──36年間、変わらず1つのブランド(バンド)をやり続けるって大変ですし、それをずっと楽しいと思えることってなかなかできることではないですよね。歌詞などは枯渇はしないんでしょうか?
僕は他の人の音楽を聴かないのもあって、歌詞を書く場合は、自分の1つ前の作品の歌詞を読むんです。これよりは絶対にいいものを書こうって。それだけ思って毎回書いてますけど、いざ書き出すと、いつも「もう無理、前の方が絶対にいいわ」って思うんですよね(笑)。
歌詞は自分なりにすごくこだわって書いてます。でも、とても難しいなとも思っていて。正解がないというか、どれでも正解というか…。
例えば、1つの歌詞をずっと書き直し続けていれば、もっといいものになるかもしれないし、もうならないかもしれない。そのどこかのタイミングで、これ以上のものは無いと思って、みなさんに聴いてもらいます。そう思う瞬間って、自分の中で狂気が宿るというか。客観的に考えていると、もっといいものが出来るかもしれない可能性を否定はできないから、まだ出せないな…と、いつまでたっても出来上がらない。その客観性や普通の感覚を越すのに必要なのが、僕の場合は狂気のようなものです。もしかしたら、もっといい歌詞は世の中にいっぱいあるのかもしれないけれど、「これこそが世界で最高」と自分で思えたものじゃないと、世の中には出せないし。
──他のメンバーが全員脱退されたライブ『美しき時代』の後に、ひとりになりUNDER GARGOYLE(Gargoyle未満の意味)で活動されていて、そこからGargoyleに戻された時の心境の変化とかは何かあったんでしょうか。
1つは、UNDER GARGOYLEで試すべきことはある程度試せたかなということ。以前のメンバーとの違いや、Gargoyleというものをいろいろな人が演奏した時に気持ちも含めてどうなるとかね。ある程度のパターンを大体やり尽くしたと思ったんです。
もう1つは、Gargoyleから逃げてはいけないな、と。UNDER GARGOYLEはGargoyle未満で、悪い言い方をすると、ちょっと言い訳になるのかなって。「今やっているのはGargoyleじゃないし、Gargoyleはもっとすごいですよ」みたいな。Gargoyleから逃げるわけにはいかないので。ただ、1人になった時に最初は何ができるのかわからなかったから、探りながらやっていたのがUNDER GARGOYLEかな。
そういえば、UNDER GARGOYLEではいろいろな人にサポートしてもらったんですけど、実は1人もオーディションはしてないんです。叩けない、弾けないっていう人もいましたが、それはそれでいいかなと思って、ともかくいろいろやってみようと思って。いろんな演奏でやってみた結果、いくら演奏が上手い人がやっても全然Gargoyleにはならなくて。それよりもGargoyleの音楽に合った人、Gargoyleの音楽が好きな人がやるものなんだなと感じました。
──KIBAさんの歌い方や表現方法はずっと変えていないのでしょうか?
僕は今まで、歌の練習をした覚えがないんですよ。リハーサルくらい。なので、歌ってみて考えるみたいな感じです。それで、自分の中で歌が変わったなと思うことは2回ありました。
1回目は、『natural』というアルバムを出した時に、曲の幅が広がったので、もっといろいろな歌い方ができた方がいいかなと思って、歌い方を変えてみました。それまでにはなかったようなメロディも歌うようになりましたし。ただ、それは『natural』のためというよりは、5年後、10年後、これから先いろいろなことをやっていくんだったら、今から試していかなきゃいけないな、というイメージで。ここでやっておいたら、10年後の自分は、それまでの自分の延長線上とは違う景色が見えているんじゃないかなと。
2回目は、メンバーが僕1人になった時。今まではメンバー全員で、バンドの力で突き進んできたけど、1人になって自分ひとりが引っ張らないといけないと思って。さらに自分の歌を磨かないといけないって感じて、いろいろ試しましたね。
──今回1500本に向けて、ということで聞きたいことを考えていたのですが、KIBAさんのお話を聞いていると、これ(1500本目)が特別というわけではないような…。
僕にとっては、例えば1464本目だろうと、1500本目だろうと、ライブは全部特別ですよ。1本1本が特別。ただ誕生日と一緒で、お祝いできるきっかけがあるならやりたいし、記念でみんなが楽しめるなら嬉しいなって。
──先ほども、「お客さんには楽しんで欲しい」という言葉がありましたが、他に伝えたいことはありますか?
僕らができることは、その時を楽しんでもらって、また見たいな、と思ってもらうことぐらいなんですよね。目の前にお客さんさえいれば、僕はいつどこでもやれるし、やりたいと思ってるんです。そして目の前にいる人たちのために自分を出し尽くす…そんな姿を見て楽しんでもらえると嬉しいですね。
Writer:廣瀬 大輔