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2024.01.11

【本誌連動】摩天楼オペラ新譜EP『EVIL』メンバー解説完全版

「S」

:この曲は、僕がちょうどバイクを乗り始めた頃の心境を書いている曲ですね。激しい曲が僕の中で凝り固まってきてて、同じような方向性の曲を作りがちになっていたんです。なので、ここでメンバーの力を貸してほしいなと思って。この曲ってギターのリフから始まるじゃないですか。あそこのリフだけ優介に考えてもらったんです。それを受け取ってから、AメロやBメロ、サビ、全部作っていった感じですね。だんだんメロディをつけるにつれて、やっぱりメロディアスに作っていきたがっちゃうんですよ、僕。
ただ、この曲の掛け合い部分は、このEPらしい激しさが表現できているので、お客さんにはライブで叫んでほしいなと思います。

優介:掛け合い部分のボイス収録は、僕もボーカルブースに侵入して…うっすらとだけ入ってます。

:僕にはない、下の低音が聞こえてくるんですよね。

優介:作曲が始まる段階で、ギターのリフスタートの曲になったっていうのが、摩天楼オペラに携わってから僕は初めての経験でしたね。特にテンポの指定もなく、まずはかっこいいギターリフを…ぐらいな感じだったんですよ。結構速めで、V系感もあり、メタルの要素もあり、みたいなところで。それで考えたのが、テンポ190ぐらいのリフだったんですね。190は体感的には速いと思うんですけど、もうちょっと速くしてしまおうかということで、一気に約1.2倍速くなったんですよね。ちょっと速めのハードロックから、もうなんかANOMIE(アノミー)だとか、その辺のラインまで引き上がっちゃって。でも確かにこっちの方が疾走感があるなっていうところから制作が始まりましたね。
僕、実はこの曲がこのEPの中で1番好きなんですけど、ギターのバッキングとかも疾走感そのものなんで、どうしたらちょっと前のめりで聴き込めるかみたいなのを意識しました。
だからあまり、ロングトーンは使わずに、細かく刻むシーンをあえて増やしたりとかしました。使った手法として、歪んでいるアルペジオに、そのまま同じフレーズのクリーンのもっとキラッとしたものを重ねてみるだとかも使ってみたので、これも新しいチャレンジでしたね。あと、掛け合いのシャウトセクションがあって、その後にギターソロがくるんですけど、あそこで1回渦中に飲み込まれてからパッと視界が開けるみたいなドラマがあるのが、やっぱりこの『EVIL』っていうテーマがあってこそ入ってきたあのセクションなので、良かったのかなと思ってます。このギターソロが個人的には1番出来がいいというか、これまで弾いてきたギターソロの中で1番っていうぐらい気に入ってるんで、早くライブで弾きたくてしょうがないです(笑)。

優介:予想は出来る一方で安心感のある展開ですよね。メカニカルなフレーズからその後メロディ弾きで引き締める、みたいなソロがもう性格的に大好き。1番好きなことをやってやったっていう感覚がありますね。この『S』のギターソロ、本当に好きです。

彩雨:この曲は、最初のギターリフの段階からシンコペーションが入っていたり、メロディの印象からしても、多分1番ヴィジュアル系感が強い楽曲だな、と思ってます。このシンコペーションをどういう風にキーボードでやるのかで、印象が変わったりするんですよね。
シンコペーション特有のリズムが食い込む印象を出すのか、出さないようにするのか、とかはアレンジの中で意識してやりましたね。そうしないとちょっと野暮ったい曲になりますし、なんかそれが強調されちゃうんですね。

燿(Ba.)
燿(Ba.)

:構成的には1番、摩天楼オペラの王道的な展開かなっていう印象で。第一印象のままアレンジを考えて弾いたらそのまま終わった、みたいな(笑)。
ベタかもしれないけれど、Bメロで広がって、サビで締めるみたいな。こういう曲調はベース的には考えやすかったですね。プレイ的には、聴いてハッとするフレーズが結構入っているので、その辺りを聴いてもらえるといいかなと。

:シンコペーションの話が出ましたけど、いきなりイントロからV系っぽさっていうところで、ドラムもキーボードと同じように、どこでリズムが食うか、でかなり印象が変わるなと思っていて、やりすぎてしまうと古臭い感じにはなっちゃうので、その辺りのバランスっていうのは結構調整したなっていうのが、アレンジする時にはありました。僕、この曲のメロディが好きで、ドラムが目立ちすぎても良くないな、と思ったので、シンプルな8ビートで全体的に叩いてます。ただ、それだと僕らしいドラムがあまりないな、と思ったので、Aメロのラストにはベタですけど、ブラストビートみたいものを入れてみたりとか、めちゃくちゃ速かったりするんですけど…。

:ラストのサビの頭は8分から16分に変わってるよね。

:そうですね、あれは詰め込みましたね。僕の手ぐせだったりとか、いろいろな曲をやってきた中で、 あんまりこのテンポ感で、8分で叩くのが自分の中にはないんです。なので16分に変えた、みたいな…。でも、大体こういうちょっと浮かせたところはいつも詰め込むっていうパターンで、今回もアレンジしてました(笑)。

優介:Bメロの右手は絶対ライドシンバルだよね(笑)。

:そうですね、なんか割と予想通りな感じで進めていって…という感じです。

「Libra」

彩雨(Key.)
彩雨(Key.)

彩雨:なんか4つ打ちのビートでこの妖しさや世界観をたっぷり出せるような感じの楽曲がいいなって思い作りました。

彩雨:こういう曲ってかなりシンセが映える曲かなとは思いますし、どういう方向にも持っていきやすい曲なんですけど、今回はダークな感じに…、うまくオルガンとかを使いつつ雰囲気は出せたのかなと思います。

:人と人とが、戦争などで自分の正義をかざして戦うじゃないですか。その正義の前には敵の命があまりにも小さなものになっているんですよね、同じ人間なのに。自分の守りたい者の命と比べて。そういった、命の天秤みたいなものをイメージしました。

優介:この曲にも、メインのギターリフが明確にあって、ロックンロールにするか、もうちょっとドロドロした感じの陰湿な感じにするかっていうところの中間を狙う音選びをしましたね。
『舌』と楽曲のキーが一緒で、使っている開放弦も6弦ということで…、音選び的には『舌』の方が、ロックンロール的なスケール(音階)の選び方をしているのに対して、こっちは禍々しい、フリジアン(スケール)寄りの、ちょっと専門的な話にはなるんですけど、そういう聴き心地にしていて。ペンタトニック(スケール)とフリジアン(スケール)っていうのがあるんですけど、シリアスな聴き心地になるんですよね、そういう音選びをすると。
楽曲のデモが上がってきた時に、クワイアセクションがあるということで楽曲自体が持っている世界のスケールの大きさがやっぱり1番大きい曲だなと思いました。同じぐらい大きい感じを受けたのは6曲目の『光の雨』だったんですけど、前作のアルバム(真実を知っていく物語)でいうところの『残された世界』と同じく、空間が広い曲だな、と思ったので、ギターのフレージングについても、その広さを生かすというか…。おそらくキーボードがすごく広げるだろうから、ギターは余計な詰め込みをせず、あえて音数を減らしてます。
この曲で1番、ギターで空間の広さを出そうって思ったのは、ギターソロの手前の決めのところで、一瞬クリーンサウンドのギターが響くシーンがあるんですが、そこはギターでキラッとさせて、空っぽいものを見せようというか、一瞬晴れた空とか、そういうイメージでフレーズは作りましたね。
ギターソロについても、ロックンロールというよりは、ネオクラシカルメタルというか、耽美な音階にすると、やっぱり聴き心地がシリアスになるんですね。あんまりラジカル(過激・極端な)な感じではなく、シリアスな展開にした方がやっぱり映えるだろうと思ってこういうソロにしました。ちなみにこの曲のギターソロがEPの中で1番速弾きしてますね。EVILのソロより速いです。

:どっしりしてる曲だったんですけど、重さをちょっと大事にしながらアレンジしました。重いだけだと、聴いていてもあまり面白くないと思ったので、ベースラインを歌える感じにしたかったんです。バランスをうまく取ってアレンジしたので、全体的に1番口ずさめるベースラインの曲になったんじゃないかなと思います。聴いていて面白さで選ぶなら、ベース的にはこの曲が面白いかもしれないですね。
イントロセクションは、1度自分なりに弾いてみたものが、もうちょっとリフに合わせてほしいみたいな感じになって、結果的にそこは音が増えましたね。楽しようとしたら突っ込まれたというか(笑)。

:ドラムは基本的に4つ打ちのノリなんでそんな複雑なことはできないですけど、裏打ちになりがちな中でも、スネアをいろいろ位置に入れてみたりとか、スネアロールとかも出てくるんですけど、Bメロには普通の16分のスネアのアクセント移動に加えて、6連譜の複雑なフレーズが入っていたり。ルーディメンツっていうドラマーの基礎練習みたいなものがあるんですけど、それを詰め込んだフレーズだったりとかも入ってます。
ビートに関しては、足は基本4つ打ちの中で色々とやるっていうのを意識していて、『Human Dignity』という作品の中に『MONSTER』という曲があって、これも4つ打ちなんですけど、その時は結構単純な感じになっちゃったので、この曲ではフレーズを進化させて、全体的に作ったという感じですね。

優介:あのイントロのサビが終わった後、ギターのメインリフで叩いているドラムのフレーズあるじゃん。あれはギターリフが16分なのに、ドラムが4ビートだったのが、すごい新鮮だった。あれこそ4つ打ちにしたりとか、バスドラム突っ込んだりとか…。

:デモがあの形になってたんですよ、これはこれでアリかなと思って(笑)。急に4つ打ちじゃなくなるんですよね。だから、 お?とは思うんですけど、別に合ってないことはないので、こういうのもありかな…と。

優介:この部分で、ノリノリすぎないドラムが来てるからシリアスさに拍車がかかってる。
元気になっちゃうと、ちょっと聴感(曲の雰囲気)が軽くなっちゃうからね。

彩雨:あれは狙ってやりましたね。そこは覚えてますね。お客さんがここで1回4つ打ちのノリを止めて、こっち(4ビートのノリ)にいく。

優介:絶対その方がいいです。

:残しといて正解だった。

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