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【ライブレポート】摩天楼オペラ EVIL TOUR 2024 -1.14 NAGOYA DIAMOND HALL-

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2024年1月13日に幕を開けた摩天楼オペラ『EVIL TOUR 2024』。このレポートは1月14日に行われた名古屋公演の内容をお届けする。
その盛り上がりは凄まじく、メンバーも「ファイナルのよう」と称するほどだった。
摩天楼オペラらしい壮大な世界観、そして『EVIL』のダークで疾走感のあるナンバーにオペラー(摩天楼オペラファンの愛称)たちが酔いしれた。


月夜のように照らされたステージ。始まりは静かに、妖艶なテーマSEに合わせてメンバーが姿を表すと、歓声と共に多くの拍手が湧き上がる。苑(Vo.)がステージに立つと、期待感の高まりを肌で感じる。

「さあ行くぞ名古屋!」

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1曲目は新譜『EVIL』のタイトルナンバーで、開幕にふさわしい『EVIL』が鳴り響く。出だしから美しく、それでいて力強い高速ナンバーで、オペラ―たちをヒートアップさせる。美しく響く高音から、底から押し上げるような低音と幅広い音域で苑は高らかに歌い上げる。優介(Gt.)と彩雨(Key.)も一歩前へ飛び出しては、音色を重ね合う。

続く『終わらぬ涙の海で』はサイリウムが波寄せる海のように輝き、深い悲しみを纏った詞を鮮やかなメロディがすくい上げる。波打つように流れる音が世界観を型取り、繊細なフレーズの流れ、激しいメロディが美しく、同時に光を掴むような強さを生む。
『Anemone』ではより深く重く、会場は激しい折りたたみに揺れ、手拍子が続く。重厚感のあるリズムに、苑のハイトーンが響く。繊細さと大胆さを絶妙なバランスでまとめ上げた疾走感のある楽曲に、あっという間に摩天楼オペラらしい空間が作り上げられる。

「昔はここ(名古屋ダイアモンドホール)に立てるのは凄まじいバンドだと思っていたけど、今の自分たちならいけると思いました。」「皆さん、でっかい声聞かせてください!思いっきり行こうぜ!」
――苑

MCでの苑の言葉に応えるようにして、会場はさらに熱狂する。
赤い照明が照らす中、ファンは一斉に拳を突き上げる。ステップを踏み、舞いながら苑は煽り始める。妖艶に歌い始めた『舌』は鮮やかに、間奏では激しく、印象的なシーン変化で二面性を魅せつける。場面転換が見事な楽曲で、その中にも心地よい聴き心地があり、摩天楼オペラの演奏力、今まで培ってきた世界観に会場は酔いしれる。『零れ落ちていく未来』『赤い糸は隠したまま』とオペラ―待望の一曲に会場からは歓声が上がり、手拍子が鳴り響く。メロディの良さの中に優介のテクニカルで美しいギターソロや合いの手を添えるような燿(Ba.)のベースやソロパート、彩雨のシンセソロや煌びやかなフレーズ、楽曲全体を支えつつも前に出てくる響(Dr.)のドラム。5つの異なる個性が生み出すサウンド、その目に映るパフォーマンスは、五感の全てが研ぎ澄まされるような説得力がある。

「名古屋―!上げていこうぜ!」

苑の一言から始まったのは、イントロのディレイが印象的なギターリフから始まる『誰も知らない天使』。光と闇の交差する、ビリビリとした緊張感を肌で感じる。きらびやかに伸びるメロディと震える声のハーモニーが美しく、抑えきれぬ衝動のまま、会場からは自然と拍手が湧き上がる。

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そして会場の熱を保ちながら、新たな風が吹き込む。儚いギターのアルペジオと苑の切なげな声が印象的な『桜』。暖かくもどこか寂しさを感じさせる1曲に、空気が張り詰める。バラードの中にも摩天楼オペラらしい透き通るような旋律が響き渡り、会場を照らすさくら色の光が会場を染め上げ、オペラ―の姿も満開の桜のごとく鮮やかに咲き乱れていた。

凛とした空気を打ち破り、『Apocalypse』では雷のような疾走感。熟練プレイヤーで構成された摩天楼オペラのスキルが存分に発揮されるこのインストゥルメンタルが世界を眩しく塗り替える。彩雨の高なるシンセソロと掛け合いを繰り返す優介の見事なフレーズ、泣きのソロが会場を駆けめぐる。瞬きすら許さない程の圧巻のパフォーマンスは生で観るからこその迫力を持ち、摩天楼オペラの持つ技術力の高さをより一層際立たせる。摩天楼オペラから”啓示”されたメロディにファンからは割れんばかりの歓声がどこまでも響き渡った。

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勢いもそのままに、疾走感のあるナンバー『S』が幕を開ける。S(スピード)の名の通り、閃光とともに駆け抜ける。決して立ち止まることなく命を燃やすように美しく、今この瞬間を輝かせる。
続く『Libra』。光に照らされ、感情の微かなゆらぎを美しい音に乗せる。堂々とした佇まいで奏でる音は神々しく、5人の影が浮かび上がる。今回の新譜EP『EVIL』は人の悪意に焦点を当てたものだが、その妖しい世界観から、罰というには美しすぎる旋律『悲しみは僕への罰』へ。イントロの激しさとは裏腹に、しっとりとした歌い出しから始まる。透き通った歌声は美しくも儚く、感情をかき乱すような圧倒的な演奏には誰もが息を呑み、その世界に没入していく。

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そして静寂とピリピリとした緊張が会場を包む中、ピアノの音が沈黙を破る。満天の星空の包み込むような優しい輝きを放つ『流星の雨』。流れ星のように会場をかける照明が光り輝き、何か最後に救われたような気持ちにさせてくれる。
星の光が静かに闇に溶けると、「そばにいられなくていい…」そんなもの寂しげな言葉から始まった、苑のアカペラが印象的な『真っ白な闇がすべてを塗り替えても』。魂を震わせ、力強くも儚い声が響く。優介と彩雨のソロの掛け合いに続くユニゾン、そして燿のベースソロなど楽器隊の活躍も目立つ。息のあったコンビネーションは、音源を聴くだけでは感じられない、ライブならでは迫力と魅力に満ち溢れていた。心臓を掴まれるような衝動、電流が走るように感覚が研ぎ澄まされ、全身でその音を感じ取る。光に包まれた会場は、まるで曲の中に迷い込んだように美しく白く染まった。

「ラスト!」

苑が高らかに宣言する。本編最後を飾る『光の雨』。そしてこの曲は『EVIL』のロングインタビューをさせてもらった際に、この作品のエンディングテーマとなる、と苑は語っていた。まさにラストにふさわしく、全てを包み込むように壮大で、雨のように音を降らす。苦しくとも生きることを選んだ命の美しさを表現する、焼けるような衝動。感情的で激しいメロディに会場は揺らぐ。後のMCでは彩雨も「見えない銀テープが飛んだよね」と振り返る、最高のツアーファイナルを予感させる光景が目に浮かぶ程であった。

圧巻のパフォーマンスで駆け抜けたライブだが、オペラーの熱はまだ冷めない。
会場から沸き起こる「アンコール!」の声に応え、再び幕が開く。アンコールでは、メンバー5人の楽しい談笑で会場の雰囲気が温かいものになった。そんな中、燿の提案で始まる響のドラムソロ。

「名古屋行けんのかー!」

掛け声に続けてダイナミックなプレイが繰り出される。畳み掛けるドラムのテクニカルフレーズにオペラーも負けず食いついていく。アンコールを前に会場のボルテージがヒートアップする。
熱を保ったまま、『Curse Of Blood』のイントロから繰り出される優介のハードなフレーズと響のツーバスが激しく暴れ、鮮やかな血潮弾けるリズムにオペラーたちが髪を振り乱す。苑はマイクを観客に向け、燃え上がるような叫び声を拾い上げる。色っぽくもヘヴィな歌声と、華麗な指さばきで響かせる旋律が重なり合い、会場の熱気は更に渦を巻く。

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『Adult Children』『ANOMIE』とより情熱的にギラギラと、衝動のままに曲を奏でる。どくどくと音が全身を駆け巡り、その鼓動に突き動かされるように皆は拳を掲げる。しかし、激しさの中に生まれるハッとするような一瞬の煌き、静と動の絶妙な反転、綿密に作り込まれたメロディを聞き逃すことはない。ほんの僅かな空気の変化を肌で感じ取り、その瞬間に誰もが酔いしれ、最後には割れんばかりの歓声に包まれる。

対照的に『翠玉のワルツ』はその名に相応しいエメラルド色の輝きの中、神々しくその輪郭を照らし出す。深い影を落とすような低音から、光り輝く宝石のような凛とした高音まで色鮮やかに、祈るような歌声が響き渡る。

それでも尚鳴り止まないダブルアンコール。苑の「歌えますか?歌おうか名古屋!」に歓声で高らかに応えるオペラーたち。名曲で彩られた名古屋公演を締め括ったのは圧倒的な人気を誇る「GLORIA」。苑がオペラ―に呼びかけると、サビでは会場一体となり、全員で作り上げる曲は輝きを増す。優介のギターソロはステージ中央で華々しく、響も思わず立ち上がり、力強くオペラーたちの声に応える。これぞ完成されたオペラだと言える、素晴らしき音の祭典は最高潮のまま幕を下ろした。

そして、2月12日には東京 EX THEATER ROPPONGIでいよいよツアーファイナルを迎える。東名阪の3本のツアーの中でも常に進化を続けてきた摩天楼オペラ。その勢いは留まることを知らず、より高みへと向かう彼らの雄姿をぜひ会場で感じてもらいたい。

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Writer:藤村栞里 / Photographer:Mao Hashimoto

<セットリスト>

2024年1月14日(日)
SE(EVIL Opening SE)

  1. EVIL
  2. 終わらぬ涙の海で
  3. Anemone
  4. 零れ落ちていく未来
  5. 赤い糸は隠したまま
  6. 誰も知らない天使
  7. Apocalypse
  8. S
  9. Libra
  10. 悲しみは僕への罰
  11. 流星の雨
  12. 真っ白な闇がすべてを塗り替えても
  13. 光の雨

 En 1

  1. Curse Of Blood
  2. Adult Children
  3. ANOMIE
  4. 翠玉のワルツ

 En 2

  1. GLORIA

<関連リンク>
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