今、目の前でやるべきことへ真摯に向き合う。
──SHAZNAがふたたび動き出しました。その背景には、30周年を迎えたことも関係しているのでしょうか。
A・O・I そうですね。正確にいうなら、SHAZNAは昨年に30周年を迎えました。ただし、一つの動きを作るうえで相応の準備が必要となる。その準備の期間を、我々の場合はコロナ過によって取れなかった。しかも昨年は、IZAMくんがソロデビュー25周年を迎えたこともあって、ソロアルバムのリリースを含め、ソロとしての活動へ重点を置いていた理由から、変に焦って30周年の動きを作るよりは…。ということで、SHAZNAの30周年のお祝いは1年繰り越して2024年からの動きにしようとなりました。代わりに昨年は、IZAMくんのソロ活動へ寄り添う形で、本格的に動き出すための準備を水面下で整えてきました。
IZAM そこにはもう一つ理由があって。SHAZNAとして動くとなったら、バンドを取り巻くいろんな環境の整備も必要なこと。SHAZNAは今、メンバー自身で動かしています。その背景には、メンバーみずから純粋に思い描く動きを作ろうという気持ちがあってのことでした。それにSHAZNAとして動くとなったら、相応に環境を整える必要がある。ならば、僕自身が昨年ソロデビュー25周年を迎えたこともあって、僕のソロ活動を通し改めて周辺の状況を整え、その環境を慣らしたうえでSHAZNAへ繋ごうという意識から、SHAZNAの動きは1年後にしようと決めました。
──30周年だからと、変に焦ることは…。
IZAM なかったですね。SHAZNAは、2009年3月に一度解散をしています。その頃と比べたら音楽の表現形態も、音楽業界自体の環境も大きく様変わりしています。以前の自分たちが肌で感じていた感覚とはだいぶ異なる環境が、今はある。だから、「まわりに合わせて」や「今の流れを踏まえて」と意識をすることはまったくなかったです。むしろ、昔からそうでしたが、自分たちが信じた音楽を、自分たちに似合う形や環境を整えながら、本当にSHAZNAを愛してくれるLOVERS(推してくれているみんな)へ届けようという意識を持ってずっと活動を続けています。何かを意識して焦るよりも、「今、目の前でやるべきことへ真摯に向き合おう」という気持ちで、つねに行動。焦る気持ちがないどころか、完全に3人の意志のみで動いていたことから、とてもいい感じに〝力の抜けた〟状態で準備をしていましたし、今もその気持ちを胸に活動を続けています。
──話にも出ていましたけど。先にIZAMソロとして動くことが、SHAZNAをスムーズに動かしていくうえで必要だったわけですね。
IZAM とても大事でした。これはSHAZNAに限らず、物事を進めていくうえでみなさんも感じていることだと思いますけど。何かしら新たな動きを作ろうとすると、必ず横やりが入るじゃないですか。僕らにとってSHAZNAは本当に大切にしている人生の母体です。その母体となるSHAZNAで動きだして、いろんな横やりが入ったらいろいろと面倒だなという思いもあって、まずは、僕のソロ活動を通して環境整備をしたわけです。ソロ活動のときにも、横やりというか、いろんな言葉もありましたけど。結局、すべて無視して進めてきましたけどね(笑)。
──ソロ活動をしている時期のIZAMさんを、A・O・Iさんはどんな気持ちで見ていたのでしょうか。
A・O・I 今、SHAZNAは、IZAMくんが番組のパーソナリティーなどを通していろいろとお世話になっているライブ配信会社のサポートも得て活動をしています。3人にとって何よりも大事なのが、自分たちが一番ストレス無く動けるプラットフォームを作ること。それを、先にソロ活動を通してIZAMくんが構築してくれた。今振り返っても、IZAMくんはすごくいい環境を作ってくれたなと感じています。
今のSHAZNAは、以前のような大きなメディア展開を描くのではなく、ライブ配信やSNSでの発信という、本当にSHAZNAのことを好きでいてくれる人たちと密に関係を築くことを大切にしています。同時に、そのスタイルを取ることで、僕らの素直な思いをリアルタイムで伝えることが出来る。その環境作りを、IZAMくんは昨年しっかりと作りあげてくれました。僕らは、そこにとても感謝をしています。
──SNSを通したメンバーとファンとの関係性を見ていても、アーティスト/ファンとの境界線をしっかり保ちながらも、程よい距離感を持って交流を続けていますよね。しかも、その関係性の輪が途切れない形で着実に広がり続けている。本当に、いい環境だなと思います。
A・O・I 僕らも、そう感じています。じつは、デビュー25周年のときも、6人のSHAZNAという形態を取ってスペシャルな活動を限定的に行ったこともありました。あのときは、スポーツ新聞などいろんな大きなメディアに取り上げられ、話題も集めました。あのときに比べたら、今は発信力という面ではぜんぜん弱いかも知れない。でも、今のほうがファンたちのリアクションはすごく大きいし、多いんですよ。ずっとSHAZNAのことを待っていてくれたLOVERSや、新たにSHAZNAへ興味を持って接してくれる人たちとの絆を作っていくうえで、今の繋がり方のほうが現在の僕らには合っているんでしょうね。
──NIYさんも、気持ちは一緒ですか?
NIY 俺の場合、SNS自体を始めたのがつい最近なんですよ。それまでは、世間の動きがどうであれ、自分は興味がなかったので見向きもしなかったけど。2人の動きを見ながら、「自分たちが今、どんな活動をしているのか」を知ってもらうためには、みずから発信をすることが大切なんだとようやく気づかされた。
世間が変わったのか、自分が変わったのか…という捉え方で言うなら、俺は、「まずは自分を変えなきゃ」という意識を持って変えました。最初こそ抵抗感を持って始めたけど、いざ発信を始めたら、楽しい!!世界がどんどん広がっていくのを感じているからか、むしろ今は、ライブ配信やSNSを通した発信の虜になっています。
──でも、NIYさんのロックンローラーな姿勢は、昔も今も変わってないですよね。
NIY そのつもりでいますけど。以前と比べたら「丸くなったね」と言われますし、自分でもその自覚は持っています(笑)。
──NIYさんは、IZAMさんのソロ活動を、どんな気持ちで見ていました?
NIY 俺の場合、IZAMのソロでの成功がない限り、SHAZNAでの成功もないという意識で見ていました。当時、IZAMがライブ配信番組を通して発信していたことから、俺自身も、みなさんと同じように配信アプリをダウンロードして見ていました。というか、一緒に楽しんでいたんですけど。ファンの人たちの喜んでいる反応を見て、自分も再始動のタイミングを心待ちにしていた面もありました。ときには、配信番組でイベントライブをやっている現場へ赴き、その姿をバックステージから見ていたこともありました。あのとき、「早く一緒にステージで演奏をしたいな」という気持ちを膨らませていたのも覚えています。
IZAM ライブ配信やSNSの良さって、好きで接してくれる人たちとの絆をどんどん深めていけることなんですよね。その近さから、ときには推してくれているみんなが距離感を誤り、いろんな騒動に発展することもあるじゃないですか。でも、うちらを推してくれているみんなは、その距離感をしっかりとわかったうえで接してくれる。僕らも推してくれているみんなに対してリスペクトを持って接しているし、推してくれているみんなも3人へリスペクトを持って接してくれる。SNSは、その距離感をとくに気をつけねばならないツールですが、SHAZNAのことを好きな人たちとすごくいい関係性を築けていることが、僕らにとっては誇らしいこと。本当に自慢の推してくれているみんなですからね。
──SHAZNAとして久しぶりに世の中へ登場したのが、昨年の夏に「Music Champ」内で行った26時間連続配信イベントの最後を飾ったライブ生配信でのIZAMさんのライブのときでしたよね。
IZAM そうです。ただし、あのときはSHAZNAとしてではなく、僕のソロライブのアンコールに、ゲストとして2人が登場した形なので、あの時点ではまだSHAZNAとは名乗っていませんでした。でも、披露した3曲はSHAZNAの楽曲でしたけどね(笑)。その後、同じく「Music Champ」内で年末に行った配信イベントにも、僕のソロステージへ2人に登場してもらったんですけど。そのときに、「2024年1月8日にSHAZNAとしてライブをやるよ」と伝えて、今年の1月8日に88名限定で行ったワンマン公演から、SHAZNAとして活動を再開させています。
──1月8日のライブは、「Music Champ」さんのスタジオを借りて行ったから、会場の規模的にも多く集客するのは難しく、本当に限られた人たちを前にしてのライブになった背景はわかりますけど。復活する以上、規模をドーンと大きくしてという意識はなかったのでしょうか?
IZAM 僕らは、最初から「何千人も集めての復活ライブを」という意識はありませんでした。4月21日に日本橋三井ホールで行ったライブのサブタイトルへ「同窓会からはじめよう」と名付けたように、僕らは、SHAZNAのことをずっと待っていてくれた人たちと同窓会から始めたかったんです。嬉しかったのが、日本橋三井ホールのライブには、明らかに僕らのリアルタイムでの活動を知らない。それこそ、SHAZNAが解散して以降に生まれた若い子たちも相応にいたことなんですよ。中には親子連れの方々もいたように、親の影響でSHAZNAを知った若い人たちもいますけど。一例にはなりますが、僕がバラエティ番組に出ている姿を見て興味を持ち、その背景を調べていく中でSHAZNAと出会い、そこで音源を耳にして推してくれるようになった方など、いろんな形でSHAZNAと出会って好きになったSHAZNA未体験の方々もいます。中には、中学1年生の推してくれている子もいますからね。ほんと、今のSHAZNAを好きでいてくれる人たちの層は、かなり幅広いです。
──今のSHAZNAは、SHAZNAのことを本当に愛してくれる人たちとの輪を着実に広げていくことへ重点を置いているんですね。
IZAM そうしています。SHAZNAもインディーズ時代は、コアな推してくれているみんなの集合体のような形で、少しずつその規模を広げていましたけど。デビューをきっかけに、ホワイトゾーンのお客さんが一気に、しかもめちゃめちゃ増えたから、他のバンドさんに比べたらコア層と言われる推してくれているみんなの数は少ないほうだと思います。だからこそ僕らは、改めてホワイトゾーンへアプローチをするのではなく、本当にSHAZNAのことを好きでいてくれるコア層や、SHAZNAの存在を知っていたし、楽曲も聴いていた層の方々ともう一度繋がり、一緒に歩んでいきたいなと思いました。だからこそ、そういう人たちを大切にする環境作りを僕らは今もしているわけなんです。
──そういう流れを構築していけるのは、メンバー3人ですべてをハンドリングしているところも大きいんでしょうね。
IZAM そうですね。もちろん、お手伝いをしてくださる方々もいてのことですけど。僕らが面倒くさいと思っていた大人たちの年代に、今の僕らが、同じように知識を持ったうえでなっている。だったら、全部自分たちでやったほうが何事もスムーズに進みますからね。