2024.04.05
【本誌巻頭特集】PENICILLINスペシャルインタビュー
──これはとても素朴な質問でもありますし、ともすれば失礼な質問にもなりかねませんが…ここまで32年もの間ひとつのバンドをずっと続けてこられた中で、各メンバーともに作曲面で枯渇の危機を感じられた経験は過去に多少でもございましたか?
O-JIRO:何も出て来なくなる、っていうことはないですね。もちろん、作った曲が全て完成形にまでなるわけじゃないし、中には一旦その時は引っ込めるものもあれば、完全に自分の中でボツにしてしまうものもありますけど、生きていればなにかしら音楽を聴く機会もあるので、そういう中から刺激を受けて「こういうのかっこいいな」と感じたところから、また新しいものが生まれるっていうことも今だにちょくちょくあります。
HAKUEI:俺はまっったくないです。むしろ、枯渇するっていう意味がわかんない。いるんですか?そういう人。
──一時的なスランプに陥ってしまったアーティストの方のお話をうかがったり、そうした姿を目にしたことは幾度かあります。たとえば、ある程度の成功をおさめられた方が、「今の自分はいろいろな面で充たされてしまったせいなのか、昔のようなハングリーさを失ってしまった。このままでは駄目だと感じている。自分をもっと追い込まないと、今の俺じゃ前みたいには曲が書けない」という旨の発言されていたことがありました。
HAKUEI:ふーん。今の俺は、確定申告が終わってなくて曲作りにまでちゃんと手が回ってない状態だとも言えるけど。
O-JIRO:ちょっと、まだその話してるんですか?(笑)(注・2月に開催された[HAPPY BIRTHDAY & VALENTiNES DAY LIVE SPECIAL 2024]MCで、HAKUEIは「このライヴが終わったら領収証を税理士にまとめて送る!」と公言していた)
HAKUEI:うん、まだ終わってない(笑)。っていうか、多分その人は作曲が苦手なんじゃない?俺は確定申告が苦手だからなかなか出来ないけど。そういうことなのかな?
O-JIRO:バンドによっては「もうこのバンドではやり尽くした」っていう感じで、解散されるケースなんかもあったりしますよね。
千聖:そういうパターンもあるか。なんだろう?曲作りに対しての真剣さが、そういう「スランプ」という方向に向かっちゃうことはあるのかもね。俺の場合は、締切なり何か圧力がかからないと曲作りに取りかかれないタイプなんで、逆に言うとやり出すと大概「良い感じの何かしら」は出てくるんですよ。で、自分でも「こんなの出て来た。面白いな」ってなったり、曲作りを始めることでいろんな化学反応が生まれていくことが多い気がする。自分で作ってるものなんだけど、自分に驚かされることがあるから、それが楽しみになってるね。だから、時間に余裕があれば出来るかっていうと俺の場合は必ずしもそうじゃない。
O-JIRO:PENICILLINは曲を書くのがひとりじゃない、っていうのもいいところなんじゃないですかね。ひとりで作曲を全部を背負ってて、周りからも「書け、書け」って言われたら辛いだろうし、そのうち枯渇しちゃう可能性だってありえますよ。
千聖:そうだね。プレッシャーが強過ぎると、何をどう作ったらいいかいろいろ考え過ぎてわかんなくなっちゃうこともあるかもな。
O-JIRO:うちはその点、途中段階でも「とりあえずここまでは出来たんだけど、どう思う?」が通用しますからね。意外とそこからみんなでアイディアを持ち寄って、1曲としてまとまっていった時にカッコよくなるっていうことがあるんです。
HAKUEI:それに、そんな「枯渇する」っていうほどたいした曲は作ってませんよ。まだまだ俺らなんてひよっこです。
──—仮にPENICILLINが“ひよっこ”だとしたら、大半のバンドたちがまだ卵ちゃんということになってしまいます(笑)。なにしろ、活休もなく32年続いているバンドはほとんどおりませんからね。それこそ、後輩バンドマンたちから「PENICILLINは何故ここまで長く続けて来られたんですか」という類いの質問をされることもあるのではないですか?
HAKUEI:JIROさんはそういうの訊かれたら「うるせーバカ」で終わりでしょ(笑)。
O-JIRO:HAKUEIさんは「俺はそういう質問するヤツ、嫌い」って言いそう(笑)。まぁ、うちのバンドはひとりでも出来るし、3人でも出来る人たちだから、バンドをやっていくのと同時にソロ活動でも自分のやりたいことをやったり、バランス良く活動が出来てるっていうのがいいのかな?って思います。それぞれ何をやるとしても、PENICILLINっていう大きな船がありますよっていうことを3人とも認識してる分、何をしても大丈夫っていう感じなんじゃないかと思います。
HAKUEI:結局、そういうこと質問するのって続かねーヤツでしょ(笑)。
千聖:確かにね。感覚的には「どうして生きてられるんですか?」とか「どうやって歩いてるんですか」って訊かれてるのに近いものがある(苦笑)。
HAKUEI:余計なこと考える前に「一生懸命バンドやれよ!」っていうだけの話だよね。
千聖:やりたいからやってるし、イヤならやめるだろうし、極端に言っちゃうとそこに尽きるところはあるというか。
HAKUEI:シンプルな話ですよ。バンドが好きでこの世界に入って、PENICILLINのヴォーカルでいることが自分にとってのライフワークだと思ってて、メンバーとも信頼しあってやれてます。ここまでたくさん歴史も積み上げてきました。今も当り前のように一緒に曲を作って、毎回ライヴも全力でやってます。秘訣とかわかりません。以上!みたいな。
──だとしたら、その現在形にして最新形を今度の[PENICILLIN 関東サーキット2024 激撮Ⅲ]ではたっぷりと堪能させていただきたいものです。
HAKUEI:さすがにメロディーを変えちゃうことはないですけど、過去の曲でも「今だったらこういう表現で歌えるな」というものもあったりするし、新曲は新曲で今だからこそ生まれるべくして生まれたものっていう仕上がりになると思うから、今度のサーキットでは32年かけて成長してきたPENICILLINの姿を感じてもらえたらなと思います。