心揺さぶる衝動、照らしあう未来へ。
種は芽吹き、やがては大輪の花を咲かせるはずだ。10月半ばまで続く[ΛrlequiΩ LIVE TOUR2024「SEEDS chapter2.」]の最中にニューシングル『回る球体 幼気な子 救いはみえない』を発表したうえ、10月26日にはSpotify O-WESTにて[ΛrlequiΩ 11th Anniversary Live「声息」]を開催するΛrlequiΩ。いま彼らは大きく躍動している。
——10月半ばまで[ΛrlequiΩ LIVE TOUR2024「SEEDS chapter2.」]が続いている中、先日は8月12日のF.A.D YOKOHAMAにてライヴを拝見させていただきました。当日のMCでは暁さんが「今日でちょうど折り返し地点」と発言されておりましたが、まずは現段階での今ツアーに対する手応えについて教えていただけますでしょうか。
暁 どうやったらもっと面白くなるだろう?っていうことを、1本1本ごとに試しながら毎回のフィードバックを受けて着実にアップデートをしていけてるんで、ここまでやってきた半分はどこも「今日は微妙だったね」みたいなの無いツアーになってます。
——なんでも、日々セットリストもカスタマイズされているのだとか。
暁 うちは歌モノもあるし、メタルもあるし、歌謡もあるしで、けっこうなんでもアリなライヴになっちゃいがちではあるんですけど、今こそもっと尖った部分や衝動的な部分を強くしたいよねっていう気持ちがバンドの中で強くなって来てるんですよ。毎回ただ楽しくやれれば良いっていうことではなく、ちゃんと目的を持ちつつ積み上がっていってるものを感じられてるツアーになってるところが良いなって思います。
祥平 毎回ライヴが終わると、その日のうちに定点で撮った記録映像をチェックして、ライヴの流れもそうだし、自分の動きひとつをとっても「次はこうしよう」っていう風にブラッシュアップしていくテンション感でやれてるツアーで凄い充実はしてますね。
來堵 今回のツアーの中で重きを置いてるのはやっぱ勢い的な部分なので、凄く刺激的なライヴを毎回やれて来てる実感は強いです。だから、何時どこのライヴに来てもらってもその時点での120%な俺らを感じてもらえるツアーになってると思いますよ。
奈緒 同じ内容の公演はしない、っていうことを実践出来てるのが今回のツアーだと思います。セットリストやその日ごとの流れは、今まで暁が主体になって考えていたんですけどね。今回はそこをメンバー全員で話し合いながらやっていく態勢になってて、これまでにはなかったセットリストが生まれて来てるのがなんか新鮮なんです。
——ちなみに、バンド全体でライヴごとにミーティングをするようになった切っ掛けは?
奈緒 飽きてきたんじゃないですかね(笑)
暁 セトリの固定化って、慣れて行くから単純にライヴのクオリティ自体は上がるんですよ。だけど、慣れと飽きはけっこう紙一重で(笑)。つまり、うちは何でもアリなバンドだからこそ「今はさらに攻撃的な部分に特化させたいよね」っていうモードに切り替えたんです。そして、最初にそのことを言いだしたのは奈緒でした。
奈緒 ライヴメイクをするのはフロントに立つヴォーカリストなんだから、セットリストや流れは暁がやりたいようにすれば良いってこれまで思ってきたところがある反面、どこかで「今のままでも全然悪くないけど、ちょっと飽きも出てきたかな」って感じてたのは正直なところだったというか。このタイミングで全員の考えをライヴに反映させて、みんながめっちゃ満足するところまで行き切りたいなと思ったんです。特に楽器隊と暁では捉え方が違ってて、暁からすると歌のことを考えて少しセーブしたり、むちゃくちゃなことまではやらなかったりするところがあると思うんですね。だけど、今回のツアーでは敢えてそこも「行くとこまで行ったろうぜ!」っていう姿勢で挑戦したかったんですよ。
——そういえば、先だってのF.A.D YOKOHAMA公演では暁さんが場内に2回ほどウォールオブデスを作りだした場面があり、いずれもフロアの最後方まで走り寄ってきていらしゃいましたよね。あげく、勢いあまったかのようにPA卓にまでよじ登ってみせたり。
暁 行けちゃう距離感だし、後ろの人と目合わせに行こうかなっていう。そしたらPAさんと目が合っちゃって(笑)。
その日によってとか、ライヴハウスの造りによってもどういうパフォーマンスになるかは違ってきますけど、今回のツアーでは最近になってΛrlequiΩのことを知ってくれたらしい人たちや、男もめっちゃ増えてきてるなっていうのが実感として凄いあって、みんなの反応をみてるとやっぱ嬉しいんですよ。そうなると、こっちのテンションも自然とアガっちゃいますからね。ああいうのはほんと、自分の中の衝動的な部分が最も出てる瞬間やと思います。
多分、こっちの心が動いてる時っていうのは観てる側の心も一緒に動くんだと思う。
——実際に、F.A.D YOKOHAMAでは暁さんがフロアに降りてきたところで近くにいた男性ファンたちが一様に爆アガりしている光景を目にしたのですけれど、ここに来て新規ファンが増えてきているというのは、諸々のフェス出演も大きく作用していそうです。
暁 だったらいいなぁ。もともとよく知ってたわけじゃないにしてもフェスとかイベントで観てカッコいいと思ったから来てくれた、みたいな人は一定数いるのかなぁ。俺らとしては、別にどこでやったとしても自分たちの思うヴィジュアル系っていうものを明確に提示してるつもりだし、それをヴィジュアル系のファンだけに観てもらえば良いとも思ってなくて、誰が何処から観てもカッコいいヴィジュアル系でいたいだけなんですよ。もしそういう気持ちがちょっとずつでもいろんな人たちに届き始めてる状況があるんだとしたら、そこは素直に嬉しい。
——ところで。ある時期から暁さんはライヴで「世界の終わりと夜明け前」を歌われる最に〈照らせよ 照らせよ〉の部分を〈照らそう 照らそう〉と歌詞を替えるようになっていたように思うのですけれど、F.A.D YOKOHAMAではさらに〈照らしあおう〉というフレーズも加えられていて、さらに変化していたのがとても印象的でした。その変化が生まれたのは何時ごろからのことだったか覚えていらっしゃいますか。
暁 あれはわりと最近。俺はちょくちょく歌詞は替えたりしますけど、言うたらあれは遊びみたいなもので大枠で言いたいこと自体は変わってません。そこも言って見れば衝動的なものに近くて、その時のリアルタイムな視点が反映されてるということなんだと思いますよ。結局、そこはライヴに対する手応えの話とつながってる話ですね。今こうやって俺たちが新しい挑戦をしだしてることに対して「カッコいい」と思って応援してくれてるみんなの声や想いは、確実にこのバンドを動かす大きな力になってくれてますから。そういう中で自然と出て来たのが、あの〈照らしあおう〉なんですよ。
——そう考えますと、今回の「SEEDS chapter2.」では種がいよいよ芽吹きはじめるフェーズまで進んだとも言えそうです。
暁 何かに飢えてたり、何かを欲しがってる人たちの気持ちと共鳴しやすいし、共有しやすいところがあるんだと思います。ΛrlequiΩのライヴには。今回のツアーではそこがさらに浮き彫りになってきた感はありますね。
——そうした中、ツアー終盤となる9月18日にはニューシングル『回る球体 幼気な子 救いはみえない』がリリースされます。既にツアー初日から表題曲を披露されているとのことですが、現状オーディエンスの反応についてはどのように感じていらっしゃいます?
暁 意外と良いです(笑)。この「回る球体 幼気な子 救いはみえない」は、透明感があって、切なくて、という雰囲気の曲なんでね。いわゆるわかりやすいタイプの曲とはちょっと違うから、悪く言えばライヴでのリアクションに関してはそんなに期待してなかったんです(苦笑)。でも、やってみたら反応良かったですね。このあいだバグサミでやった時も「あの曲、いいね!」って凄く周りから言ってもらって。「あ、ちゃんと届くんだな」ってわかったんです。だから、俺も「ひねくれんのやめよう」って思えました(笑)
——「回る球体 幼気な子 救いはみえない」を作曲されたのは祥平さんです。この曲を作られる際、そもそもはどのようなヴィジョンを持っていらしたのでしょうか。
祥平 イメージしてたのは夏、でした。シングルのリード曲になることを想定していたところはなかったですけど、メロ自体は透明感もある良いものをつけられたなという自信があったんで、このタイミングで音源として出せることが嬉しいし、今ライヴでやっていても凄く良い感じでやることが出来るんですよ。
來堵 今回のツアーだとこの曲は本編最後をきっちりと締めくくってくれる存在になっていて、間違いなくこのツアーが見えるような1曲になってると思います。
奈緒 聴き手を選ばない曲になりましたね、これは。そして、今は毎回本編ラストでやってますけど、今後もいろんな使いどころで活躍してくれる曲になっていく気がしてます。
——「回る球体 幼気な子 救いはみえない」というあたかも小説のようなタイトルと、この歌詞の内容については暁さんから少し解説をいただけると嬉しいです。
暁 デモは前の選曲会の時からあったもので、夏をイメージした曲だっていう話から夏のツアー、リリース時期含めタイミングにぴったりだなって所から始まって。
祥平 実は、デモ段階の仮タイトルが「蝉」でしたからね。地上に出てきちゃうとちょっとしか生きられない、蝉の儚さの部分をイメージしながら作った曲だったんです。
暁 夏で切なくてだったら、別れの詞にしようかなとも思ったんですけど。でも、それだと話が終わっちゃうでしょ。だから、テーマは別れと再会にすることにして、そこからストーリーを拡げていきました。苦しんでる場面と前に進もうとする場面の両方を描きたかったし、曲の持ってる透明感を保ったまま切なさを滲ませる歌詞にしたかったんです。
——ただ、この「回る球体 幼気な子 救いはみえない」というタイトルから別れと再会の物語を想像するのはなかなかの難易度です。
暁 ですよね(笑)。タイトルに関しては一番気になるだろうなって所を歌詞から抜き出しました。
——なお、シングル『回る球体 幼気な子 救いはみえない』にはカップリング曲も収録されておりまして「ダイバーダウン」は來堵さん作曲となりますね。
來堵 これは自分の聴いて来てるいろんな音楽の中から、ΛrlequiΩに新しい要素を持ち込みたいなと思って作った曲なんですよ。海外のいろんなバンドの特徴を、自分なりにごちゃごちゃにミックスしたらこうなりました。感覚的にはダルい感じの音が好きなんで、ギターもファズでわざと潰してます。あと、そこに奈緒がアレンジを足してってくれたことでタイトなエッジ感も加わったんで、バランス的にはさらに良い塩梅になりました。
奈緒 來堵が「軽くノれる浮遊感のあるダンスナンバーにしたい」っていうことを言ってたんですよね。ただ、そうするには歌やメロとのかねあいもあってキー調整をする必要があったんですよ。本来オケのキーを3度下げていこうと思ってたところを、逆に1オクターブ上げるっていうことをやってみました。オケまで下げちゃうと、重くなり過ぎて浮遊感が消えちゃいますから。あとは歌のキー自体は変えずに整合性をとるためには、ドラムパートをハードにする必要もあって。ベースもわりかしカチカチした音にしてます。
祥平 当初はヘヴィチューンになるのかと思ってたんですけど(笑)、紆余曲折を経て間の取り方を大切にしたプレイを意識したり、曲全体のイメージを重視した音を出していくことで、この完成形はやっぱ浮遊感のあるダンスチューンの方に寄っていったんですよ。結果的には良いとこ取りが出来ましたね。凄くいい着地点にいけたなって思います。
——浮遊感といえば、この「ダイバーダウン」では歌詞にもそれがあふれていませんか。
暁 書き方がちょっとこれは特殊で、曲を聴いた時に家をふらーっと抜け出して夜の街を散歩してる光景が思い浮かんだから、実際に夜ウロウロしながら書きました(笑)
——それから、もう1曲のカップリング「白紙の手紙」は奈緒さんの作曲作品ですね。
奈緒 ライヴでMCのあとにバラードをやった時、そこから後半に向けてたとえば「ラズルダズル」とか「Eclipse」につながるような、その間のグラデーションの領域を作れる曲がうちにはないんで、最初はそこを埋められる曲を作りたいなと思ってました。でも、元をたどったらこの曲で最初に弾いてるアルペジオは自分の持ってる手癖フレーズのひとつだったんですよ。そこを軸にしていくことで、曲としては熱量の高いパワーバラードになっていきましたね。さらに、そこにお洒落な音とかモダンな音もちょこっとずつ入れ込んでいくことが出来ました。わりとヒップホップのトラック的な捉え方で作った部分もあります。メロにはチル要素もあるし。それもあって、この曲の詞を相当“詰めて”ます。暁に対してはそうオーダーしましたね。あとは歌い方で色を出していきたい、っていうことも伝えました。
暁 この曲はねぇ…僕的にクリアしなきゃいけない点がとても多かったです。それと同時に、こういう新しい方向性を打ち出した曲の中にΛrlequiΩとしての血をちゃんと通わせるには、言葉として自分にとってのリアルを落とし込む必要もあった。
——しかも、詞に“再会”の意味合いが含まれる点では表題曲とも繋がっているのですね。
暁 はい。「ダイバーダウン」は探してる途中で、「白紙の手紙」も再会を描いてます。
——さらに、「白紙の手紙」には[ΛrlequiΩ LIVE TOUR2024「SEEDS chapter2.」]をはじめとしたΛrlequiΩのライヴに来たことがある人ならば必ず耳にしたことがあるであろう、暁さんの言葉“また生きて会いましょう”も織り込まれています。
暁 それを入れた方が再会というテーマも、ここに込めた想いも、より伝わりやすくなるかなと思って。昔はもっと破滅願望が強くて「何時死んでもいい」くらいの気持ちでそう言ってた気もするし、今も約束とか嫌いなんだけど、でもみんなと僕らにとって次に会うまでの道標にその言葉がなるんだったら、という意味で使ってます。
——では、最後に。ここからの[ΛrlequiΩ LIVE TOUR2024「SEEDS chapter2.」]後半戦と、10月26日に控えているSpotify O-WESTでの[ΛrlequiΩ 11th Anniversary Live「声息」]に向けての展望をおきかせください。
奈緒 今回のツアーで新しい挑戦をしていってる中で、自分たちに足りなかったものにたくさん気付かされたところがありますからね。ツアーではその気付きをもっと増やしつつ、それを11周年のライヴにつなげていきたいです。
祥平 個人的には視覚的に見せる部分での強化も続けながら、聴かせる部分での底上げもストイックにしていきたいと思ってますね。11周年に関してはこれだけ長く続いていることって自分の人生で他に無いんで(笑)、ここまで続けてきた成果を発揮したいです。
來堵 ツアーを凄く良い状態で前半を折り返せた分、後半ではカップリングたちも含めた新曲が顔を出してきた時に新しいシーンがいろいろ生まれてくると思います。11周年については、実際にここまでやって来られたのはファンのみんなのおかげなんで、その日は特別な感謝の気持ちを伝える1日にしようと思います。
——10月26日のライヴタイトルは「声息」は“せいそく”と読むそうですが、なんとシングル『BLESS』のリリース直前にあたる2018年7月にも、アルルカンはSpotify O-WESTでこのタイトルを冠したライヴを開催されたことがあるのですよね。
暁 あの時は“これからのことは分かんないけど、今の自分が発せるもの”っていう意味で「声息」とつけたんです。今回の場合はそれとは違います。“相変わらず気に入らないもんもあるけど、顔を上げて胸を張って今11回目の誕生日を迎えました。俺は今が一番バンドやってて楽しいです。そういう自分たちを観に来てください”っていう気持ちでつけたタイトルですよ。まぁ、ツアーでは横浜からとうとう本編MCもなくなってね(笑)。ライヴ中にはみんなが声を出していいのかもわからないような、息をのむ瞬間も生まれたりしてて。衝動に身を任せてお互いぶつかりあうライヴをやって来てるんで、11周年のライヴではまたさらにそのレベルを純粋に上げていきたいです。
——本編MCが消滅したというのは、いちヴォーカリストからするとシビアなのでは?
暁 ほんと冗談じゃないっすよ!(苦笑)。でも、自分を削らないと相手に刺さらないからなぁ。日々ギリギリのとこで「今日ここに全部置いていく」っていう姿勢でやってます。
Writer:杉江 由紀
【LIVE SCHEDULE】
ΛrlequiΩ LIVE TOUR 2024
「SEEDS」chapter.2
10/12(Sat) at 名古屋Electric Lady Land
10/14(Mon) at 大阪 Yogibo META VALLEY
ΛrlequiΩ 11th Anniversary Live 「声息」
10/26(Sat) at Spotify O-WEST
【RELEASE】
NEW SINGLE「回る球体 幼気な子 救いはみえない」
2024.9.18 RELEASE!
【初回限定盤A】¥2,860 tax in / ANMA-024A
デジトレイ+スリーブケース仕様+16Pブックレット(アーティストフォト)付き
DISC1.(CD): 1. 回る球体 幼気な子 救いはみえない / 2. ダイバーダウン / 3. 回る球体 幼気な子 救いはみえない -instrumental-
DISC2.(DVD) : 「回る球体 幼気な子 救いはみえない」MUSIC CLIP + OFF SHOT
封入特典:ランダムトレーディングカードA絵柄 2枚(全8種)
【初回限定盤B】¥5,940 tax in / ANMA-024B
デジトレイ+スリーブケース仕様+16Pブックレット(ライブフォト)付き
DISC1.(CD) : 1. 回る球体 幼気な子 救いはみえない / 2. 白紙の手紙 / 3. 回る球体 幼気な子 救いはみえない -instrumental-
DISC2.(DVD) : 2024.06.16 DIAURA×ΛrlequiΩ「THIS IS MY CULT.」at 新宿BLAZE
1.世界の終わりと夜明け前 / 2. MONSTER / 3. 墓穴 / 4. Katrina / 5. 無花果 / 6. THIS IS MY CULT. / 7. 人形-ヒトガタ- / 8. Eclipse / 9. ダメ人間 / 10. 消えていくオレンジの空へ
封入特典:ランダムトレーディングカードB絵柄 2枚(全8種)
【通常盤】¥1,650 tax in / ANMA-024C
ジュエルケース仕様
DISC1.(CD) : 1. 回る球体 幼気な子 救いはみえない / 2. ダイバーダウン / 3. 白紙の手紙 / 4. 回る球体 幼気な子 救いはみえない -instrumental-
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