、最後にSOFT BALLETの音楽を俺ん家で爆音でかけるんですよ。で、裸になった友達がそれに合わせて踊り続けるというのを見させられた(笑)」という思い出話を披露。くったくのない笑顔を浮かべるHAKUEIとO-JIROの姿も印象的で、メンバーの素顔に接することができたこのシーンはファンの方にとって忘れられない情景になったに違いない。
爽快感に溢れた「JUMP#1」とバラードの「Limelight」を聴かせたアンコールで配信は終了となったが、会場ではダブル・アンコールを実施。「自分達は、みんながいないと進んでいけない。これからも全力でロックンロールするので、着いてきてください」というHAKUEIの言葉と共に「天使よ目覚めて」が届けられた。爽やかかつエモーショナルなサウンドにオーディエンスは一体感に溢れたリアクションを見せ、終演後の場内は温かみのある空気に包まれていた。
アニバーサリー・イヤーの疲れなどを一切感じさせることなく、2日間にわたって上質なライブを披露してみせたPENICILLIN。今回の2デイズは両日でセットリストが大きく異なり、初日はアグレッシブな印象だったのに対して、2日目はエモーショナルな雰囲気になっていた。どちらも非常に観応えがあり、2デイズという形態を活かしてPENICILLINの魅力を余すことなく伝える手腕が光る公演だったといえる。
また今回のライブを観て、他アーティストと同じことをするのを嫌い、自分達の個性を押し出すことで生まれたPENICILLINの音楽は時代やジャンルを超える魅力を纏っていることを、あらためて実感できた。そんな彼らだけに、今後も目を離せない存在であり続けることは間違いなさそうだ。
Writer:村上孝之 / Photographer:折田琢矢
<セットリスト>
2023年10月7日(土)
SE
- Rosetta
- SOL
- CRASH
- 赤裸の境界
- No Control
- marionnette
- one star
- CROSS HEART
- prison
- still alive
- Japanese Industrial Students
- JULIET
- Desire or 快感∞フィクション
- NEW FUTURE
- Blue Impulse
En 1
- Gt Solo 〜TOPGUN ANTHEM〜
- Imitation Love
- Virginal
En 2
- FBMHL
2023年10月8日(日)
SE
- Time Machine
- 幻想カタルシス
- 記憶の固執 ~融けゆく時間~
- XXX
- 花
- one star
- prison
- Perfect_Flame
- still alive
- 透明人間バルサー
- 夜をぶっとばせ
- Rosetta
- Desire
- 快感∞フィクション
- fantasia
En1
- Gt Solo 〜TOPGUN ANTHEM〜
- JUMP#1
- Limelight
En 2
- 天使よ目覚めて