【完全版】音楽のオタクと自称するユナイトの素晴らしい楽園──新作『FANTASTiC』と『FANTASTIC NERDS』ツアーで魅せる唯一無二の世界

6枚目のフルアルバム『FANTASTiC』は、ユナイトが持つオタク気質と音楽愛を大胆に詰め込んだ全20曲の大作。希の初作詞作曲『hananone.』を筆頭に、ジャンルを飛び越える楽曲たちは、まさに「ユナイトにしかできない音楽」の結晶。全国を駆け抜ける『FANTASTIC NERDS』ツアーは、音のオタクたちが描く素晴らしい楽園。どこを切り取ってもユナイトの本気と遊び心が溢れ出しそうだ。
――ユナイトとしては、6枚目のアルバム『FANTASTiC』。タイトルに込められた意味をお伺いしてもよろしいでしょうか。
椎名未緒 名付けたのはLiNさんです。元々『FANTASTiC』っていうアルバムタイトルが先行してあったわけじゃなくて、夏のワンマンツアーのタイトルとして、『FANTASTIC NERDS』っていうツアータイトルが決まったのが先なんです。そのタイミングで出すアルバムになったので、「じゃあ、流れ的に『FANTASTiC』が美しいね」っていう経緯でこのアルバムタイトルになりました。
――ツアータイトルが先にもう決まってたんですね!ツアータイトルが『FANTASTIC NERDS』。NERDSは”オタク”という意味合いですが、こちらはなぜこのようなタイトルになったのでしょうか。
椎名未緒 自分もさっきちゃんと理由を聞いたんですけど(取材日:5月21日)、「ユナイトってどういうバンドなの?」って、第三者とかに聞かれた時に、一言で「うちは◯◯です」って言い表せるものが、今までのユナイトにはあまりなくて…。それでLiNさんが「ユナイトっていうものを象徴する単語何がいいかな」って考え出した果てに決まったんですが、由来としてはユナイトって全員が頻繁にパソコンをいじっていたり、音楽に対してもちょっとオタク気質な部分があるんで、そこを”NERD”っていう言葉で表してます。けどただのオタクじゃないよ!みたいなところを、いろんなパターンで考えた果てに辿り着いたのが『FANTASTIC』で、合わせて”素晴らしいオタク”たちみたいな意味合いになりました。ユナイトってどういうバンド?っていうのを表す時にこれがいいね、となったのでそれを今回のツアータイトルにした形ですね。
――どうしてもNERDSだけだと、オタク気質みたいなことになってしまうので、それを補完するというか、いい意味合いに持ってくみたいな形なんですね。
今回のアルバム自体は、皆さんからしてどのような作品に仕上がったと考えていますか。
椎名未緒 ユナイトに希が入ってから2年ちょい経つんですけど、今までのシングルはどれもいい作品だったと思うし、自信作なんで。どのCDを渡しても「今のユナイトってこういう感じです」っていうことは紹介できると思うんですけど、この2年を全部ひっくるめた、”今のユナイトを象徴する1枚”になったと思います。ここから次のアルバムまで、長い期間、このアルバムが最新アルバムになると思うんですけど、向こう何年かの名刺として、ユナイトがどういうバンドなのって新しいお客さんが気になった時に、まずこのアルバム聴いてくださいっていう作品かなって思ってます。
希 このアルバムを全部ひっくるめた感想だと、なんかよくある表現になるんですけど、ほんとにいろんな曲があるんです。多分メンバーも言ってるんですけど、「今のシーンで、ユナイトしかできないだろこんなこと」みたいな。アルバムに20曲入ってるのもそうなんですけど。本当にめちゃくちゃ尖った内容になったなって思ってます。歌に関しては、曲ごとに歌い方を変えたりとか、声色変えてみたりとか、それこそ未緒さんがさっき言ったように、めちゃくちゃ音楽オタクな感じ…音楽オタクたちが作る、アルバムになったなって思ってます。
――ありがとうございます。曲を聴かせていただいて、「ユナイトらしいメロディーだな」だったり、「この歌詞もユナイトらしいな」と感じましたね。
フルアルバムですと、前作から7年ほど経っていますね。希さんにとっては加入後初のフルアルバム、未緒さんにとっても久々のフルアルバムになりましたが、どのような思いで制作に臨みましたか。
椎名未緒 明確に違うのは、やっぱり前作のアルバムからボーカルが変わっているっていうのがまず大前提にあるので。昔のユナイトではなくて、”今のユナイトだからできる曲”みたいなのが揃っています。昔の上塗りってわけじゃないので、昔は昔で好きでいてくれて全然いいんですけど、「昔だったら聴けないんだよな、こういう曲たち」っていう気持ちもありますね。今のユナイトを表現するのにベストな形を思い描きながらそれぞれ曲を作っていたので、希だからこそやれる曲が揃ってます。新しくユナイトを好きになってくれた人からしたら、そんなに意識する必要はないと思うんですけど、長くユナイトを応援してくれている人には、より今だからこそ聴ける曲みたいな感じで受け取ってもらえたら嬉しいなとは思います。
希 既存の曲は加入した当時に録った歌がそのまま入ってるんで、自分でもボーカリストとしての成長をすごい感じていて。個人的な話になっちゃうんですけど、すごい成長したなっていうのを思いながら、レコーディングしていましたね。
――感慨深いというか、加入してからの日々を思い出しながらみたいなのもあったんでしょうか。
希 そうですね。未緒さんには、最初は付き添ってもらってみたいな感じのレコーディングだったんですけど、(今では)未緒さんの曲とかも結構信頼されてる感じがあって、「もう好きに録っていいよ。なんかあったら言うから」みたいなのが出来上がってて、そういう関係性もあって、歌ももっと自由にのびのびとなってるなって感じてますね。
――今回の収録曲が20曲、なかなか20曲のフルアルバムって見たことなんですが、新体制後に発表されたシングルの中からも8曲、これだけ多彩な曲をまとめるにあたって、曲順やコンセプト作りに苦労しそうな気もしますが、その辺りはいかがでしたか。
椎名未緒 ユナイトって基本的にコンセプトありきでCDを作ることってなくて、今回もメンバーに、自分がアルバム作るよーって号令だけ出して、それに対してみんなが思い思いに曲を作って選曲会をしたって流れです。選曲会に関しても、普通にメンバーみんなで雑談してるみたいな雰囲気で、「じゃあデモ聴いていきましょうか」みたいな。みんなで話しつつ、今回はLiNさんが曲の方向性でデモ楽曲の住み分けをしてくれて。「バランスがいいのはこんな感じかな?」みたいな形で荒選びしてくれたんですよ。それをみんなで聴いて、「なんか良さそうだね」みたいな感じですぐに決まりました。その時点では曲順は全く決まってなくて、ただ、みんなが良さそうって思った曲を選んでいった感じだったんですよね。自分的にはそこからが結構大変で。20曲もあるんで飽きずに20曲を聴いてもらうにはどういう流れにしたらいいのかな…とか。なかなかCDで20曲聴き切ることってないじゃないですか、
今の時代、気に入った曲1曲だけをピックアップして簡単に聴けちゃう時代なんで。だからアルバムとしてひと通り聴いてもらうにはどうしたらいいんだろうな、とか色々考えてたんですけど。今回に関しては、自分が最終的に「じゃあこうしよう」と思ったのは、”この20曲でライブをするんだったら”こういう流れがいいかなっていうのを形にしました。序盤は歌ものを聴いてもらって、中盤でちょっと落としてしっとり聴きつつ休憩して、後半を盛り上げていくみたいな。ユナイトで言うとアンコールってないんですけど、もしアンコールがあるんだとしたら、一旦ここでメンバーがはけて、アンコールでこの曲をやってエンディング、みたいな。もしもこの20曲でライブをするならっていうのを想像しながら曲順を組んでいきました。
他にも裏テーマとかもあったりはするんですが、メインはそれが曲順の意図になっています。
――ライブでやるならっていうのが結構曲順に反映されてる形なんですね!
椎名未緒 そうですね。あと細かいことなんですけど、作曲者が並ばないようにも意識しました。作曲者によって作風が違うのがユナイトの持ち味や魅力だったりもするので、なんか同じような曲が続くなって思われちゃったら、せっかく20曲入れてる意味がないので。小さな山がいっぱいあるんじゃなくて、山は後半に大きいものがあります、みたいな感じに…ライブ的な組み方をした感じですね。
収録曲数は最初は19曲予定で、MVを撮ったシングル8曲とライブで使っていたSEで9曲は収録が最初から決まっていて、でもアルバムって大体13曲ぐらいじゃないですか。9曲決まってて、13曲にするってなったら、新曲4曲だけで足りることになっちゃうんで、「これだとフルアルバムとしての魅力がないな」って。だから、「やっぱり新曲は10曲ぐらい欲しいんですよね」っていう話をメンバーにしてたんです。それもあって当初は選曲会で10曲選んで、19曲でのリリース予定になった感じですね。でもその後に、「19曲のアルバムより、20曲のアルバムの方が引きが強いだろう」っていう個人的な思いもあって、さらに1曲追加しました。
――個人的に気になる点があるんですが、CDにする時って確か74分が限界ですよね。その辺り、よく収まりましたね。
椎名未緒 そうですね、収まってますね。収まってるし、収まるだろうって思ってました。近年、ユナイト的にどんどん1曲の長さが短くなっていってて。3分半あると若干、重たいよねみたいな感じの空気がユナイト的にあるんです。なんだったら莎奈さんとかは全部2分台の曲にしそうだし、多分20曲でも入るだろうっていうのがありましたね。
――ありがとうございます。今回のアルバムには希さんが初めて作詞作曲された『hananone.』も収録されていますね。以前の取材では、元々ギターをされてたっていうことをお伺いしてたんですけど、ユナイトとして初めて、ご自身で1曲を生み出してみていかがでしたか。
希 この発端というか、アルバムを作りましょうってなった時に、メンバーからも、お客さんからも、「お前も曲作るよな」みたいな謎のプレッシャーをずっと感じてて…というか、きっと僕が勝手に思ってただけなんですけど。そんな中で、1月にライブがない制作期間みたいなところがあって、そこで「俺もやってるぞ」ムードみたいなつもりだったんです、最初は。何曲か作っていく中で、メンバーが「この曲いいやん」みたいになったのが、『hananone.』で。この曲は14周年(ライブ)で初披露した曲になるんですけど、全然…、「周年に向けていい曲書くぞ」みたいな気持ちとかはそんなになくて、なんか「自分が好きなように曲作るか」って言って作り始めたのが、今回の『hananone.』だったんです。曲に込めた思いみたいなものは、結構歌詞の方で補填していった感じで。曲に関しては、メロディはもちろん自分が歌いたいように作ったし、メロ以外の部分は、曲の構成とか、楽器のアレンジとか、やっぱユナイトはめちゃくちゃ上手って言ったらあれですけど、すごい綺麗にしてもらって。なので結果、”ユナイトっぽさ”みたいなのもちゃんと落とし込めたなとも思ってます。
――そしてこの曲、アルバム1曲目ですもんね!
希 そうなんですよ。本当にそんなつもりなかったんですけど。「希表題ってなんかかっこいいよね」みたいなことを確か、未緒さんが言い出して、莎奈さんもなんかそれに乗っかって。特に作詞なんか、人生で1回もやってこなかったから、急に崖っぷちみたいな…(笑)、周年に向けて。「もうなんか逃げ道ねえよ、お前」みたいな(笑)。「はい、じゃあ今から、なんか大事になりそうな曲を1曲用意するんだ、頑張れ」みたいな感じになってましたね(笑)。でもみんなすごい力を貸してくれたんで、それは本当に助かったって感じです。
――メロディも歌いやすいというか、キャッチーな印象で。この1曲目を聴いて、惹き込まれる感じがありましたね。
希 メロつける時には、そこはめちゃくちゃ重視しましたね。1回聴けば、歌える曲にしたいなと思って。サビ頭とか特にめちゃくちゃわかりやすく、簡単に…っていうテーマでは作りました。
――未緒さんに質問なんですが、ギターアレンジでこだわった曲があれば教えていただきたいです。
椎名未緒 近年は基本的には作曲者の意図やデモから崩さないっていう形をとっています。LiN、莎奈に関して言うと、デモで入っている仮ギターを清書する、みたいなスタイルで、逆に希、ハクの曲はこっちでアレンジしていくみたいな作業になっていますね。今回もですが、アレンジで何か特殊なことをしたとかっていうよりは、自分的には音作りの方でいろいろ苦労…っていうのも変ですけど、試行錯誤をしました。シンセが多くて音が埋もれる曲と、逆にシンセがあまりない分ギターが目立つ曲との差が結構あるので、考え方を変えて音作りをしたりしましたね。あとは誌面的に書いて伝わるかわかんないですけど、ゲイン(ギターの歪み)をどんどん上げていくと、(音の)立体感がなくなっていって、コードの和音感とか、アタックのダイナミクス感がどんどん失われていっちゃうんですね。それがあまり好きじゃないので、ギリギリのゲイン調整を試みた感じです。ただ、ゲインを下げれば下げるほど、誤魔化しが効かないんでプレイの粗がどんどん目立ってREC(録音)がシビアになったりとか、コードの分離感がすごいはっきりする反面、タッチ(弦に触れること)でチューニングが微妙…とかが超目立ってくるんで、むしろその辺り、音作りとテイクに苦労した感じですかね。
――以前、取材させていただいた時も、ゲインをどんどん絞っていってるみたいなお話がありましたよね。ゲインを上げると、どうしても音像が潰れてしまいますよね。
椎名未緒 そうですね。ただそれも一長一短ではあって、音像をある程度潰す美学もあるとは思うんです、ユナイトがもっとラウドでハードなバンドだったら、今みたいな音作りは正直全く合わないと思うんですけど。それこそ、『FANTASTIC NERDS』っていうぐらいなんで(笑)、「音にもこだわって洒落た事してます」みたいなバンドなんだったら、やっぱ過剰なゲインは下げていって、音楽に造詣が深い人が聴いた時に、「ユナイト、わかってるね」って言ってもらえるような音作りを心がけてはいます。だから、ハードな楽曲を所望してる人になればなるほど、「ユナイト音が激しくない、重くない」ってなるかもしれないですね(笑)。
――ありがとうございます。先ほど、希さんは歌詞に思いを込めましたっていうお話をされていたんですが、歌詞を書く上で意識したことは何でしょうか。
希 『hananone.』は、ユナイト入っての初めての曲になるんで、あらかじめ未緒さんとかに相談はしてたんですよ、「どういう曲を書けばいいと思いますか」みたいな、自分の曲のくせに。相談して「初めてだから、自分自身の意気込みみたいなのを書いたらいいんじゃない」っていうアドバイスをもらったので、「じゃあ、そうするか」と思って、書いては消してっていうのを繰り返してたんです。最終的には、”前の自分と今の自分、これからの自分”、綺麗な時間の流れ、というようなものが出来て。気にした点で言うと、わかりづらくはしたくないなっていうか、比喩表現が本気すぎて、何も伝わらないみたいなのは絶対に嫌だったんで、ちゃんと(意味を)受け取ってもらえるようにっていうのを目指しました。なんか変な捉え方されても嫌だしなっていう。ただ、普通なことを普通に書きすぎても、それは芸術なのか?っていうのも思うんで、Aメロは、ちょっと捻った形で書きました。サビに関しては、僕がユナイトに入ってから見えている景色みたいなものを切り取って、簡単に言うと”今、とっても幸せです“ということを書きたかったんです。
