2024.11.07
【本誌連動】Crack6 MSTR(千聖)✕ Moi dix Mois Mana Crazy Monsters共演記念特別対談
MSTR(千聖)率いるCrazy Monstersの開催を記念した特別対談。方向性は違うものの、同じ時代で信念を貫き続けてきた2人から語られる伝説、そして未来への思い。知られざるヴィジュアル系の歴史が今明かされる……
——このたび[Crazy Monsters Halloween Party 2024]にて共演されることが決まったMSTR(千聖)とMana様ですが、もともとは1990年代前半に今はなきライヴハウス・高円寺LAZY WAYSを介しての接点があったそうですね。
MSTR 要は1992〜93年のあたりって、ヴィジュアル系のメインストリームを生みだす場所になってた目黒鹿鳴館とかに我々はまだ進出していない状態だったんでね。東京でローカルバンドたちが良く出てたのが、高円寺LAZY WAYSだったんですよ。
Mana そうそう、我々はもともと“高円寺界隈”のバンドマンなわけです(笑)
——PENICILLINが1992年の2月、MALICE MIZERは同年8月の結成ですから、おふたりは完全に同期でもいらっしゃるのですね。
MSTR ただ、ManaさんはMALICE MIZERの前に摩天楼でも活動して既に伝説的な存在になってたから。そして、実はPENICILLINがLAZY WAYSに出だした当初によくライヴに来てくれてたのが、その頃に活動が止まってた摩天楼のお客さんたちが多かった気がする。つまり、流れ(時系列)としては摩天楼とMALICE MIZERの間にPENICILLINが出て来た、みたいなことだったわけ。あと、その頃に俺らはZE:ROっていうバンドともよくタイバンしてて、そこのベースがのちにMALICE MIZERに入ったYu〜kiくん。あと、あの当時はGLAYとかSIAM SHADEの淳士くんもあのライヴハウスにいたよ。
Mana あの頃の淳士はHYSTERIAのドラムでしょ?で、そのHYSTERIAのヴォーカルは僕の従兄弟なんですよ。
MSTR そうだった、KATSUOくん(笑)。あと、後々PENICILLINはMALICE MIZER主催のイベントに1回出させてもらったことがあったな。
Mana それは多分、93年に新宿LOFTでやった[第一夜 悲劇の晩餐 Vol.1](PENICILLIN/堕天使/ラ ミゼアモーレ)だったと思います。
MSTR 懐かしい、あれも今になって考えるとなかなかレアなタイバンだったよね。
——そうしたおふたりはギリスト同士でいらっしゃるわけですけれど、MSTRから見てMana様というギタリストはどのような存在感を持った方だと捉えていらっしゃいます?
MSTR Manaさんと最初に会ったというか、あの時は摩天楼のベーシストだったっていうのもあるし、MALICE MIZERでの活動の感じを考えても、なんか単にプレイヤーとかギタリストっていうカテゴライズするのもちょっと違うかなって思うんだよな。それに、Manaさんってドラムやってたこともあるんでしょ??
Mana 学生の頃はドラムやってて、そのあと摩天楼とかでベースやって、MALICE MIZERではギターと、曲によっては弾かないで踊って、っていう感じでした(笑)
——MALICE MIZER以降は“時に楽器を置いて踊るバンドマン”の存在も珍しくはなくなりましたが、MALICE MIZERがあのようなパフォーマンスを開拓した当時は衝撃でしたし、ぶっちゃけそのスタンスに対しての賛否両論があったのも事実ですよね。
Mana 賛否両論はかなりあって、バンドマンからも「楽器弾かないの?何それ??」っていう意見を聞くことはけっこうありました。でも、自分としてはMALICE MIZERを始めた時点から“このバンドでは今まで誰もやっていないことをやっていく”と決めてましたし、いろんな反応があるだろうなということもわかっていたので、そういう状況を気にすることはしなかったですけど。
MSTR 最初に「楽器を置いてパフォーマンスに専念しよう」ってなった切っ掛けは何だったんですか?
Mana 今のMoi dix Moisではシンフォニックブラックメタル的な事をやっていて、そもそも僕はメタル出身なんですけどね。当時の機材って打ち込みのシーケンスがまだ黎明期というか、技術的には発展途上だったせいか、あんまり周りではライヴではシーケンスを使ってる人はいなかったんですよ。そういう状況の中でパイプオルガンとかチェンバロの音をライヴで使おうとすると、まずはKöziとツインでシンセギターを導入してみたらどうだろう?っていうところから始まったんです。ところが、これもまだまだ発展途上だったから現場では音が凄い遅れてくるんですよね。
MSTR ギタリストとしては…タイムラグがある(タッチが遅れる)と絶対弾きづらい(笑)
Mana 正直、弾いてて気持ち悪かったです。でも、そこは割り切ってましたね。ギターからパイプオルガンの音が出る!っていうことの方にワクワクしていたので。
MSTR それでシンセギターでやってるうちにだんだん打ち込み関係の環境が整ってきて、だったらもう楽器は置いてパフォーマンスに専念しようとなったわけですね。とにかく、音もそうだし格好とかも含めて誰もやってないことを追求しようっていうその姿勢がMALICE MIZERは凄い。バンドっていう概念を超えちゃって、完全にエンタテインメントに徹してるわけだから。
——確か、当時はメンバーの皆さんでダンスリハもされていませんでしたっけ?
Mana 池袋で早朝にやってましたね。西口の芸術劇場のところが鏡張りになってるので、普通のヒップホップ系のダンスグループとかと交じりながら。
MSTR え?Manaさん、実はIWGPのストリート派だった?(笑)
——Manaさんがその時々によって変幻自在なタイプの表現者だとすると、MSTRは一貫して独自のスタイルを貫いてきた方だと言えるのかもしれません。
MSTR そうね。俺のこだわりとしては結成当初からVのギターをずっと使ってきてて、あの頃、いつのまにかみんながヤメちゃってたメタルのスタイル、ハードロックのスタイルを俺はやり続けるっていう、ゴリゴリな王道をいってる感じかな。そして、意外とManaさんとは学生時代に聴いてた好きな音楽とか、俺は近いところがいろいろあるような気がしてる。メタルの類いもそうなんだけど、80年代のUKロックとかニューウェーヴとか、互いに知ってる音楽やカルチャーが共通してるところが多いんじゃないかな?っていうことは、一昨年Manaさんと初めて対談させてもらった時にシンパシーを感じたとこです。
Mana メタル出身とは言いましたけど、確かに僕もDURAN DURANとかは好きで聴いてましたよ。
MSTR あと個人的な共通点としては、俺、自分の96年のソロデビューした時は徳間JAPANだったけど、その後セカンドアルバムを日本コロムビアから出してるのね。で、その時のディレクターがMALICE MIZERも担当してた人だったから、よくMALICE MIZERの情報はその人たちから聞いてました(笑)
——MSTRやPENICILLINに関する情報がMana様に流れてきたことはありました?
Mana いや、それは特に流れてきてなかったですけど(笑)。でも、Yu〜kiちゃんがPENICILLINと仲良いっていうのは僕も知ってましたよ。
MSTR Manaさんのことは昔から知ってたけど、俺たちはよくYu〜kiくんとKamiくんと話した。そういえば…昔テレビ番組で『歌の大辞テン』ってあったじゃないですか。あれでPENICILLINとMALICE MIZERが同じ収録日になったこともあって、Yu〜kiくんとかKamiくんが楽屋に遊びに来てくれて「よ!久しぶり!!」ってしゃべった後ろにManaさんがいて、会釈してもらったこともありましたね。「あ、一応認識されてる」って思った(笑)
Mana 僕は閉鎖的な人間なんで(苦笑)
MSTR いや、Manaさんはそのミステリアスな存在感が良いんですよ。MALICE MIZERは、キャンペーンの時もインパクト強かったな。俺が自分のソロのキャンペーンでどっかのFM局に行った時、そこでもMALICE MIZERと一緒でその時はKamiくんとGacktくんがふたりで来てて。しかも、フル衣装を着てて。あれはめちゃめちゃ目立ってた。俺なんて短パンとTシャツでサンダルだったのに。
——ラジオでまでフル衣装と、短パンとTシャツでサンダルの対比が面白いですね(笑)
MSTR 同じヴィジュアル系でこんなに違うのか、とは俺も思った(笑)。それに、俺からするとKamiくんは最初LAZY WAYSで出会った頃のまだ髪も短くて、ライダースとか着てた頃のイメージが強かったから、久しぶりに会って髪もロングヘアーですごい豪華な衣装を着てたからほんと驚いた。MALICE MIZERって人から見えないところでもそこまでイメージ戦略を徹底してるのか、なんかちゃんとした規定でもあるのかな?って気になっちゃったし、凄い感心してた。
Mana あぁ、規定は確かに出したことあります。
MSTR えっ、それはどういう規定??
Mana なんか、一時期みんな私服でオーバーオールを着だしたことがあって。
MSTR あー、流行ってた時ありましたね。
Mana で、目黒鹿鳴館でライヴをやる時にメンバーを機材車で順々に拾っていったらみんな何故かオーバーオールなんですよ。いくら楽屋入り前の私服だとはいっても、さすがにこれは“中世ヨーロッパ”を売りにしているバンドとしてはマズいと思って、それ以来オーバーオール禁止令を出しました。
MSTR オーバーオール禁止令!凄いパワーワード(笑)
Mana やっぱり、もし入り待ちとかしてるお客さんたちがいた場合、MALICE MIZERのメンバーがオーバーオール姿っていうのはヤバいですからね。「普段からちゃんと中世ヨーロッパ風で頼む」っていうことは言ったんですよ。
MSTR 今ならみんなオーバーオールだと、ミニオンズみたいになりそう(笑)
——PENICILLINの場合、なにかしらの禁止令が出たことはあります?
MSTR うーん全くない(笑)。短パンだろうが何だろうが、みんな自由。俺はこれ、僕はこう、ってそれぞれみんなバラバラ。まぁ衣装とかで方向性を決めることはあるけど、私服はもう何の縛りもないですよ。非常に極端な例えで言うと、別に誰かが中世貴族の格好してても全然いいけど、俺はデニムだよ?っていうノリ(笑)
——Mana様はMoi-même-Moitiéを主宰されていることもありますし、やはり完全なプライベートの場でもカジュアルな出で立ちをされることはないのですか?
Mana とりあえず、オーバーオールには1度も触れたことがないですね(笑)
——では、常にMoi-même-Moitiéのお洋服を?
Mana いや、既成の服を着ることはあります。まぁでも、Moi-même-Moitiéも25年やってるんで自分の作ってる服を着ることも多いですよ。
MSTR 去年のクレモンでMoi-même-Moitiéの服を衣装として着させてもらったんだけど、実際にステージに上がってみてデザインが綺麗なだけじゃなくて凄い着やすいのにびっくりしたな。それに、アパレルで25年って凄いですよね。ヴィヴィアン・ウエストウッドなんて過去に何回もつぶれてるはず。
——確かに。ゴルチエやh.NAOTOもいつのまにか直営店がなくなっていましたし。
MSTR まして、アーティストのやってるアパレルでこれだけ続いてて支持されてるってなかなかないんじゃないかな。あと、Manaさんは最近プライベートでもお会いすることあるけど、崩れた格好みたいなのを見たことないのも凄いよ。イメージをちゃんと大事にしてるのがよくわかる。
——ところで。今回の対談では同時代をそれぞれに生き抜いて来られたおふたりの共通点、また全く異なる点などがいろいろと明らかになりましたが、30年以上にもわたってシーンを担ってきたこと踏まえつつ、今ここからのご自身の生き方というものについてどのように考えていらっしゃるのか、ということも少し語っていただけますと幸いです。
Mana 今やっているMoi dix Moisとしての活動に関して言えば、僕は本当に好きなことしかやっていないんですよ。ひたすら好きな道を突き進んでいるだけの人生なので、あんまりこれ以上の願望みたいなものはないです。こういう格好なんかにしても、いまだにずっと髪長いですし。メンドくさいんですけど(笑)、でもこのスタイルは崩せない。
MSTR え、地毛なんですか?それ凄いっすね!
Mana 地毛ですよ。90年代は周りもわりと長かったけど、今はもうあんまりいないんで。ここは敢えて90年代魂を見せてやろうかと(笑)
MSTR しかも、綺麗ですよね。全然傷んでないのがまた凄い。俺もManaさんと方向性は違うけど好きなことをずっと続けたいっていうのはやっぱりあるし。自分の好きなもの、好きなことに対して嘘をつく必要もないし、自分にとっての原点はこれからも大事にしていきたいと思ってる。もちろん、新しい音楽と出会ったり、あれもいいな、これもいいなってなるのもめちゃくちゃ楽しいんだけどさ。原点になってる部分は、きっとこれからも変わらないだろうね。
——おふたりの勇姿は、今度の[Crazy Monsters Halloween Party 2024]でも存分に楽しめることになりそうですね。
MSTR 音楽的にManaさんの凄いところって、いわゆるJ-PopとかJ-Rockって言われるようなものとは全く違うところでブランドを築き上げてるところだと思うんだよね。完全にMana様っていう存在感を持ったスーパーヒロインというかスーパーヒーローでしょ。総合芸術としての完成度を高めていくと、この領域までいけるんだっていうことを気付かせてくれる貴重な存在でもあるよね。今度のクレモンでは、そういうMana様のスタイルをみんなに見せてくれるんじゃないかな。あと、多分みんな「やっぱオーバーオールは着てちゃダメなんだな」って感じるだろうね(笑)
Writer : 杉江 由紀 / Photographer:Lestat C&M Project / Hair makeup:小林 千穂(MSTR) / 撮影協力:銀座レストラン VAMPIRECAFE
【LIVE SCHEDULE】
Crazy Monsters Halloween Party 2024
10月26日(土) & 10月27日(日) 新宿ReNY
【出演】
<10/26公演>
Crack6/Moi dix Mois/DASEIN/CASCADE/XA-VAT/司会 NoGoD団長
<10/27公演>
Crack6/THE MICRO HEAD 4N’S/メトロノーム/CLOSE/Little Vampire/Neu:NOIZ/VAMPIRE ROSE/司会 NoGoD団長
<関連リンク>
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