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【ライブレポート】defspiral tour 2024 “ULYSSES” – 5.11 柳ヶ瀬ants –

defspiralの実に7年振りとなる新アルバムを引っ提げた全国ツアー「ULYSSES」。それは、日を追うごとに勢いを増し、新たな物語を描き続けてきた。
この日彼らが舞い降りたのは、岐阜県は柳ヶ瀬ants。実はこの場所、昨年8月のTHE MICRO HEAD 4N’S との2マンツアー「9BALL GAMES -4th-」でTAKA(Vo.)が体調不良で欠席という事態に陥ったこともあり、念願叶ってのリベンジ公演となった。
久しぶりの全国ツアーで数年ぶりに訪れた土地もあったが、どの公演もファンは暖かく出迎えてきた。「地方」と言ってしまえばそれまでだが、ライブとは場所やキャパだけで計り知ることは出来ない。前日の名古屋公演の余韻をそのまま引き連れたような熱気に包まれた会場は、程よい緊張感と期待に包まれる。ツアー終盤、更に進化を遂げた岐阜公演。
彼らの描いた旅路の記録を是非感じてもらいたい。

なお、こちらのライブレポートはdefspiral tour “ULYSSES”のセットリスト・演出についてのネタバレを含むため、これからツアーに参加予定の方はご注意を。

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OP SEはピアノの繊細なメロディから、本のページを丁寧に開くようにして物語は幕を開ける。
暗闇に光が差し込み彼らを呼ぶ音は、不意に赤い瞬きと轟音に遮られる。痛々しく、悲しみを誘うようなツアー序盤には無かった爆音。それは、より深くULYSSESの真髄に近づくような予感を孕む。彼らはその闇の中に姿を表す。ギターの音が空間を切り裂くと、闇は一瞬静寂に包まれる。
TAKAの吐息が、会場全体にビリビリとした緊張を走らせる。歌声が、世界に色を落とす。
始まりはアルバムを代表する楽曲『ULYSSES』だ。重低音を響かせ胸の奥まで響くメロディに、ファンは思い思いに体を揺らす。
サビでは鮮やかに、4人の音に共鳴するように光に照らされた世界へと手を伸ばす。華やかなドラムに、ギターのメロディが鮮やかに伸びる。ベースの低音が印象的に形を作ると、物語は動き出す。闇を切り裂いて、その声を遠く、遠く響かせた。

続く曲は『VIVA LA VIDA』。雷鳴のように激しい光のトゲが会場を突き刺す。MASATO(Gt.)も前へと乗り出し熱いギタープレイを見せつけると、色鮮やかに染まる景色に誰もが熱狂する。RYO(Ba.)も前へと並び立ち、音を響かせる。全てが一瞬のように過ぎ去る中、TAKAの咆哮は余韻を残しつつどこまでも強く伸びる。
会場のテンションは既に最高潮へと高まりを見せ、それを更にかき乱したのは、ライブでも定番の一曲『PULSE』だ。RYOのベースがずんずんと会場を揺らすと、会場中から歓声が上がる。
MASATOのギターは熱く、鮮やかに高音を輝かせる。和樹(Dr.)もリズミカルに、”どくどく”と鼓動のように音を刻む。重なる音は会場全体を包み込み、まるで大きな一つの生き物のように空間は揺れる。その熱狂に呼応するように、TAKAは吠える。何度も何度も「愛し合おう」と言葉は歌詞を飛び越え、互いの存在を強く確かめ合うように響く。
ただ激しいだけじゃない。彼らの描く楽曲は回を重ねる度に美しく色づき、訴えかける言葉も更に重みを増してゆく。

そのまま、イントロに合わせて華やかに、一斉に手拍子を弾けさせる『FLASH』へと繋がる。一体感のある会場に4人は顔を綻ばせ、リズミカルに軽やかに音を揺らす。
曲名を体現するように鮮やかな光が何度も瞬く。TAKAとRYOは向かい合い、音を重ね合う様はまるで会話をするようにシンクロする。4人の音は互いに共鳴し合い、その日限りのリズムに言葉を送る。ライブでしか味わえない、生だからこその臨場感がここにはあった。重厚で美しく、しかし、繊細にひらひらと言葉は舞う。最後は静かに、消えるように余韻を残しながら沈みゆく光に、思わず息を呑んだ。

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TAKA(Vo.)

更にここで火を付けるように続くのは『PARADISE』だ。ツアー中盤からはセットリストを大幅に変えてきていたが、ツアー前半とも重なるこの展開は完全に想定外。しかし、より深化したパフォーマンスはこれまでとは全くの別物だ。ツアーを重ねる度に得てきた輝きを、ここで更に全ての曲へと与えてゆく。この予測できない瞬間こそが今ツアーの醍醐味。どの曲もツアーには不可欠で、それぞれ異なる魅力でULYSSESの世界に色を乗せてゆく。色鮮やかに、感じるままに、思いのままに花を咲かせる。
TAKAとMASATOは肩を並べ歌い、奏で、観客は大きく飛び跳ね、互いを求めるようにして会場を沸かす。
ここまでの怒涛の勢いに、会場の熱は常に上がり続けていた。

「めちゃくちゃになって帰ろうぜ!忘れられない夜にしましょう!」
――TAKA


ここで世界はガラリと色を変える。RYOの印象的なベースソロから始まる『ARCANA』だ。指先から奏でられる繊細で重厚なサウンドに、和樹のドラムが突き刺さる。
一転して暗く、深い緊張感の走るイントロ。MASATOのギターも勢いを増し、ビリビリと空気を震わす。密やかな闇の世界は、美しく赤い光の中に4人の姿を浮かび上がらせる。楽器の音が共鳴し、TAKAの咆哮が確かな輪郭を伴い浮かび上がる。バチバチと燃えるように瞬き、儚くも美しい闇の中で音が光る。
そして特筆すべきは、ラストのギターだ。新たに組み込まれたサウンドは、翅(はね)の音の如く密やかに美しい。
闇夜に鳴り響くギターは、消え入る瞬間までも艶やかに、『夢見る蜉蝣』へとバトンを託す。

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MASATO(Gt.)

ドラムのリズムに合わせながら、ベースは妖艶に空間を揺らす。楽曲の関係は更に密になり、アルバムでは感じ得ない、これがライブだ、ロックだと言わんばかりのアンサンブルに、思わず鳥肌が立つ。TAKAの歌声も滑らかに、しっとりとした質感を持って会場を柔らかに撫でる。指先の神経まで張り詰めた美しく繊細なパフォーマンスには思わず目を奪われた。
間奏でのTAKAのシャウトは、まさに魂からの雄叫びだ。MASATOの背中に身を預けるTAKA。信頼し合えるパートナーのリズムに酔いしれながら、会場の雰囲気に身を委ねてゆく。
今この瞬間を確かめ合うように、場一体となって踊る。

歓声と拍手が鳴り止むと、会場は再び闇に染まり、緊張した面持ちへと切り替わる。
大気を切り裂く広大な星の輝きが降り注ぐ。前日の名古屋公演から新たに披露された『MOBIUS』のアレンジver.だ。MASATOのギターが彩る、雄大な、優しく触れる温かみを持つ音に会場は息を呑む。TAKAの歌唱力は何倍も輝きを増し、神々しく、ファンの心の奥にゆっくりと染み渡っていた。
続く『光の世界』は儚くも美しく、滑らかにギターが光る。TAKAの歌声が重なる印象的な導入もこのツアーで進化してきた見どころの一つ。導かれるようにして、青い照明が瞬く。その輝きは、雨のように降り注ぐ。優しく世界を包み込み、悲しみを全て洗い流す音楽に耳を澄ます。

――世界は まだ美しい

ここにいる一人ひとりへと呼びかける歌声に胸を打たれた。彼らの彩る世界は優しく、我々の心を照らす道標となる。
ギターの音が消える瞬間まで、皆は息を呑み見守っていた。
そこから繋がるのは『明日への階段』。暗闇から圧倒的な質量を伴って、音が空間を支配する。地鳴りのような、雷のような輝きが世界を照らす。

サビではステージも鮮やかに、魂からの咆哮はビリビリと空間を震わし闇を切り裂く。TAKAは眼光鋭く暗闇から上へ上へと手を伸ばす。圧倒的な美しさに会場からは大きな歓声が上がり、メンバーを呼ぶ声が響いた。

赤と青の光に照らされる中、続く曲は『HALO』。ツアー前半を支えてきた一曲が、再びここで輝きを増す。これまで進化し続けてきた彼らは、さらに新たな息吹をもたらす。
伸びやかに、言葉は歌詞を、音楽を超える。魔法をかけるように輝き、歌う度に形を変え、この日のためだけに与えられた言葉が宙を舞う。
その眩しさに会場からは大きな拍手が送られる。

MCでは前回の2マンのリベンジ、そしてメンバーへの感謝を伝えると、「再び来れて良かったです!」とTAKAは喜びを震わせる。
そしてライブは後半戦へ。前回のツアー「Butterfly Euphoria」の中で生まれた一曲『EUPHORIA』だ。既にライブでは定番となった手拍子も軽快に鳴り響く。メンバーも先導するように勢いよく前へと並び立つ。

――この目に映る 全て愛おしい

この瞬間を目に焼き付けるように、言葉通り会場全体を見渡し、RYOのコーラスも美しく曲を彩る。
彼らの楽曲は時に、音楽を超える。サウンドは自由に言葉を乗せ、ファンと対話するようにして鳴り響く。

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RYO(Ba.)

「I want you !」

間奏ではTAKA渾身の一言。その言葉に応えるようにして、手拍子は続く。MASATOとRYOが並び、互いの音を響かせる。鮮やかな照明が、どこまでも光を伸ばしていく。
リズミカルに、魔法の花を探す旅へと誘うのは『ALEGRiA』。ULYSSESの物語が生まれるきっかけでもあったこの曲は、今ツアーでも存在感を発揮し、様々な世界を共に旅してきた。

歌詞に合わせた、「胸の奥、刺さったままのトゲを溶かす」パフォーマンスは、今までほとんどがTAKAはMASATOに向き合い、MASATOも応えるように体を預けてきた。しかし、この日は初めて、客席に向けてTAKAは手を伸ばす。これまでに無かった演出に誰もが目を奪われる。彼らのライブは、隠し持った痛みさえもそっと優しく溶かしてくれる。
パッと花が開くような、眩しく華やかなドラムが音を響かせると、ファンもその音に合わせて一斉にジャンプ。彼らの曲は一方通行ではない。ファンの心と直接対話をするように、ライブを通じて、言葉を投げかけ寄り添い続ける。無我夢中で、皆はこの楽園で踊り明かしてゆく。

更に会場は勢いを増し、続く曲は『MASQUERADE』。RYOがベースを掲げリードすると、皆は曲に合わせ飛び跳ねる。
眩い光に照らされ、開場は花のように色づくとミラーボールは欲望のまま回る。メンバーはステージ上で揺れ、舞い踊る。ギターソロも伸びやかに、TAKAの歌声が観客を熱く燃え上がらせていった。

「ありのまま、思いのまま、歩いていきましょう。生きていきましょう」
――TAKA


その言葉に導かれる曲は『流星』。まるで流星群のような無限の輝きを放つ繊細なメロディから繰り出される、情熱的な歌声に誰もが引き込まれてゆく。星が瞬くようにドラムは弾け、音楽は鮮やかに降り注ぐ。心のままに、真っ直ぐなTAKAの言葉が会場全体を駆け抜けてゆく。重なるサウンドは激しく輝きを増し、胸に届く。4人の光はライブを重ねる度に加速し、更に強くなり、旅路を照らし続ける。
ライブの終盤を飾るのは、『SATELLITE』。

――君の軌道上を 今、回り続ける

この瞬間を確かめ合うように、今最もふさわしい言葉へと曲は形を変えた。慈しみ噛みしめるようにして、この空間を共に創り上げてきた会場全体を見回す。音を奏で、共に集まった人々を祝福するように手を伸ばす。TAKAの歌声に導かれるようにして、命は煌めく。
そして、この旅を締めくくるのは『月の荒野』。一転して重厚感のあるメロディが会場を包むと、赤い光が4人のシルエットを映し出す。
これまでの鮮やかに照らされた道とは対象的に、その先は闇に溶けそうな孤独を感じる。ビリビリと緊張感のある闇を照らすのは、遠い月の光。その輝きを頼りに進む音は、決して我々を1人にしない。闇の向こうへと進む勇気を与える曲は寄り添うように優しく輝いた。
最後は力強く堂々と、彼らの世界を華やかに象ってきたドラムで締め括る。会場からは大きな拍手が送られた。
ED SEもツアー中盤から深みを増し、冒頭の、始まりを予感させるキラリと光るメロディを携えて幕を下ろす。それは、本を閉じるような心地よい余韻を残しながら、再びその世界へと誘うような魔力を秘めていた。

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和樹(Dr.)

空になったステージに、彼らを求める声は鳴り止まない。再びステージに光が灯ると、会場は大きな拍手で出迎える。
アンコール一曲目は『MELODY』。久しぶりに披露される曲に、会場の温度が上昇するのが伝わってきた。思い思いに体を揺らし、その言葉に耳を傾ける。
当たり前の日常は揺らぎ、彼らも同様に悲しみや痛みを背負いながら、その痛みに寄り添い、音楽と向き合い続けてきた。この場所に集まった全員に手を伸ばし、想いは歌となり胸を打つ。
ファンも応えるように手を伸ばし、感じるままにその言葉を受け取った。今日という日にふさわしい一曲がこの夜を駆け抜けていった。
一転して、リズム隊からギターへ繋がるイントロで始まった『RESISTANCE』。MASATOのギター、RYOのベースが重なるイントロは激しく、その先の爆発を予感させる。
TAKAの咆哮がこだまする。激しく、ギラギラと瞬く照明は鮮やかに。その眩さに応えるようにして会場は湧く。

ULYSSESの世界とは一線を画す、アンコールでは何が飛び指すかわからないサプライズ感溢れる演出も今ツアーの楽しみだ。彼らの描く世界は変幻自在に形を変え、その日限りの輝きを放つ。
RYOのソロに開場は湧き、続くMASATOのギターソロは切り裂くように鮮やかに響く。和樹のドラムも力強く重なり、4人の持つパフォーマンス力を遺憾なく見せつける。
爆発的なエネルギーはまさに命の輝き。それは最初から衰えることなく、力強くどこまでも鳴り響く。
イントロから待ってましたと言わんばかりの手拍子で出迎えたのは『IRIS』。青い照明が優しく照らす中、ファンは手を上げ一斉に飛び跳ねる。メンバーも会場全体を見回し、ここに集まった全ての人と出会えた喜びを分かち合う。軽やかに宙を舞い、美しく響くメロディは彼らを祝福するように鳴り響く。奏でる音、映る景色を噛み締め逃さないように、会場を見渡す。

「ありがとう!」

何度も何度も、TAKAはその言葉を確かめるように繰り返した。

2度目のアンコールは今ツアーでも定番の『LOTUS』。実はEUPHORIAともシンクロする部分を持つこの曲もまた、ツアーには必要不可欠な一曲だ。
曲に合わせて手拍子をもとめるイントロ、鮮やかに世界が色づくとジャンプで応える。TAKAの歌声にMASATO、RYOのコーラスが美しく重なり、ずんずんと心臓が跳ねるようなドラムに思わず体が揺れる。最後まで命を燃やし、辿り着いたそこはまさに、楽園に他ならない。
RYOのベースが“ズゥン”と印象的に空間を揺らした。

――いつまでも共に咲かせ続けよう

その言葉を、長く遠く響かせる。最後のTAKAの雄叫びは美しく、皆の胸の奥に暖かく染み込んでいった。
大歓声の中4人はステージを後にすると、会場からは不意に「ありがとう!」と声が上がった。この日を心待ちにしていたファンからの熱い想いに思わず胸を打たれた。
今日という日を終えてもULYSSESの物語はまだ終わらない。昨日より今日のライブ、と意気込んできた4人のパフォーマンスは進化し続け、常に新たな輝きを見せる。彼らのライブは無限に形を変え、2度、3度…それ以上に、何度も足を運びたくなる魅力に溢れている。その変化は是非、自身の目で確かめてもらいたい。 そしてツアーファイナル、誰も見たことのないdefspiralが待っていることを期待している。

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Writer:藤村栞里 / Photographer:タカギユウスケ(@yusuke_mphoto)

<セットリスト>

  1. ULYSSES
  2. VIVA LA VIDA
  3. PULSE
  4. FLASH
  5. PARADAISE
  6. ARCANA
  7. 夢見る蜉蝣
  8. MOBIUS the Basement
  9. 光の世界
  10. 明日への階段
  11. HALO
  12. EUPHORIA
  13. ALEGRiA
  14. MASQUERADE
  15. 流星
  16. SATELLITE
  17. 月の荒野

 En 1

  1. MELODY
  2. RESISTANCE
  3. IRIS

 En 2

  1. LOTUS

<defspiral tour 2024 “ULYSSES”>
5月18日(土) 仙台spaceZero
5月19日(日) 郡山CLUB #9
5月23日(木) 初台DOORS(振替公演)
5月26日(日) 赤羽ReNY alpha
受付URL:https://eplus.jp/defspiral2024/4

<関連リンク>
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